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異世界に響く銃声  作者: レコア
第2章 召喚された高校生銃士
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第十五話 奴隷の買い手は訳アリ?

物には理由がある。

翌朝、体の右半身にぬくもりを感じる。寝ぼけた状態で右手を動かそうとするが、全く動かせない。右半身が全く動かず、顎のあたりに何かフサフサした感触がある。時々動くのでくすぐったい。ハッとして目を開け、自分の体を見ると、獣人の子が俺を抱き枕にして寝ていた。顎に猫耳の毛が当たってくすぐったいが、右半身ががっちりと包まれているため動けない。左半身は何もないので上体を起こそうとするが、自分とそんなに変わらない年齢の人間が一人乗った状態で起きるのは若干無理があった。だが、女の子に密着されたまま放置できるほど強い理性を持っているわけでもないので、何とか獣人の子を起こそうと試みる。まず体をずらして獣人の子から離れられないか試すが失敗。少し動くと獣人の子の右手が動いて俺の服をがっちりと掴んでしまい、それ以上離れられなくなった。次に右手を引き抜けないか試すがこれも失敗。上に人が一人乗っているのでどうしようもなかったし、どうやら獣人の子は左手で俺の右手を抱き込んでいるらしく、やはり動かなかった。手首を動かしてみるが、位置的に獣人の子のあまりよろしくない部分に当たるらしく、獣人の子が変な声を上げ始めたのですぐに中止した。獣人の子のしがみつく力が強くて力技では抜け出せないと悟ったので、今度は獣人の子をゆすり起こそうと試みる。無事な左手で獣人の子の肩をゆすってみるが、しがみつく力が強くなっただけだった。これ以上強くなると痛いので、今度はほっぺを指でプニプニしてみる。くすぐったいのか耳がピコピコ動いているが、起きる様子は無い。しばらくプニプニを続行していると。

「おかあしゃ~ん♪」

そんな寝言が聞こえた。いい加減理性が持たないので少し乱暴にほっぺをつねってみる。つねられた瞬間手が強く握りしめられて痛かったが、獣人の子の右手が離れてほっぺをつねる俺の手を引き剥がそうとし始めた。その隙にさっと獣人の子の手を掴み、体から遠ざける。両足を使って俺の右足を抱き込まれていて苦労したが、何とか起きた時よりは引き剥がすことに成功した。そこまでされたところで獣人の子が目をうっすらと開ける。俺と目が合うとカッと見開かれ、口が開こうとした。これは悲鳴が上がるパターンだろう。今この状況で悲鳴が上がったら、昨日の獣人の男2人の二の舞なのですぐに口を塞ぐ。驚いている獣人の子の口をしばらく塞ぎ、目で【騒ぐなよ】と訴える。獣人の子がうなずいたのを確認して手を放し、自分の右手を指さす。獣人の子が視線を指の先に移動し、自分が人に抱き着いていると気がついた途端、顔が真っ赤になった。また悲鳴をあげそうなので口を塞いで、右手と右足を少し動かすと、ようやく解放された。真っ赤になって飛び起き、土下座もかくやという様子で地面に額をこすりつける獣人の子の肩を掴んで辞めさせる。顔を上げた獣人の子は涙目になっているので、ハンカチを取り出して拭いてやり、普通に座るように促した。真っ赤な泣き顔でこちらを見つめる獣人の子を落ち着かせるため、頭を少し撫でていつもの位置に座る。いつもより早く起きたのが救いだ。同じ部屋に居る他の人はもちろん、向かいの部屋に居る人なども気がついている様子は無い。暇なので詩集を取り出すと、獣人の子も俺が渡した本を見始める。昨日と同じページの気がしないでもないが、ずっと見るのも失礼だし、先ほどの事があって気まずいので無視して詩集を読んでいるふりをする。頭の中でアイに奴隷達の中で起きている人が居るか問うと、獣人の子と俺以外では、老婆達の居る側の隣の部屋に居る奴隷と、一番端の部屋に居る奴隷が2人ほど起きているだけで、後はまだ寝ているようだ。しばらくして朝日が差し込み、光に照らされて次々と他の人達も起き始める。結局午前中は気まずいまま2人して本をじっと見ていたが、例によって食事を持って下男が通路に現れると獣人の子が怯えて俺の体に隠れようとし始めたので、昨日の様に俺が代わりに食事を受け取った。食事が終わり、器をいつもの位置においても獣人の子は離れようとしなかったが、しがみついたりせずに服の端をつまんで横で座っているだけなので放置する。気まずい雰囲気を感じながら20回目の詩集の流し読みをしていると、通路のドアの向こうから笑い声が近づいて来るのが聞こえた。昨日来た人達はもちろん、他の部屋の奴隷達も何事かと通路の入り口に視線を向けている。扉が開くと奴隷商人が人を3人連れて入って来た。一人は初老の男性で、禿げ始めているから50後半だろうか? 高そうな服をビシッと着込んでいる。もう一人は中学生くらいの女の子だ。ドレスを着ておめかしをしており、知り合いの結婚式に参加した時に見た背伸びした女の子を思い出させる感じがあった。3人目はメイドのおばさんだ。本物のメイドを始めて見たが、テレビとかで見るフリフリ衣装の若い女性ではなく、地味系のワンピース? を着て、エプロンのような物を付けたおばさんだった。しかし、頭についている白い飾りやエプロンっぽい物、態度などからおそらくメイドなのだろうと想像がつく。本物の貫禄というか、プロのオーラを感じた。俺がそんな考察をしていると、奴隷商人達の話の内容が聞こえ始める。下男はメイドさんと一緒に後ろへ控えているだけのようだ。

