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「邪魔が入ったわね」
同時刻。
とある高層ビルの、最上階にて……、
三人の、黒い影が佇んでいた。
「あいつはなに者なんだ?」その内の、一人、壮香りむが言った。手には、双眼鏡を持っている。「この距離で……。こちらに気づいていたようだったが」
「ふっ、気づくわけないじゃない」三人の中のリーダー格、九千院泉が言った。「なんキロ離れてると思ってるの? 偶然よ、偶然」
「しかし」りむは泉を見ながら「甘く見ない方が……、なにせ、相手は」
「わかってるって」泉はりむに振り向き、腰に両手を当てながら「花影塚ユリ……。私たちが、捜していた……、ただ一人の後継者なんだから」
「あのー……」と、三人の内、一番背の低い少女、紀見チャコが後ろからやってきて「こ、これ……、一応、持ってきたんですけど、本当に……、その、プロジェクトと関係あるんですか?」と言って、一つの箱を差しだした。
「おっ、やっときたか」笑顔を見せる泉。
「ん? なんですか、それ?」りむは箱を覗き込む。
「見ての通り」
泉は箱からそれをとりだし、つけて微笑んだ。
「ネコ耳よっ」
「はぁ?」りむは頬をひくひくさせながら「え、えっとちょっと待ってください。私の、幻覚及び幻聴かな……。あの、よければ、もう一回言ってくれますか?」
「ネコ耳よっ! しかも、白のフワフワ! 一番人気のあるやつっ!」
「いや、えーと……。その、まったく意味が」
「これはね、頭につける、アキバとかで流行ってる、アクセサリーみたいなものでぇ……」
「ち、違うっ! そういう意味じゃない! どんなものかは知ってますっ! だ・か・ら。なんでネコ耳なんか」
「あの……」と、チャコが「りむさんのも、ありますけど……」
「……ちょ、ま、まさか」りむは手を大きく横に振った。「あ、あのね……。止めてよね……。私、そういう趣味なんか」
「りむ、誤解しないで」真面目な顔で泉が言った。「これも……、科学の発展のためよ」
「いやいやいや! そんな科学滅んでしまえ! つーか仮にっ、それで科学が発展するとしても、人類としての尊厳は後退しますっ!」
「つべこべ言わずに」泉はネコ耳を持ちながら「つけるがよいっ!」りむに勢いよくダイブした。
「い……、いっ、嫌ぁぁあああああああ――――っ!」
夜に、悲鳴がこだまする。
それは、新たなる惨劇の合図。




