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ゲームの世界に転生?  作者: まほろば
20~35の町のダンジョン
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48の町へ



居られる場所がなくて、20の町へ転移した。

温泉宿が再開してれば…。

そんな淡い願いが、私を20の町に行かせた。

でも私の予想は外れて、跡には何も無かった。

本当に森の中に温泉を引こうか。

幸い食べ物の屋台は始まってるから、家を建てても食事に困らないと思う。

地下に温泉の源泉を探して、森の近くにもあったからそこから森の奥に引いた。

木と土で不恰好な家を建てて光の結界で囲んだ。

私1人の家だから、居間と寝室しか造らなかった。

あとお風呂。

居間の隣に同じくらいのサイズの浴室を造って、普通のお風呂と温泉を引いた。

露天風呂も造りたかったけど、勇気は無かった。

ベッドを作るのは苦労した。

マットってこの世界には無くて、布を縫い合わせた中に藁を押し込んで敷き布団の代わりにしてる。

だから先にベッドサイズの木の枠を造って、イメージしながらマットレスらしきを造ってみた。

冬がない世界だから毛布だけで十分寝れる。

マットレスの応用で居間にソファーも置いてみた。

センスのない家だけど、私が造ったにしては最初のイメージより上出来だと思う。

その日から、引き籠り生活が始まった。

たまには人に接したいから、週1で町へ食料の調達に行くようにした。

また何があるか分からないから、毎回多目に買った。

温泉に浸かってご飯を食べて、怠惰な生活を送った。

ふと、17の町の祠を思い出して訪ねてみた。

そこに居たのは痩せ細った子供たちだけで、アイテムボックスから人数分のサンドイッチを出して渡した。

『ここいにたルークとシーラは?』

「ここに読めるもんなんか居ないよ。もっとくれよ」

もう無いと手振りで反したら子供たちが襲ってきた。

「食い物が入ってる背中の袋を奪え!」

子供の声より、私が光の結界を張る方が速かった。

子供に怪我はさせたくないけど、このままでは転移も出来ないから風魔法で吹き飛ばして森へ走った。

誰も着いてきてないのを確かめて、家に転移した。

それからは、家からあちこちの町の屋台へ週1移動する生活を一月続けた。

味気無いけど、それしか思い付かなかった。


この前20の町へ行ってからそろそろ三月、再開してないか見に行ったらおじさんに呼び止められた。

「ルアン?ルアンじゃないかい?」

おじさんに見覚えがあった。

どこかであった。

記憶を手繰っても何処で会ったか思い出せなかった。

「忘れたのかい?馬車で一緒になったニコルだよ」

あ!

無意識に右手を口に当てた。

カレンと出会ったあの馬車に乗り合わせたおじさんだとようやく思い出した。

「思い出してたくれたようだね」

にこにこするニコルさんに頷いて頭を下げた。

「あれからどうしてたんだい」

『あちこちのダンジョンに潜ってました』

メモに書いて見せた。

「そうかいそうかい、せっかく会ったんだ何か食べながら話そう」

おじさんは話ながら屋台からお茶と串焼き肉を2つづつ買って、私を屋台横の椅子に誘った。

「20の町のダンジョンに潜りに来たのかい」

『はい』

「ルアンだけでも無事で良かった」

私だけでも?

