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「へー、やっぱ、フィちゃんって可愛いの好きなんだぁー」
「ちっ、違うわよっ。ま、まあ……、嫌いでもないけど」
スミレはフィとともに、繁華街を歩いていた。
放課後。特に、二人とも行くところがあったわけでもなかったが、この頃一緒にいることが多かった。今日もそんな感じ。
フィとカーザが転入してきて、もう一週間ほどか。観察するに、二人とも大分慣れたように見受けられる。だが、それでもまだ緊張してるかもしれない。スミレは、一回転校を経験したことがあったが、それはそれは心細かったものだ。
フィとは、妙に気が合う。また、この頃、スミレは密かに、彼女とは趣味が合うのでは? と疑っていた。もし、そうだったら、非常に嬉しい。ちょっと、今日は探りを入れてみるつもだ。
「ねえねえ、フィちゃんさあ、普段はどんな服着てるとか、ある?」スミレは、首を傾げながら聞いた。
「えっ?」とフィ。「そ、そうねえ……。別に、普通だけど」
「普通って?」
「いや、だから普通よ。私、スカートとか履かないから……、ジーパンにTシャツとか」
「オー、ジーザスっ!」スミレは目元を押さえる。
「はあっ?」大きな口を開けるフィ。「ちょ、スミレ、あんたそんなキャラだっけ?」
「ダメよ、ダメっ。年頃の女の子が、そんなんじゃ」スミレは首を振りながら言った。
「え、そ、そうかなあ……。でも、私似合わないんだよ」フィは前を見ながら言う。「それに、今までそういうの、着る機会なかったし……」
「ん? どういうこと?」首を傾げるスミレ。
「えっ? い、いや、今までさ、そういうのにチャレンジしたことなくってさ、そういう意味っ」
「じゃあ、たとえば、こう……、デートとかなったら、どうするつもり?」
「えっ? デートぉ? う、うーん……」フィは腕を組みながら、空を見上げ「い、いや、そしたら、まあ、ちょっとは、ちゃんとしたの着るんじゃない? こう、スカートにキャミみたいな……」
「ブッブーっ」大きく×印を作るスミレ。「そこで……、フリフリのスカートを着るのよっ!」
「え……、えっと、はあぁ?」フィは頭に汗マークを浮かべる。「な、なんで、そうなるわけぇ?」
「男の子はねっ、少しぐらい、やり過ぎた方が好きなんだってっ」スミレは握り拳を作りながら力説した。
「そ、そうかねぇ?」フィは目を細め、首を傾げる。「一緒に歩くんだったら、ナチュラルな方がいいんじゃね?」
「でも、じゃあ」スミレはフィに顔を近づけながら「男の子は抜きにしても……。フィちゃんは、そういうの、着たいとかは……、思わない?」
「えっ? う、うーん。まあ」フィは頬を掻き、視線を外しながら「まあ、そりゃ、ねえ。着たいといえば、着たいけど……。一回、ぐらいなら」
「じゃあ、たとえば……、メイド服、とかは?」
「……えーと」フィ額を押さえながら「ちょっと、頭痛がしてきたんだけど……。もうちょっと、首尾よく説明して」
「ほら、前言ったじゃない。私、普段は、フリフリの服着てるって」
「ん? ああ、言ってたね」頷くフィ。
「でね……、この頃、一つ野望があるのよ」
「ふうん。どんな?」
「メイド喫茶で……、バイトする!」
「へ、へえ……って、ちょっと待って!」フィは片手でスミレを制し、冷や汗を垂らしながら言った。「つまり、私をメイド喫茶のアルバイトに誘ってる、ってこと?」
「ピンポーン」スミレは笑顔で言った。「ねえ、一緒にやろうよう」
「い、嫌よっ」フィは言った。「ちょ、一人でやってよ、そんなっ。大体、私、バイトなんて」
「でも……、着てみたいと、思わない?」スミレは悪代官のような顔をして言った。「メ・イ・ド・服」
「いっ、いや、それは……」そっぽを向くフィ。「ま、まあ……。着てみたいっちゃ、着てみたいけど……」
「じゃあー決まりぃーっ」スミレは万歳しながら「わーい、フィちゃんと一緒だーっ」
「ちょ、わ、私はっ。そ、それにっ」フィはこめかみに汗マークをつけながら「そういうのって、ほら、客はオタクの男ばかりくるんでしょ? 嫌よ、私、そんなの」
「ふっふっふ、甘いなフィちゃんは」スミレはちっちっち、と人差し指を揺らした。「今時のメイド喫茶は、女の子のグループや、カップルも結構多いんだよ」
「えっ、そうなの?」
「そうそう。その証拠に、ほら」スミレは財布からポイントカードをだしながら「私なんて、こんなにっ」それは、メイド喫茶のスタンプカード。「もうちょっとで、景品と交換できるんだからっ」
「え、えーと……、常連さんなんだ」フィは軽く項垂れる。
「それにね、この私が通っているメイド喫茶は、ちょっと他のと変わってるんだよ」
「え、どこが?」
「女性客専用なのっ」
「えっ、本当?」首を傾けるフィ。「そんなんで、採算とれるの?」
「それがね、結構満員なのよ。落ち着ける雰囲気だし、長居出来るっていうか。やっぱ、女性客ターゲットだからか、そういうところ、気をつけてるみたい」
「ふーん、でも、なんで女性客専用なんかにしたんだろうね? 珍しくない?」
「えっと、なんかね。基本は他の店との、差別化のためらしいんだけど」スミレは人差し指を顎に当てながら「なんか、そこの店長さんの方針なんだって」
「ふーん。でも、それにしたってなあ……」小さく溜息をつくフィ。
「じゃあさじゃあさ」スミレはフィの顔を覗き込み、微笑んだ。「働く働かないは別にして、今度さ、二人でそのメイド喫茶行かない? ね? それくらいなら、いいでしょ?」
「うーん、まあ、それくらいなら……」フィはスミレを見ながら「じゃ、今度行こっか」
「やった、さすがフィちゃん」スミレは満面の笑顔。
「もう……、ずるいんだから」フィは頭を掻きながら言った。




