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「い、泉さんっ。た、たた大変なんですっ!」電話口から、慌てているチャコの声が聞こえてきた。
「なによ、そんな慌てて」とチャコ。ちなみに、事務室のまま、店の備えつけの電話で話している。
「う……、ウサギが……」
「ウサギ?」チャコは眉を寄せる。
「はい……。ウサギが、いつの間にか、逃げ出してしまって」
「はあ? なにわけのわかんないこと」
「いや、二人で、バタバタお茶をかけあったり、キスし合っているのに気をとられてたら、そうなってしまったんですっ」
「えーと……」泉はテーブルに肘をつき、頭を抱えた。「ちょっと待って。チャコ、あんたどんなプレイしてたのよ」
「えっ、プレイ?」
「いや……、お茶かけあって、キスしてって……」
「はあ……。よく言ってる意味わかりませんけど……。とにかく、で、ウサギが逃げ出したんですよ」
「わかった。ウサギっていう名前の女の子ね。で、三人で、なにかをしていたら、その内の一人が逃げ出したと」
「ん? 話かみ合ってないようですけど……。と、とにかく、それでですね、そのウサギが、地下室に入り込んでしまったんですよ」
「なっ! ちょっ」泉は電話に口に手を当てて話す。以前、ユリたちが事務室にいるためである。「ちょっとっ。まずいじゃない。地下室には、アレが……」
「え、ええ、そうなんです」
「でも……、なんとか、アレは見つからなかったんでしょ?」
「いえ……。それが……」
「ん?」
「ウサギを探しにいった、他の人間がですね……。偶然、アレの部屋に入ってしまいまして……」
「バッ、バカ! なにやってんのよ!」
「す、すいません……」
「でも……」泉は自分に落ち着け落ち着けと言い聞かせながら「作動は、しなかったでしょ?作動さえしなければ、問題ないもんね」
「いえ……、それが……」
「ん?」
「ほら、さっき、ウサギがいる、って言ったじゃないですか」
「え、ウサギっていう名前の子でしょ?」
「ち、違いますよ。そのウサギが……。発進スイッチの上に乗っかちゃって……」
「なっ……」泉は絶句した。「ど、なにがどうしたら、ウサギが発進スイッチの上にのっかるのよっ! バカじゃないの?」
「はあ……。い、いや、カーザさんが抱えていて、ウサギが無理矢理逃げ出したんですけどね」
「ん、カーザさん?」
「それで、今外にアレが……」
「え?」