「我が商館の奴隷は品質を重視しており、いい商品がそろっております。お嬢様の世話役も、屈強な護衛も我が商館で買い揃えられる事間違いなしでございます。ぜひ、自慢の商品をご覧になってくださいませ。ささ、どうぞ、こちらでございます」

「品質を重視している割にはひどい臭いだな。大丈夫なのか?」

「も、もちろんでございます。奴隷は生き物の為、体臭があります。獣人などもおりますし、管理には手間暇がかかりまして・・・」

やっぱりトイレまで同じ部屋にあるこの檻は相当臭いようだ。もう鼻が慣れてバカになってきているが、やはり臭いは強烈らしい。

「お父様、私気分が悪いわ。早く済ませましょう? 時間がかかるなら先ほどの部屋で待っていてはダメかしら?」

「しかし、お前の護衛と世話役だ。高い金を払って奴隷を買っても、お前が気に入らなければ意味が無い。大貴族なら奴隷など使い捨てにできようが、我が家にそこまでの余裕は無いのだぞ? 能力があって、お前が気に入る者でなければならん」

「おっしゃる通りでございます。お嬢様」

「そうね。ワガママを言って申し訳ありません。お父様」

臭いに耐えられないと不満を漏らす女の子に初老の男性が理由を説明すると、女の子は途端に礼儀正しくなって謝っている。

「近頃この国は何かと不穏な噂が絶えぬ。私がそばに居られれば一番良いが、そうも言ってられぬ。金で雇った護衛では心配なのだ。奴隷なら主人を裏切る事は無い。能力さえ確かなら、安心してお前の守りを任せられる。万が一の時は捨て駒にしてお前を守らせねばならん。雇われの護衛では肝心な時に信用がならん。すべては愛するお前の為なのだ」

「噂ではクーデターが起こるとも言われております。お嬢様の為にこの(わたくし)が、男爵様も満足のいく奴隷を御紹介致しましょう」

クーデターの噂とかあるのか。王国は治安が悪いっておっさんも言っていたが、想像以上に問題がありそうだ。

「期待しておるぞ? 先ほどの部屋でも話した通り、この商館に居る最も強い戦闘奴隷を護衛に1人と、身の回りの世話を任せる世話役を1人買いたい。購入資金はできる限り用意したが、最も重要なのは娘が気に入る事だ。能力は言うまでもあるまい?」

「はい、承りました。まずはこちらへおいでください。護衛役の戦闘奴隷候補からお見せいたします」

そう言って奴隷商人は、俺達の居る檻の方へやってくる。みんなが視線を向ける中、奴隷商人は俺達の檻の前で足を止めた。

「君、立ちなさい。新しいご主人様になるかもしれないお方だ。丁寧にあいさつしたまえ」

そう言って奴隷商人は俺に話しかける。俺がきょとんとしていると、奴隷商人が再度促してきた。

「何をしている。早くしなさい」

そう言ってどこからともなく鞭をチラつかせ始めたので慌てて立とうとすると、服を引っ張られた。振り向くと獣人の子が俺の服を掴んでいる。何か訴えたそうな目をしているが、いつまでもそうしている訳にもいかないので優しく手を掴んで離してもらった。初老の男性に向かい合う形で立ち、剣道を習う過程で習慣化した動作でさっと背筋を伸ばし、下男から渡された本の文章を参考に挨拶と自己紹介をする。自己紹介は苦手だが、練習中などには挨拶が欠かせないため、ある程度のテンプレートは頭にある。

「お初にお目にかかります。佐野勇介と申します。よろしくお願い致します」

「変わった服装、しゃべり、髪色、異邦人か。異邦人の奴隷とは珍しいな。この者がこの商館最強の奴隷なのか?」

「この者は変わった武器を使って戦う為、戦闘力は一般的な剣士の比ではありません。ウッドマン5体を相手に無傷で生還するような強者ですので、戦闘力は信用できるかと思われます」

