6
渋谷のスクランブル交差点前に立ちながら、カーザは言った。
「うわぁ、人がいっぱい。ねえ、センター街ってどこかしら?」
「カーザ様……。そんな、上京したての、女子高生みたいなこと言わないでください」
現在、カーザとフィは、とある理由から、日本に上陸していた。前々からきてみたかった星なので、カーザは非常に心躍っていた。ただ、対するフィは、なにか釈然としないような感じ。
「あのですね……、なんで、こんな人の多いところにきたんです?」とフィは言った。彼女は今、片手にキャリーケースをもっている。服装は、軍服のまま。勲章や肩当てなどは、外してあるが、それでもかなり目立つ。ちなみに、彼女の髪型は、赤のショートカットだったため、軍服姿と相まって、とても人目を引いていた。「早く、目的地へ行かないと」
「いえ、まずは服を買いましょう」信号が青になったので、カーザは歩きだした。「私は勲章を外せば、普通の服ですが、フィはそうもいかないでしょう? 潜入するには、まず現地民になりきることが、必要なのよ」
「いえ、それはわかります」カーザの後につくフィ。「ですが、わざわざ、こんな人通りの多い場所に行かなくても……」
「えーっ、やっぱ行ってみたいじゃーん」カーザは、体を弾ませながら言った。「私、新しいキャミがほしいんだーっ」
「か、カーザ様……。なんですか、その言葉遣いは……」フィは眉をひくひくさせながら「カーザ様は、仮にも総帥という立場です。もっと、自覚というものをですね」
「まあまあ、堅いこと言わないのっ」信号を渡り終えると、カーザは人差し指を立てながら言った。「やっぱり、女の子なんだから、オシャレは楽しまなくっちゃねっ」
「いや、それとこれとはですね……」
「あ、そうだ」道を歩きながら、振り返るカーザ。「どう、手続きの方は、無事いった?」
「はい、問題はありません」フィは頷く。「遅くとも、二、三日中には、可能かと」
「そう、さすが、早いわね」カーザは微笑み、両手を背中の後ろにつけながら「ま、そんなことはともかく、今はショッピングを楽しみましょ。侵略しちゃったら、こんなことしてる場合じゃないんだし」
「いや……、そもそも、今こそ、こんなことしてる場合じゃないんじゃ」
「こらこら」カーザは、フィに並ぶようにして言った。「オシャレはね、乙女の栄養源なんだから。ちゃんと、補給しなきゃダメ」
「は、はあ……」
「じゃ、フィにはこれね」カーザは、とあるショップの前に止まった。「この、ドクロの刺繍入り特製ゴシックミニスカ浴衣を……」
「ちょ、ちょっと待った! ていうかそれ、余計目立ちませんっ?」