首を傾げていたらニコルさんが笑いを消して言った。

「カレンは可哀想だったね」

心臓だくだくしながら知らない振りで聞いた。

『カレンが?』

「ああ、ルアンは知らないのかい?カレンは27の町の解放軍に入っていたんだよ」

『解放軍?』

「圧政を改める集団だよ。話ではみんな死んでしまって1人も残って無いって聞いてるよ」

『そうなんですか』

手が震えて文字が上手く書けなかった。

「解放軍がちりじりになった時カレンが悪く言われたが、それも後からカレンじゃなかったって聞いたよ」

………

私の中に、良かったって気持ちと今更って気持ちの両方があって複雑だった。

「仮営業だけど私の店に寄っていくかい?」

ニコルさんの誘いを首を振って断ってから、代わりに肉の塊を出して渡した。

『昨日狩った肉です。食べてください』

「これは有り難い。助かるよ」

ニコルさんは大事そうに鞄にしまうと聞いてきた。

「肉はまだあるのかな?」

『あります』

「良ければ売って貰えないかな」

『はい』

ニコルさんに連れられて、ニコルさんの店に行った。

ニコルさんの店はまだ建ててる途中で、建ててる横の小屋で営業していた。

周りにも数件小屋が建っていて営業していた。

「ここに出してくれないかい」

ニコルさんが指差したテーブルに、塊を10個ほど出して並べた。

「助かるよ」

ニコルさんは近くの店々に声を掛けて集めると、肉で取引を始めた。

まだまだ肉の品不足は深刻なのか、かなりの高値で売り買いされていた。

その中にダンカンさんがいた。

「ルアン?ルアンじゃないか?」

疑問符のダンカンさんが笑えた。

やっぱり見分けつかないんだ。

「おやじがすまなかった」

首を振った。

周りに人がいる。

それで終わりにしたかった。

「もう一度47の町の店を訪ねて貰えないか。おやじが話したい事があると言っている」

もう一度首を振った。

「42の町のダンジョンの話だと言ってる」

え?

