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事務室。
ユリとキュアは並んでいる。目の前には、椅子に座る泉。その横には、りむが立っていた。
と、
目の前にいる、九千院泉は深刻な表情で言った。
「二人とも……、時に相談なんだけれども」
「なんでしょう?」ユリが首を傾げる。
「ええ……、実は、ほら、二人ともヘルプで入ってもらってるじゃない」
「はい」頷くユリ。
「実は、もっと、そう、長期で入れないかな、って……、思ってね。二人がいてくれると、お店の売り上げは、鰻登りなのよ」
「いや、あの」ユリは言う。「私、生徒会入ってるんで。申しわけないんですけど、長期はちょっと……」
「ゴホッ、ゴホッ」と、急に泉が咳き込み始めた。「ま、まずいわ。じ、持病の発作が……」
「じ、持病……?」目を細めるユリ。
「だっ、大丈夫ですか、泉さんっ」りむが彼女の背中をさする。「はい、これ、薬です」
「ええ、ありがとう」辛そうな顔で、薬をもらう泉。
「いや、それ、フ○スクでしょ。りむさん、さっきだしてましたよね……」ユリはつっこむ。
「このお店の売り上げが悪いと、私は死んでしまうのね……。だって薬が買えなくなるもの」泉は天井を見ながら呟いた。「ああ、運命。それは時として、残酷」
「はあ……」
「おい、ユリ」ぽん、と横からキュアが肩を掴んだ。「店長を死なせるわけにはいかない。私たちが、協力しよう……」
「ちょっと待て」ユリは汗マークを浮かべた。「騙されるなよ、こんな小劇場に」
「やはり、ダメだったようです」りむが泉を見ながら言った。「ていうか、誰も騙されませんよ、こんな大根芝居」
「なっ!」キュアが目を見開いた。「だ……、騙したのかっ!」
「気づくの遅いな」とユリ。
「しょうがないわね」泉は立ち上がった。「この手だけは、使いたくなかったんだけど……」
「な、なにをする気ですっ」身構えるユリ。
「だっちゅーのっ」泉は、腰を低くし、胸の谷間を作りながら上目遣いでユリを見た。「さあ、どう? これで、長期で入りたくなったでしょ?」
「え、えーと……」汗マークをつけながらユリは言った。「いえ、まったく」
「が、ガビーン」泉の顔は青ざめた。「い、色仕掛けも通用しないとは……」
「というか……、仮に色仕掛けするとしても、ネタが古いです」りむがつっこんだ。
「じゃあ、この、りむの、乙女恥ずかしポエム集をあげるから」泉はエプロンのポケットの中から、一冊のノートをとりだしながら言った。「これと交換、ってことで」
「へー、誰のでしょうねぇ。そんな恥ずかしいポエム集……っておおいっ!」りむは、巨大ハリセンで思いっきり泉の後頭部を叩いた。「あ、アホか! どこからもちだしたんだ、そんなもん」
「ふっふっふ。そんなものを、普段からもち歩いているあなたが悪いのよ」頭を押さえながら、にやりと笑う泉。「なんだっけ……。私の胸はドッキドキ、夢見る乙女はマックスハート……。だったっけ?」
「い、言うな! それ以上言うなーっ!」りむは顔を赤らめながら叫ぶ。
「凄い詩だな」呟くユリ。
「おい、ユリ」ぽん、と横からキュアが肩を掴んだ。「あれを見るには、どうすればいいんだ……」
「ちょっと待て」ユリは汗マークを浮かべた。「見たいのか……、あんな電波ポエムを」
「ひ、人の心の叫びを、電波って言うなっ!」りむが叫んだ。
「電波だからいいんじゃないか」とキュア。
「だ・か・ら。電波って言うなっ!」りむが金切り声をだす。
「そうだ、お前らひどいぞっ」泉が握り拳を作りながら言った。「本当のことを言っちゃ!」
「お前が一番ひどいわっ!」りむはハリセンで泉を叩いた。
「失礼しまーす」と、ノックとともに、シオンが部屋に入ってきた。「あの、泉さんにお電話です。チャコさんから」
「チャコから?」




