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泉は、腕を組みながら話した。
「つまり……、端的に言うと、今私たちは、地球を征服できるような超巨大ロボットを開発している悪の組織なんだけれども、その秘密基地は何故か代官山の森林公園の中にある。ただ、そのロボットは完成しているだけで、現在パイロットがいない。で、我が組織が誇る、超高性能コンピューターがはじき出した結果、花影塚ユリが、適任だと判断された。よって、今私たちは、彼女をなんとか組織に誘う計画を進行中。しかし、計画は慎重に行わなければいけないため、まだユリ本人にそのことは打ち明けられない。さてさて、一体全体どうするどうなる我が組織、その名も『ブラックDAYS』……、っていうことで、いいんだな?」
「泉さん、それ、誰に対して喋ってるんですか?」りむは、汗マークをつけながら言った。
「さ・ら・に。あえて補足すると!」泉は人差し指を立て、自慢げな表情で喋った。「今私たちがメイド喫茶を経営しているのは、私が可愛いもの好きだというのと、研究所の予算を賄うためである。また、今現在、超巨大ロボットは、秘密基地の地下に厳重に保管されている! だから、絶対に誰にも見つかることもないし、勝手に作動することもない。何故なら、そんなイージーミスをする人間は、この世にいないからっ! 以上!」
「は、はあ……。あのー、そんなわかりきったことはどうでもいいんですけど」りむは咳払いして、話を戻した。「しかし、あのユリとキュア。接客態度は滅茶苦茶ですが、なんというか、ノリと勢いと容姿で、既に数人の客をファンにしてしまった模様です」
「うーん、まあ、どっちもかなり耽美な感じだしねぇ」泉は頷きながら言った。
「ええ。ですから、本格的にバイトの依頼をした方がいいかと。それに、その方がユリをパイロットに誘いやすくなるんじゃないかと」
「よしっ」泉は立ち上がりながら「じゃあ、二人を呼んできてっ。私とりむで、説得して、このオレンジDAYSを、日本一のメイド喫茶にしちゃいましょっ!」
「あのー、ところで、前々から思っていたことがあるんですけど」りむは手を挙げる。
「ん、なに?」
「泉さん……、本当に、地球を征服する気、あるんでしょうか……。なんか、メイド喫茶の方を、優先しているような気が、すっごいするんですけど……」
「そんなわけないでしょ!」怒鳴る泉。「私は、メイド喫茶のことしか考えてないわっ!」
「えーと」泉は近くにある紐を引っ張った。
「いたあっ!」天井からタライが落ちて、彼女の頭に激突した。「い、痛いじゃないっ。なにするのっ」
「泉さんっ。もうちょっと真面目に考えてくださいっ」
「考えてるわよっ!」泉は真面目な顔で言った。「メイド喫茶をっ!」
「えいっ」とりむ。
「いたああっ!」またタライが落ちる。先程よりも少し大きめ。「い、痛いじゃない! なにすんのっ!」
「じゃあ……、一つ聞きますけど」りむは言う。「秘密基地の下にある、ロボット、あるじゃないですか?」
「ええ、あるわね。それがどうかしたの?」
「なんで……、メイド服着てるんですか」
「決まってるじゃない!」泉は握り拳を作りながら叫んだ。「メイド喫茶が一番大事だからよっ!」
「おりゃ」
「ぐべべっ!」泉は大きなタライに押しつぶされた。
「私、呼びにいってきますので」りむはドアを閉め、部屋をでていった。




