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姫釘マリアは、電信柱の影に隠れて、ユリが通るのを待っていた。
それというのも、風の噂で、ユリがメイド喫茶に通っているという情報を聞いたからだ。バイト帰りは、流石のユリも疲れているはず。そこで奇襲をかければ勝率が上がる、という、完璧な作戦だった。
――ふふふ。さあこい、花影塚。お前の命日は今日になる!
ずしーん。
――ふふふ。それにしても、遅いな……。
ずしーん。
――ん、なんか音がするけど……。
ずしーん。
――え?
姫釘は、音がする方向を振り返った。
すると、
そこに、メイドの、大きな太ももが見えた。
「え……、ええええええぇぇぇっ!」姫釘は絶叫した。「ちょ、ええっ? な、なにこれぇ?」
「あら……、姫釘さんじゃないですかっ」と、空から、ユニコーンに乗った、カーザとミカゲとあともう一人、中学生くらいの幼い少女がこちらに近づいてきた。地面に着地するユニコーンと三人。そして、一番前にいたカーザが口を開いた。「こんなところで、なにしてるんですか?」
「い……、いやいやいや」姫釘は大きく首を振りながら「そ、それはこっちの台詞だよ! つーか、その馬飛べたのぉ?」
「ええ、まあ」カーザは微笑む。「ユニコーンですから」
「いやいやいや」姫釘は縦線を入れながら首を振った。「ああ、頭痛い」
「それにしても」ミカゲが空を見上げながら言った。「なんて、非現実的なのかしら……。このメイドロボ。とても、この世のものとは思えないわ」
「いや、充分、ユニコーンに三人乗りしてる、あんたらも非現実的だけどな」姫釘はつっこんだ。
「あっ」と、幼い少女のバッグから、なにか白いものが逃げだした。「う、うさちゃんが」
「え、うさちゃん……、あ! お前は雪姫!」姫釘はこちらに近づいてきたウサギを抱えた。「こんなところにいたのかっ。皆捜してたぞぉ」
「え、知ってるの?」カーザが聞く。
「ああ。近くの小学校で飼われてるんだ。たまに、私は弟と世話しにいく」
「へえ……。なんか意外」ミカゲが呟く。
「意外とはなんだ、意外とは」姫釘は三人に背を向けながら「それじゃあ、なんだかわからんが、私は逃げるぞ。それ、流石に四人乗りできないだろ」
「う、うん。ちょっと」カーザは汗マークを浮かべる。
「しかし、お前ら……。逃げてるんじゃないのか?」姫釘は顔だけ三人に向きながら「これから、どこへ行く気だ?」
「ん、ちょっとね」ミカゲが頬に手を当て、微笑みながら言った。「正義のヒーローは、お助けキャラが必要なの。昔からね」




