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白くて、丸い。
それは、曲がり角を右に走っていった。
「えーと……、本当にいるんですね……」ミカゲは頬に手を当てながら、汗マークを浮かべる。「代官山に、ウサギ」
「そんなことよりもっ」前を走るカーザはこちらを振り向いて「危ないから、早く捕まえないとっ!」
「そ、そうねっ」ミカゲはカーザの後を続いた。
二人は賢明にウサギを追いかけた。しかし、自転車や車、人やら信号があって、なかなか追いつけない。追跡は難航をきわめた。
そうこうする内に、ウサギは、とある森林公園の中に入っていった。姿が見えなくなる。二人も、中へ入っていった。
「あれ?」とカーザ。「代官山に、こんなところ、あったかしら?」
「うーん、ひょっとして、ここがウサギさんのおうちだったりして?」ミカゲは歩きながら、カーザを見る。
「でも、それにしては、随分遠くを……ん?」カーザは手を横にし、それを額につけ前方向を見ながら「あれ、なにかしら?」
「ん?」ミカゲも、つられてそちらに目線を向けた。
生い茂る森の中に、金網に囲まれた、建物があった。なにかの、ビルのよう。三階建て。容積は広い。ただ、ビルというよりは、病院とか、公民館とか、図書館、といった感じの外観。とりあえず、一般の住宅ではないことは、確かだった。
「あっ、あそこに!」カーザは建物の中の敷地を指した。そこには、先程のウサギが見えた。しかし、すぐ姿が見えなくなる。
「うーん、街中よりは、まだマシだけど」ミカゲは頬に手を当てた。「飼い主かな、あの家」
「どうだろう?」カーザは首を傾げる。「でも、確認した方がいいよね」
「そうね」ミカゲは頷いた。「ちょっと聞いてみましょ」




