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勇者少女群  作者: お休み中
第一幕 哀は退路、愛は進路
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「お姉ちゃん、お帰りなさーい……って、えええっ!」花影塚スミレは大声をだした。「な、なにその、コスプレイヤーさんは……」

「紹介しよう」ユリは、その二人の少女を見つつ、スミレに掌を向けながら言った。「彼女は、私の双子の妹のスミレだ」

「む? なんだか、お前と大分雰囲気が違うが?」前にいる少女が言った。

「ああ、スミレは少女趣味だからな」

「あのー、えっと、そんなことよりも一つ質問いいですか?」スミレは手を挙げながら言った。「お姉ちゃん、いつからコミケとか行くようになったの?」

 スミレは、ユリの後ろにいる二人の少女に目をやった。今しがた喋った、やけに偉そうな少女は、銀色のケープのようなものに、水色のロングヘアーという出で立ち。そして、その後ろにいる少女は、一見普通に見えるが、よく見ると、メイド服のようなものを着ていた。ただし、赤い生地。通常のメイド服というと、紺というイメージがあるが、それを全部赤色にしてしまったようなものを彼女は着ていた。

 ――えっと、これなんの悪い夢?

「お姉ちゃん……、私猛烈に頭痛くなってきたんだけど……」額を押さえるスミレ。

「大丈夫か? この、半分は優しさで出来ている風邪薬を」と、バッグから錠剤をとりだすユリ。

「いや、そういうことじゃなくて……。なんていうのかな」

「私も詳しいことはわからないんだ。とりあえず、部屋で話を聞いてみるつもりだ。悪い、上に飲みものを持ってきてくれないか?」

「う、うん。わかった」頷くスミレ。「それはいいんだけどさ……、あの」

「ごめんねー」と、メイド少女が片目を瞑りながら言った。「ついていけない展開かもしれないけど、頑張ってついてきてねー」

「は、はあ……」スミレは顔をひきつらせた。

 その後、ユリと、変なコスプレ二人組は、二階へと上っていった。二階には、ユリとスミレの共同部屋がある。

 ちなみに、今親は家にはいない。しかも、当分帰ってこない。父はブラジルに単身赴任中。母はガーナに単身赴任中である。二人とも、外交官をしているのだ。とても忙しい身なのである。

「しっかし、それにしたって……。なんなのよ、あれ」スミレは小さく呟いた。「あんなアニメ、この頃あったかなあ。ていうか、お姉ちゃんと、どんな関係なんだろう」

 スミレは、将来漫画家を目指している。よって、アニメやら漫画やらラノベなどの、サブカルチャーには結構詳しい。ただ、姉であるユリは、そっち方面に関する趣味はまったくない。よって、あんな、どこぞのサークルの売り子だあんた、みたいな少女とつき合いはないはずである。うーん、謎は深まるばかり。とりあえず、聞いてみることにしよう。なんか、猛烈に悪い予感がするから。と、スミレは思った。

 スミレはお盆に、人数ぶんの飲みものと、お菓子をのせ二階に上がった。少し緊張しながらも、ノックしてみる。

「お姉ちゃーん。持ってきたよー」

 と、中から、

「ほう。これが地球の同人誌か。なるほど。なかなか絵のレベルが高いな」と高飛車少女の声が聞こえてきた。

「ん? ああ。それはスミレが描いているやつらしい。私はよく知らないが」とユリの声。

「って、なに見とるんじゃーっ!」スミレはお盆を床に置き、勢いよくドアを開けた。「ち、ちょっと、お姉ちゃんもお姉ちゃんよっ! 人のものを勝手に見せないでよっ!」

「え?」きょとんとした顔のユリ。「だって、これ売りものなんだろ? どちらかというと、人に見てもらった方がいいんじゃないのか?」

「ち、ちがっ! あのね、そういう問題じゃないの。同人作家が勝手に作品を見られることが、どれだけ恥ずかしいか」

「おい、そこのフリフリ少女」高飛車少女が言った。

「なっ! ちょ、それ私のことぉ?」スミレは叫んだ。確かに、今彼女は、桃色フリフリゴシックドレスを着ていた。「い、いいじゃない。す、好きなんだからっ!」

「なにをムキになっている? それより、これはどういう意味だ?」高飛車少女は、同人誌のとあるページを指差しながら「なにやら、体が柔らかい男同士のようだが」

「だ、だーっ!」絶叫するスミレ。「あ、あのねっ、よりにもよって、それを見るなっ! 見るにしても、ほのぼの系だけにしておけーっ」

「ん、それは見たことなかったな?」同人誌に顔を近づけるユリ。

「だ、ダメーっ! お姉ちゃんは絶対見ちゃダメ。ダメったらダメ」スミレは同人誌をひったくった。

「え、なんで?」首を傾げるユリ。

「どっ、どうしてもよ。ダメったらダメなんだからっ!」

「大丈夫。スミレちゃん」ぽん、と横からメイド少女が肩を叩き「大丈夫。BL好きは恥ずかしいことじゃないわ。私も……、大好きよ」爽やかな笑顔で親指を立てた。

「BL?」高飛車少女は眉を寄せながら「BLTサンドなら知っているが」

「うーん、大佐はいっつも知識が偏ってるのよねぇ」メイド少女が溜息をつく。

「ちょ、あ、あなたたち、なんなんですかっ!」スミレは叫んだ。「お、お姉ちゃんとどんな関係か、きっちり聞かしてもらいますからねっ!」

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