…一瞬喜んだけど、ダンカンさんの話を信じる勇気は私に無かった。

だから首を振った。

「俺も一緒に行く。おやじは俺が押さえる」

『どうして』

行かせたいのか、と書きかけて手が止まった。

白い世界が言わせてるのかも、って思ったから。

「頼む。行ってくれ」

逆に白い世界じゃなくて罠の可能性もある。

少し悩んで息を吸い込んで、決心してから頷いた。


ダンカンさんとの旅は厳しかった。

携帯食を食べる拷問から早く逃れたかった。

旅の途中、良く話し掛けられた。

鍛冶屋だからなのか、乗り合わせた冒険者の大半はダンカンさんに挨拶する。

相手は一緒にいる私にも挨拶するから、挨拶される度に私も頭を下げた。

「ルアンだ」

「ダンカンの娘か?」

「娘のような者だ」

そんな会話に慣れた頃、私の名前を軍と結び付ける人と出会ってしまった。

「ルアン?軍が探してたのもルアンだったよな」

「人間違いだろ」

4人の冒険者が話してるのを聞いて心臓が跳ねた。

「話せない黒髪の女の子」

ダンカンさんと冒険者が私を見た。

「ルアン。本当なのか?」

ダンカンさんに頷くしかなかった。

「チェスター国の魔法使いと友達なんだよな」

冒険者の1人が言った。

『違う』

「何で氾濫の時助けに来なかったのか魔法使いにキチンと説明させろ。お陰で大勢の人が死んだんだぞ」

冒険者が私に怒鳴った。

ダンカンさんは、黙っていた。

「チェスター国は自分たちだけ助かればいいのか!」

掴み掛かられて、思わず後に逃げた。

「こいつを捕まえて魔法使いを呼ばせろ」

「償いに復興を手伝わせろ!」

冒険者2人が強引に捕まえに来た。

もうダメだと思った。

転移で逃げたくても黒くなってて使えなかった。

ここで死ぬんだ。

そう思ったら笑えた。

出来たら痛くなく死にたいけど、無理そう…。

ぐいって手を捕まれて引きずられそうになった。

「止めろ。ルアンを呼んでるのはおやじだ。おやじは昔弟王子の護衛隊長だった」

捕まった私を見て、ダンカンさんが大声で言った。

「弟王子は生きているのかっ!こいつを捕まえて魔法使いに助けさせるつもりなんだな」

「違う!違う!」

冒険者の歓声をダンカンが止めた。

「弟王子はとっくに処刑された。王が兄に決まって、北の塔に幽閉された翌日処刑されてしまった」

冒険者たちの動きが止まった。

その隙に逃げたかったけどがっちり腕を捕まれてて、逃げたくても逃げられなかった。

「嘘だ」

「嘘だろ…」

「本当だ。王は弟王子だけじゃなく継承者を皆殺しにした。王が亡くなった今、モナーク国に王は居ない」

「そんな」

「誰か嘘だと言ってくれ」

冒険者の1人が力尽きた様にしゃがみこんだ。

「これからのモナークはどうなるんだ?」

「もしハルツから攻撃されたら」

「ハルツだけじゃない、チェスターだって人質を殺されてモナークを狙っているはずだ」

冒険者の目が一斉に私を見た。

この狂った目が21の町の獣人を思い出させた。

「こいつを人質にしてチェスター国と和平を結べ」

「チェスター国に復興を手伝わせろ」

両脇の冒険者が吠えた。

人間ってどこまで自分本意何だろう。

心の底から沸々と怒りが沸いてきた。

「止めろ。今チェスター国を刺激すると本当にモナークは潰されるぞ」

冒険者の1人が怒鳴った。

「こいつを人質にすれば言いなりになるさ」

冒険者2人が、更に強く腕を掴んできた。

「分からないのかっ!5人を見殺しにしたからチェスター国は氾濫の時俺たちを助けなかった」

「好きで見殺しにした訳じゃない!」

「ここでルアンを人質にすればチェスター国はモナーク国を襲ってくるだろう」

ダンカンさんは真剣な顔で冒険者4人に言った。

「ダンカンの言うように襲ってくるだろう」

捕まえてる2人の冒険者に目を向けながら、別の冒険者の1人が冷静に言った。

「お前までダンカンの味方をするのかっ!」

捕まえてる1人が怒鳴った。

「味方をする訳じゃない」

言った冒険者はダンカンさんと3人の冒険者を順番に見て、先を続けた。

「言い伝えを忘れたのか。チェスター国には魔法使いの部隊がいて、神が動けばチェスターも動く」

「神が動けば?」

「それってどんな意味だよ」

「昔俺のじいさんが言ってた。チェスターの民を傷付ければ国が滅ぶ。その証拠に氾濫だ」

「そんなの迷信だっ!」

「なら捕まえてみればいい。軍の奴がチェスター国の奴らには隷属の鎖も効かないと酔って言ってたのをお前たちも聞いてたはずだ」

捕まえてる2人が言葉に詰まって言い返せないでいると、ダンカンさんが静かに聞いた。

「もしルアンを捕まえて、その後どうやってチェスター国を脅すつもりだ?冒険者ギルドから手紙でも送るか?お前の名がチェスター国に知れ渡るだろうな」

両脇の2人がハッとして私の腕を離した。

「ルアンは俺の連れだ。今の話はみんな忘れろ」

「でもチェスター国が襲ってきたらどうするんだよ」

「そうだぞっ!」

「やはりこいつは捕まえとくべきだ!」

また両腕を捕まれそうになって、咄嗟に後に飛んだ。

「止めろ!」

さっきから2人を止めていた冒険者が、私を背中に隠してくれた。

「庇うのかっ!」

ダンカンさんも加わって、2人と2人で睨みあった。

『5人はチェスター国に戻ってる』

それだけ書いてダンカンさんに見せた。

「5人が戻ってる?捕まってた5人がか?」

4人が私を見たから頷いた。

「なら何で弟王子を助けなかったんだよっ!」

「よせ!弟王子が処刑されたのは3年も前だぞ」

ダンカンさんが大声で言い返した。

「3年っ!そんな前なのか…」

脱力してる冒険者にダンカンさんが言った。

「今はチェスター国と争うべきじゃない。冷静になって考えてみろ、チェスターの民のルアンがモナークを旅してるって事は、チェスター国にモナーク国を襲撃する意思はない」

「多分だが。俺たちがルアンをどう扱うかでモナーク国はチェスター国に試されているんだろう」

ダンカンさんの横の冒険者もそう付け足した。

「じゃなきゃ女の子1人でモナークを歩かせないさ」

ダンカンさんが私を見て聞いてきた。

「ルアンは魔法が使えるのか?」

『国に戻る転移だけ使える。チェスター国民はみんな転移が使える』

「みんなだってっ!」

「なら5人も転移でチェスターに戻ったのかっ!」

「戻るって言ったな!来ることは出来るのか!」

4人に詰め寄られて思わず首を振った。

「帰るだけか…」

ホッとした表情のダンカンさんを含んだ5人は、その後ルアンの事は内緒にすると話し合っていた。

………

5人も居れば誰かが喋る。

それはカレンの時に経験してるから、内心5人を信用してなかった。




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