4
「くそっ! まさか……宇宙船が壊れるなんて」
その時、謎の少女は、とある場所で自らの失敗を嘆いていた。銀色のケープに水色の長髪。明らかに、地球人のそれではない。
「まさか、フロートブースターが臨界点を超えるなんてな……。ちっ、だから私は開発局が嫌いなんだっ! どうする……。このまま現地民と接触するのは危険すぎる……。だがしかし……」
少女はさらに独白を続ける。
「いや待てっ。この星には、確か先行調査隊がいたはずだ。……そいつらと合流すれば、まだ勝機はある。譲歩となるが、やむを得まい。ふっ、ふふふ……。私もまだヤキが回ったわけではなさそうだ……。賭けてみるか、この、運命という名の悪戯に」
「あのー、お客様」と、横にいた店員がいた。「ここ、コンビニの中なので、もうちょっと、お静かにですね……」
「なんだお前は?」睨む少女。「私を誰だと思っている? 私は、第三銀河王国特別部隊所属、キュア・ルーズヴィッヒ大佐だぞ。その口の聞き方はなんだ?」
「いや、えーとですね……」
「まあいい。今私は、特別に機嫌がいいからな。おい、で、お前」キュアは棚の一番下の雑誌を指差しながら「この、地図とやらをもらおうか。確かまっ○ると言ったか」
「は、はあ」
「地図と……、後は当面の食料があれば、どうにかなるか……」キュアは小さく呟く。
「え、えーと……。他には、なにかございますか?」頭に汗マークを浮かべながら、尋ねるコンビニ店員。
「ん? ああ。あとは、そうだな……」キュアは周りを見渡しながら「あの、さきいかとやらを、もらおうか。なんだか美味しそうな予感がする」
「は、はあ……。それはまた、随分と渋いものを……」
「む? なんだ? 文句でもあるのか?」
「い、いえ。それではお会計を……」コンビニ店員は、カゴにさきいかと地図を入れ、キュアと一緒にレジへと歩いた。そして、恐る恐る聞いてみた。「あ、あの、その衣装とか設定、罰ゲームかなんかですか?」
「ふっ。笑わせる」キュアは片眉を吊り上げる。「お前、冗談が上手いな。だが、その余裕が戦場では仇となる。気をつけた方がいいぞ。これは助言ではない。忠告だ」
「は、はあ」
「む、ところで」キュアは横を見ながら「なんだ、その保温ケースは?」
「え? ああ、それは、肉まんを売っている」
「その、キーマカレーまんとやらを、一つ」
「は、はあ……。えっと、あなた本当に宇宙人、ですか?」
「勿論だ。最初から、そう言っているだろう」
「は、はあ。えっと、じゃあお会計を」
「このマ○ターカードで。代金は……プライスレスだ」
「えっと、絶対地球人ですよね?」




