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勇者少女群  作者: お休み中
第五幕 百合の花嫁
41/42

10

 空。

 ユリは急旋回しながら言った。

「おいっ、そこのメイドロボ! 壊されたくなかったらおとなしく……ってうわぁっ!」

 空を覆うかのような、鋭く大きい回し蹴りが飛んできた。

「ちょ、意外と速いっ」

 慣れないながらも、さらに上空に飛び回避する。

 すると、

 メイドロボが、掌をこちらに向け、大きく振り下ろしてきた。

 同時に、壁のようにやってくる突風。

「くっ、近づくことさえも」

 ユリは両腕を体の前にクロスさせ、なんとか体勢を維持する。

 と、

 メイドロボは、突如近くのビルをもち、

 なんと、それを振り回してきた。

「なっ! お、おいおい」

 急下降するユリ。

 間一髪で回避。

 だが、

 メイドロボはそのビルをもったまま、

 ぱかっ、と口を開ける。

 ――ん?

 その口元が、ゆっくりと閃光に包まれる。

「ま……、まさか」

 ユリは頬を引きつらせる。

「び、ビーム? えええっ!」

 そして、

 大量の爆音とともに、

 空中に巨大なメイドビームが放出された。

「うわっ! ちょっ!」

 ユリは右方向に急旋回して、

 避ける。

 が、

 ビームは、

 追尾するように、

 曲がる。

 縮まる距離。

 ユリは前を向く。

 更にスピードを上げる。

 だが、

 振り返る。

 一面。

 光。

 閃光が、視界。

 ――くっ……、

 ここまで……、か。

「らしくないぞ、ユリ」

 目の前。

 馬に乗った一人の影。

 オレンジ色のメイド服。

 水色の長い髪。

 そして、

 彼女は片手を前にだす。

「こんなもの」

 すると、

 ビームの勢いが止まり、

 空中にゆっくりと消滅していった。

「…………」

 驚くユリ。

「ど……、どうやって」

 キュアは振り返向きながら、

「決まってるだろ」

 ウィンクして言った。

「愛の力」

「ふっ」

 ユリは軽く微笑みながら言った。

「そうだったな」

 そして、彼女は髪を小さく払った。

「すまない。忘れていたよ」

「まったくだ……。早く後ろに乗れ」

 キュアは後ろを指差す。

 ユリは彼女の後ろに座りながら、

「しかし……、どうする? 相手は、巨大ロボだぞ」

「巨大ロボだろうが、宇宙海賊だろうが、たとえ神だろうが……、私たち二人に適うやつはいない」

 キュアはユリにゆっくりと抱きつく。

「ユリ……、好きだ」

「おいおい、こんな時に」

 ユリはキュアの頭を撫でる。

 キュアはむくっと、顔をだしながら、

「愛の力……、渡していいか?」

 額をくっつけるキュアとユリ。

 夕日が二人を照らす。

「ああ……、ゆっくりとだぞ」

「ふっ、エロいやつだな」

 二人は、

 抱き合いながら、

 口づけを交わす。

 三秒。

 五秒。

 十秒。

 三十秒。

 一分。

 三分。

 五分。

 十分。

 ……長っ!(天の声)

 ……愛の力ってそんなにあるの?

 ……つか敵はっ?

 と、

 キュアは、

 唇を、ぽんっ、と外しながら、

 低い小さい声で囁いた。

「どうだ? ……私の愛の力は」

「美味しかった」

「ふっ、バカなやつだ」

 ユリは、キュアの唇を人差し指でなぞり、

 その人差し指で自らの人差し指をなぞった。

「愛の力……、マックスハートだ」

「当たり前だ。相手はこの私なんだぞ」

 キュアはにっこり微笑む。

「さて……」

 と、

 ユリはユニコーンの背に立ち上がった。

「キュア……、案内を頼む」

「了解だ」

 キュアは前を向く。

 猛スピードで、メイドロボに向かうユニコーン。

 対するメイドロボは、

 口を開きビームを放出。

「そんなもの」

 ユリが言うと同時に、

 ユニコーンの前に、

 いつの間にか透明の丸い壁が出来ていた。

「LOVEバリアだ」

 ユリが呟く。

「ふっ、小洒落たものを」

 キュアが口元を緩める。

 と、

 ユリは、

 メイドロボの前に行くと、

 胸元から赤い薔薇をとりだし、

 それを自らの口元に近づけ、目を細め、メイドロボを見た。

「あなたに……、薔薇の御加護があらんことを……」

 そして、

 薔薇の花をメイドロボに投げつけた。

 胸元に突き刺さる一輪の薔薇の花。

「赤い薔薇の花言葉は……、愛」

 とユリ。

「そして、それは……、契約の証」

 とキュア。

「愛の力よ……、薔薇とともに、今ここに舞い降りたり」

 ユリは、

 片手の人差し指と中指だけを立て、

 それをメイドロボに向けながら言った。

「アディオス」

 ドッカアアアァァーン。

 ズガガガーン。

 チュッドーン。

 バラバラバラ……。

 シュ~ッ……、ガラガラガラッ。

 巨大な爆発が起こり、砂煙とともに、メイドロボは粉々になっていった。

「やったな……、ユリ」

「ああ……、キュアのお陰さ」

 と、

 その一部始終を、ミカゲと一緒に、近くの高層ビルの屋上から、双眼鏡で見ていたスミレは、両手を下ろし、大きな口を開けながら呟いた。

「な……、なに? この壮大なコントは……?」

「ま、まあ、私たちらしくて、い、いいんじゃないでしょうか……?」と、横にいるミカゲ。

「い、いや、こんならしさ、永久に願い下げなんだけど……」

「さーて、悪い敵もやっつけたことだし」ミカゲは人差し指を立てながら「もうそろそろ、エンディングですよっ。ファイトファイトッ」

「いいのか……? なんか、激しく不安なんだけど……。はーあ……。バッシングとかされないかな……」スミレは、赤い夕日を見ながら、川に石を投げるように呟いた。

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