モナーク国王都
投下してる話の中の誤字脱字、意味の通じないところを治そうと思います。
話の続きの再開は3月位を予定してます。
読んで下さってる方々に深くお礼致します。
ありがとうございます
この先もお読みくだされば幸いです
m(__)m
翌日の夕方になって、30の町が魔物に襲われて壊滅状態だ、と宿の泊まり客が急に言い出した。
モナーク軍がチェスター人を人質にして魔法使いを従わせようとした話もあっという間に流れた。
中にはチェスター国の魔法使いに隷属の首輪を付けて氾濫もチェスター国進軍もさせろ、と息巻く声も上がったけどそれは一握りで、大半はチェスター人を本当に捕まえてしまった事実に天罰を恐れて怯えていた。
「捕まったのは魔法使いと友達だって女の子か?」
泊まり客の1人が聞いた。
「いや違う。冒険者ギルドと軍にスパイとして潜んでた青年5人だって話だ」
「スパイっ!ホントなのかよ」
短気そうな青年が大きな声で怒鳴った。
「いくら神の箱庭でも構わねぇ。人質を盾にチェスター国をやっつけてしまえ」
軍の回し者みたいな言い方が泊まり客をあおった。
「馬鹿。チェスター国のスパイは煮えた王と軍との戦争を避けるためにモナーク国に潜んでたんだぞ」
「もしチェスター国がモナーク国と戦争する気だったらとっくに魔法使いを使って滅ぼしに来てるさ」
「ならどうしてスパイなんか送ってくるんだっ!」
「モナーク国の王と軍を警戒してるからだろ。何をするか分からないからな」
頭に血が上った者と理性を失わない者とが、宿の食堂でぶつかった。
「それよりもっと気になるのは、チェスター人を捕まえてチェスター国が怒ったら何をされるかって事だ」
その場がしんと静まった。
信じられない、と泊まり客の顔に書いてあった。
「国民を捕まえられたら温厚なチェスター国でも黙ってるわけがない。それこそ報復されたら30の町どころかこの国が無くなるぞ 」
「そんなの人質を盾にして黙らせれば良いだろ」
「もし俺がチェスター国の捕らえられた者の家族だったら、魔法使いに頼んで町1つ人質にしてやるな」
想像したのか、泊まり客がしんとなった。
「そ、そんなのでまかせだっ!軍は人質と魔法使いの交換をチェスター国に迫ってるんだぞっ!」
泊まり客の目が一斉に言った男に向いた。
「それでもしチェスター国から報復が来たら誰が責任を取るんだよっ!」
「俺は死ぬなんて嫌だぞ!」
怒鳴り合う声が食堂に響き渡った。
「おいっ!迫ったって言ったな。30の町の氾濫はどうするつもりなんだ!チェスター国の魔法使いが来なかったら誰が討伐するんって言うんだ!」
「30の町の氾濫はチェスター国の罠だっ!」
「嘘は止めろ!氾濫のボスは軍が隷属の首輪で痛め付けた龍人だって冒険者ギルドの職員が言ってたぞ」
「何だとっ!」
その後の食堂は冒険者同士殴り合いの喧嘩になった。
そして、氾濫のボスは軍が騙して捕まえていた龍人だと、その日のうちに他の町へも伝わっていった。
翌朝、氾濫は30の町から動いてなかった。
やはりグラムは王都への道を探してるんだ。
食堂へ行ってみると、昨日の喧嘩は嘘だったようにみんなが話し合っていた。
「龍人が捕まったのは龍人の意思じゃなく、軍が罠で捕まえて隷属の首輪をはめたからなのか」
「そうらしい。理由は分からんが意識が戻って捕まってる事に気付いて暴れて逃げた、が真相らしいな」
「隷属の首輪の毒で徐々に狂っていくとか聞いたぞ」
「軍が志願兵全部に隷属の首輪を付けたって話を聞いたが本当なのか?」
交わされる会話は答え探しみたいで、次第に泊まり客の怒りが大きくなっていった。
「軍はハルツ国の獣人だけじゃなく、同じモナーク人も奴隷にしてたのか」
「黙っていたら俺たちも奴隷にされかねないぞ」
「どうしてモナーク国がこんな事になったんだよ」
「王が変わってからだろ」
「そうだっ!王と軍が古の隷属の魔法を復活させてから、国が狂ってしまったんだ」
自然に怒りは王と軍に向いていった。
「王が禁忌に手を出さなかったらこんな事には…」
悔やむような声に別の声が答えた。
「前王が亡くなられて、兄弟どちらを次の王にするか意見が別れたあの時、兄ではなく穏やかな弟王子を選んでいたらこんな事にならなかったはずだ」
「そうだ、我々は選択を間違えたんだ」
「まだ間に合うかもしれない。弟王子は何処だ!」
「見付け出して担ぎ上げろ!」
危機が自分に迫ると感じると、人間は必死になる。
その騒ぎを他人事の様に食堂の端で聞きながら、王に弟が居ると前にも聞いた事を思い出していた。
「王都の牢に閉じ込められてるって話を聞いたぞ」
「北の塔とかって話だ」
泊まり客の話はサクサク進むのに地図の中の氾濫に動きは無くて、焦れながらダンジョンに潜った。
夕方宿に帰ると、王都まで弟王子を救出に行く話が持ち上がっていて、冒険者ギルド以外にも魔方陣が有ると誰かが話し出した。
「それは何処だ!」
「27の町と36の町の軍の施設だ」
「よし、仲間を集めて救出に行くぞっ!」
まるでレナルドを見てる気がして胸が苦しい。
成功します様に、と心から願った。
願う反面罠の予感が強い。
軍の魔方陣にみんなの目が行ってしまって、20の町の冒険者ギルドにある魔方陣が忘れ去られてる。
軍を襲うより冒険者ギルドを占拠する方が早いと思うのは私だけなのかな?
