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春風シオンは、いつも昼休みはコンビニ弁当である。
それは、料理を作る技術もなければ、親は共働きでつくる時間もないからだ。よって、学校近くにあるコンビニで買っている。学食で買ってもいいのだが、混んでいて毎日利用するのがとても難しい。
「はーあ、こんなことじゃ、栄養偏っちゃうよう」シオンは溜息をつきながら唐揚げを食べた。「料理しようっかなあ……」
「どうした、シオン?」前にの席にいるユリが言った。現在、二人は机を向かい合わせにして食べている。ちなみに、ユリと二人きりで食事をする機会なんて珍しいため、シオンはかなり心躍っていた。「食欲、ないのか?」
「ううん。毎日、コンビニ弁当っていうのもなあ、って思って……。ユリちゃんは、それ、自分で作ってるの?」
「いや、これは近くの弁当屋さんの」とユリ。「うちは、スミレも私も、料理は全然出来ないんだ」ちなみに、スミレというのは、ユリの双子の妹である。
「えー、ユリちゃん、料理上手そうだけど。苦手なことなさそう」
「そんなことないよ」ユリは微笑む。
「そっかー。でも、私家、レストランじゃない? それなのに、料理出来ないの……。なんか落ち込んじゃって」
「もう、そんな落ち込んでないでほら、卵焼きでも食べて元気だして」ユリは箸で、自らの弁当の中の卵焼きをとり「はい、口開けて」シオンに差しだした。
「えっ……、そ、それって……、所謂あ、あーんって、やつぅ? そんな、私たちまだ早いよ……。は、恥ずかしいよぅ」
「めっ」ユリは自らの人差し指を、シオンの口に当て「わがまま言って、私を困らせるんじゃない」と微笑んだ。「ほら、あーん」
「あ、あーん……」顔を赤らめながらシオンは口を開けた。ゆっくりと、ユリが箸で掴んだ、たこさんウィンナーが口に入っていく。
「どう? 味の方は?」とユリ。
「う、うん……、とっても……、美味しい」ゆっくりと俯きながらシオンは言った。
「そう。それはよかった」ユリは口元を緩ませる。
「そ、そうだっ、ユリちゃん」シオンはとても恥ずかしかったので、話題を変えた。ちなみに、もう落ち込みは完全になくなっている。「今日さ、朝テレビで見たんだけど、この近くにね、どうやら隕石が落ちてきたらしいよ」
「隕石?」ユリは首を傾げた。「知らないなあ」
「でね、これはネットで実しやかに流れてる噂なんだけど」シオンはユリに顔を近づけ、小声で言った。「その隕石は、なんと、宇宙船だったって噂なの!」
「宇宙船?」微笑むユリ。「それはロマンがある話だね」
「でもでも、結構マジな情報らしいのっ。どうやら、姿を見たって人もいるらしいしよ! ネットにあったんだっ。まあ、昨日は土砂降りだったから、よくは見えなかったらしいんだけど」シオンは身を乗りだしながら「でもね、多分、私の勘によるとね、きっとその宇宙人さんは、宇宙船が故障しちゃって、仲間を捜して街を歩いてるんだよっ。間違いないっ!」
「ふっ、シオンはそういうの本当好きだな」ユリはくすっと笑う。「宇宙人か……。でも、私たちも、見方を変えれば、宇宙人みたいなものなんだよ」
「えっ、それどういうこと? ひょっとして……、宇宙人から見れば、地球にいる私たちも宇宙人ってこと?」
「ううん。違うよ」ユリは首を振りながら「皆、人はそれぞれ、宇宙をもってるんだ」自らの胸を指差しながら「ここにね」
「ゆ、ユリちゃん……」じーんとするシオン。
「いや、そんなことよりもさ」と、横にいつの間にかいた小林が言った。「もう昼休み終わってるんだけど……、二人とも席戻ってくんない? 聞いてる?」
「ユリちゃん……。私、あなたの太陽になるっ!」シオンはユリを見ながら言った。
「おいっ、人の話聞けよっ」小林が目を細めながら言った。