「ウッドマン5体か、確かに剣士には相性が悪い相手ではあるが、魔法使いなら敵ではあるまい? 魔法使いは魔力切れした時に役に立たない故、護衛とするには少々力不足ではないか? 足元を見られても困るが、資金に余裕がある訳ではないのだ」

奴隷商人が俺をこの商館最強の戦闘奴隷だと紹介している。実際に戦うところや、どうやって戦うのかも見てないのに最強認定してしまっていいのだろうか? 魔法使いの存在や魔力切れなど新しい情報が聞こえるが、少し心配だな。

「この者は魔法使いではございません。使用する武器が特殊な物なのでございます。あまりに特殊な物ゆえ、この者しか扱えず、奪われて敵に利用される心配がございません。その点も普通の剣士よりお勧めでございます」

「どのような武器だ? 見せてみよ」

「扱い方を心得ていない物が触れると危険な為、檻越しにご覧いただくだけでご容赦ください。さあ、早く君の武器を見せなさい」

そう言う奴隷商人に従って、俺は銃を拾う。拾う時に獣人の子と目が合ったが、安心させるために笑顔を返しておいた。銃を持ち、手を伸ばして初老の男性に見せる。初老の男性は身を乗り出して銃を見つめ、しばらく見た後元の姿勢に戻った。

「確かに見た事無い武器だな、杖ではなさそうだ。槍にしては短いし、鈍器の類でもなさそうだな。どの程度の破壊力がある?」

そう言って初老の男性は俺に視線を向けてくる。

「どうした、答えなさい」

「・・・ウッドマンに使用しましたところ、一度の攻撃で倒すことができました。5体で襲ってきた内の1体は逃げましたので、4体を倒すのにこの武器は各1回ずつしか使用しておりません。普通の木なら簡単に大穴を開ける事が可能でございます」

「なんと、魔物を一撃で倒したと言うのか。一撃でウッドマンを倒せる武器なら威力は信用できるが、魔法ではないのか?」

やっぱりウッドマンが一撃なのはすごい事のようだ。初老の男性の娘や獣人の子、メイドのおばさんや他の奴隷達も驚いている。

「これは特殊な技術を用いて作られた武器で、私の祖国では旧式の軍用品でございます。魔法は使われておりません」

「異邦人の軍が使う武器か。どのような方法で攻撃をするかは話してもらえないのか?」

俺が答えるか迷っていると、奴隷商人が慌てて止めに入る。

「そ、そこはお買い上げ頂けた方のみが知る事ができる秘密という事でご容赦を・・・」

「ふむ。攻撃手段を知られれば簡単に対策を取られるような武器だという事だな?」

「そ、そのような事は・・・」

お茶を濁そうとした事が災いし、弱みがあると思われたらしい。奴隷商人が言葉に詰まっている。

「攻撃の仕組みは簡単なもの故に弱点も容易に想像可能でございます。しかし、この仕組みを真似する事は難しいでしょう」

「簡単な仕組みなのに真似が難しいとはどういうことだ?」

俺のなぞなぞ的なフォローに初老の男性が食いついてくる。興味津々のようだ。

「まず、材料がそろわないと思われます。この武器の重要な要素であるいくつかの部品を、私はこの国で見た事がありません」

「材料などよほど特殊な物でもない限り資金次第で入手は可能なのではないか?」

「仮に材料がそろえられても作成が可能とは限りません。この武器を構成する細かい部品は、熟練の職人が手作業で加工致します。その技術を真似する事は難しく、加工にも特殊な道具が必要ですが、私の祖国はここからかなり遠いはずでございます」

「なるほど。技術ある職人を連れて来て材料を与えるだけでは駄目だという事か、では貴様はどうやって王国に来たのだ?」

その質問に奴隷商人の目つきが鋭くなり、鞭をチラつかせる。真実を話すなという事だろう。頼むから鞭を構えないでほしい。

「・・・旅の途中、魔物に襲われている商隊を助けましたが、見知らぬ武器を持っていた事を理由に王国の検問所で騎士様に捕らえられ、私の態度がお気に召さなかった騎士様の命により、奴隷となりました」

「魔物から商人を救ったのに捕らえるとは、その騎士は理不尽だな。態度が気に入らないとは、何をしたのだ?」

新たな問題点の出現に初老の男性が突っ込んでくる。態度に問題があるなら娘の護衛は務まらないと言い張るつもりだろうか。

「私は祖国ではかなり栄えた街の出身でございます。しかし王国のしきたりや文化には疎く、田舎者の態度をとってしまいました」

「無知は罪か。ならば仕方あるまい。この奴隷はいくらなのだ?」

俺に一通り質問した後、初老の男性は奴隷商人に向き直り、俺の値段を聞く。

「こちらの奴隷は特殊な為、5000フルでございます」


第15話です。ちょっと立て込んでましたすみません。リアル世界との兼ね合いが顕著に投稿活動を左右するのがアマチュア小説家の証拠だと思っています。申し訳ないです。

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