翌朝、昔王都を警備していた老軍人の案内で弟王子の救出隊が組まれ今夜王都に忍び込むらしい。
転移を使えないモナーク人が、27か36の町に直ぐに行けるとは思えなくて、やはり罠が心配になった。
この町の冒険者ギルドに魔方陣があるのに、そんな話は誰もしてない。
完全に国民の目は軍の施設に釘付けになっていた。
一か八か。
朝食が終わって食堂を出るとき、話を誇張して話す人の横を通って20の町にも魔方陣が有るのに、ってvoiceを使って残念そうに呟いた。
「え?この町の冒険者ギルドにだって?」
その夜の攻防は凄かった。
情報操作に成功したと油断してた冒険者ギルド側だったけど、元がSかSSランクの集まりだから押し返す人数が揃えば強かった。
それを影で邪魔して冒険者ギルドの足を引っ張った。
結果冒険者たちが魔方陣占拠に成功して、代表から魔方陣を使って王都に乗り込んだ。
私も隠蔽を使い、3陣目に混じって王都に向かった。
出た先は、王宮の広い部屋。
光の結界で体を守って、一足遅れて部屋の外に出た。
この1歩遅れた事が結果として私の身を守った。
肌がピリッとして、前が倒れて動かなくなった。
隷属の魔法?
私も横に倒れてる人の上に倒れた様に見せて倒れた。
待ち伏せされてたんだ。
見ると白っぽい服の魔法使いが8人杖を構えてた。
暗い金髪が3人で茶の濃い金髪が5人。
茶の5人より暗い3人の服の色が白く見えた。
みんな倒れたと思ったのか、魔法使いたちは倒れてる私たちは放置で出てきた部屋へと入って行った。
少し体を動かして部屋の中を覗いてみたら、魔法使いが魔方陣を囲んで杖を構えていた。
4陣目を狙ってるんだと分かっても1人で8人に向かっていく勇気はなかった。
前の2陣はどうなったんだろう。
それに、軍を襲った方も気になった。
動かないで様子を見ているうちに4陣が出て来て、すかさず魔法使いの杖が光った。
「馬鹿な奴らだ」
「こっちの魔方陣を使われるとは予想外だったが」
「連絡が速くて対処できたんだ。問題ない」
やっぱり内通者が居たんだ。
「こいつらはどうする」
「後は軍にやらせるさ」
「あいつらが龍人を逃がさなきゃ、こんな面倒にはならなかったんだ」
「兎に角、魔導師長の元へ戻ろう」
金髪の3人が前を歩く形で、8人がゾロゾロと長い廊下を移動していった。
今までモナーク国の魔法使いの服は灰色だと思ってたけど、位が上になるほど白になっていくらしい。
だから見習いは灰色何だと、別なことを納得した。
擬装して後ろを着いていく事も考えたけど、見付かる恐怖に勝てなくて見送るしかなかった。
王都からチェスター国のおじいさんの家へ転移した。
「何か進展がありましたか?」
手短にモナーク国の王都に行った話をした。
「そこまで軍が情報操作を徹底してるとは、予想してなかった」
『5人を助ける目処は?』
「まだですが、孫からは念話で状況は聞けました」
おじいさんはホッとした様子で話した。
『何と?』
「人質だからと優遇されてるそうです。転移が使える魔法使いなら、軍を騙して救出も可能だと」
おじいさんが懇願するように見てきた。
『他の魔法使いに頼んでください。私はあの人数の魔法使いを相手にする勇気は有りません』
「モナーク国の魔法使いはそんなに強いのか」
困り果てたおじいさんはがっくりと椅子に座った。
『また念話が着たら、どこにいるのか聞いて下さい』
「助けに行ってくれるのか」
違うと顔を振った。
『それで前の優遇が嘘か本当か分かると思う』
「前の話?優遇されている、と言ってきた話がか?」
説明する気もない、頷いて直ぐに20の町に戻った。
殆どの泊まり客が帰らない宿に戻るのも説明が面倒だから、町を出て直ぐにテントを張った。
睡魔でうとうとしながら考えた。
嘘をつかせる手段なんていくつでもある。
カレンの時みたいに仲間を拷問されたら、目先を取って嘘の念話を送ってくる可能性が高かった。
これからどうしよう。
王都に転移してもあの部屋と廊下にしか出られない。
真夜中に、魔法使いに擬装して歩こうか。
本当に警備を軍がしてるなら、兵士として探るのが違和感が少ない気もした。
朝、姿を又少女に変えてからダンジョンに潜って、夕方、初めての顔で宿に部屋を取った。
宿の中は静かだった。
気のせい?
