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勇者少女群  作者: お休み中
第一幕 哀は退路、愛は進路
5/42

「じゃー、またねーっ。ユリちゃーん」

「ああ、また明日」

 ユリは駅前でシオンと別れると、自宅へと向かった。シオンは隣町に住んでいて、下校時にはいつもここで別れることになっている。一方のシオンの自宅は、黙示録高校の近くにある。閑静な住宅街で、人通りはあまりない。昨日の雨の影響か、道は水たまりだらけだった。

 少し歩くと、左側に工事現場が見えた。数メートル先。数ヶ月前まで作られていたものだったが、今は頓挫したのか、まったく作業が進んでいない。白い幕で囲まれた中に、鉄骨がむき出しで放置されている。マンションだろうか。高い。完成すれば、八階か、それとも十階か。ただ、何ヶ月も放置されたからか、非常に不安定に見える。地震があったら、今にも上から鉄骨が落ちてきそうな勢いだった。

 ――ん、あれは?

 と、その工事現場の地面で、サッカーをして遊んでいる少年たちが見えた。

「あっ、そこは」ユリは駆け寄ろうとする。「ん?」

 ユリは建築物を見上げた。

 すると、

 鉄骨が、

 静かに、

 少年たちに向かって真っ逆さまに猛スピードで落ちているのが見えた。

「あ、危ないっ!」

 駆け寄るユリ。

 しかし、まだ距離は遠い。

 ――ま、間に合えっ!

 と、 

 地面に落ちる前に、

 鉄骨が空中で止まった。

 ユリは目を懲らす。

 なんと、

 一人の少女が……、

 その鉄骨を片手で支えているのが見えた。

「な、……なに?」目を丸くするユリ。

「ふっ、こんなところで遊んでいては、危ないぞ」その少女は無表情で言った。

「あっ、ありがとう……、お、お姉ちゃん」涙目の少年たち。

「礼はいい。それより、さっさと家へ帰れ。もう遅いぞ」

「う、うん。わかった」少年たちは、工事現場を駆けだしていった。

「ふっ、お姉ちゃんとはな」少女は鉄骨を地面に投げながら「私は大佐だというのに……。まったく、無礼者らが」

「あ、あの……」ユリは少女に近づきながら「あ、あなたは……」

「私か?」少女は腰に片手をつけながら言った。「私は、第三銀河王国特別部隊所属、キュア・ルーズヴィッヒ大佐。宇宙の扉を……、開ける者だ」

「宇宙の……、扉?」

「ここで、キーマカレーまんを、誰にも見つからずひっそりと食べていたのだが……」キュアは重い溜息をついた。「どうやら、場所がわるかったらしいな」

「き、キーマカレーマン……?」唾を飲むユリ。

「ん、なんだ? 唾なんか飲んだりして、お前、お腹が空いてるのか? さきいかならあるぞ、食べるか?」

「さ、さきいか……?」

「キュアさん。ユリさんはギャグ要員じゃないんだから、そういったシュールなボケは通じないわよ」

「だ、誰だっ!」ユリは後ろを振り返る。

「私は、先行隊に所属しているミカゲと言います。私たちは、あなたをずっと捜していたんですよ……。花影塚、ユリさん」

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