宿の店主は妙に機嫌が良かった。
翌日から1日に2回時間を変えて王都に転移して、警備と見回りの時間を調べた。
警備は兵士じゃなくて銀の鎧を付けた騎士だった。
何回か転移してみて、無駄に歩いてる人が少ないから私が下手に歩くと目立つ。
なので探索するのは明け方、夜勤と早番?の交代の警備の薄い時間を選んだ。
少しずつ地図を埋めていった。
王都は中心にある大きな中世の石造りの城と王族の屋敷が結界に守られ、その周りを貴族の屋敷が囲みもう1枚の結界が守る。
模型にしたら、シャボン玉の中にもう1つシャボン玉を入れて、それをスパンて半分にして床に置いたら王都を守る結界になる。
結界を二重にしてるから、地図から確かめてもなかなか位置を確定出来なかった。
外側のシャボン玉から出れば地図に場所を特定できる気がして、中のシャボン玉を調べるのを後回しにして先に外のシャボン玉の方を調べた。
中の結界は四方にある門のところだけ消されていて、門には昼夜構わず騎士が立っていた。
緊張しながら騎士の後ろに転移を試したら、すんなり通過できた。
貴族の屋敷のある方は警備の姿も無くて、夜中に歩いて地図を埋めた。
その貴族の屋敷が並ぶ一角に、家の3倍くらい高い塔と古くて汚い家がくっついた場違いな建物があった。
位置的に見張りの塔だと思うけど、見た目は囚人を入れておく牢屋に見えた。
そこにだけ見張りの騎士も居て、『北の塔』の単語が頭の中に浮かんでいた。
その頃になって、救出隊が失敗に終わり全員が捕らえられたとようやく伝わってきた。
やっぱり、だった。
また宿の主人のような内通者がいたんだ。
もしかしたら、捕まえられた人はみんな北の塔へ?
塔が気になりながらも、結界の端まで来て見えてる外に転移しようとしたら、ゴンと激しい圧迫があって耳障りな音が響き渡った。
えぇっ!
嘘!
強引に闇魔法で結界に穴を明け外に出た。
これできっと警戒が強化されてもう調べに来られなくなる、と思ったら闇魔法を使ってた。
見張りの騎士が着て捕まる前に地図で位置を確かめてから、直ぐ宿の部屋に転移で逃げた。
やはり、それから30分もしないで冒険者ギルドの職員と兵士が宿に来て、1部屋ずつ調べて回った。
この前の私を探した時みたいに、全部の町の宿を調べてるはずだと予測できた。
寝ていたところを起こされた、ふりでドアを開ける。
「ほらここは子供ですよ」
兵士が形だけ確認すると、直ぐ次の部屋へ移った。
宿の部屋を全部見て回った兵士は、宿の主人に硬貨を1枚渡して囁いた。
「怪しい奴は知らせてこい。また賞金を出す」
「分かってますよ。知らせますからこっちの方は」
主人が手の中の硬貨を2度3度宙に投げた。
やっぱり…。
兵士と主人からは見えない階段の途中に身を隠して、その話を聞いていた。
もしかしたら、って思ったけど違うとも思ってた。
自分の人を見る目の幼さのショックもあるけど、その欲の通報のために何人もの冒険者が犠牲になったのが許せなかった。
冒険者ギルドの職員が帰って、主人が1人になった所で雷を使った。
外傷もなく死んだら、どう片付けられるのか知ってるから迷わなかった。
これで彼らの悔しさが減るとは思えないけど、今出来るのはこれしかないから部屋に戻って手を合わせた。
ギルド職員を見逃したのは、1度に同じ場所で2人は怪しまれると思ったから。
宿の主人の不審死に冒険者ギルドの職員と軍の兵士が来て調べていったけど、もちろん手掛かり無しだから突然死として事務的に扱われて終わった。
その日の夜、グラムが王都を襲った。