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ゲームの世界に転生?  作者: まほろば
43の町から50の町
63/95

ネックレスと商人



47の町から50の町へ本線を行くつもりだった。

47の町に1泊して、そう考えて乗り場に出てる屋台のおじさんに聞いてみた。

「宿屋かい?2本先の通りにある宿がお薦めだ」

ニヤッと笑う顔が信用できなくて、危険だけど冒険者ギルドでも聞いてみようと思った。

冒険者ギルドの手前に花の看板が目についた。

先に雑魚を売ろう。

店は優しい感じのお爺さんが店番していた。

指輪を見せて、怪しまれない程度に雑魚から中級までを出して並べた。

「48の町のダンジョンへ行ってたのかい?」

『はい』

お爺さんはにこにこと出した装備に値を付けた。

「大金貨700枚でどうだい?」

『はい。あとお風呂があって食事が美味しい宿屋を紹介してください』

代金はギルドカードに入れず現金で欲しいと伝える。

「お前さんも冒険者ギルドに騙された口かい」

固まって動けなかったら、お爺さんが笑ってわしも軍と冒険者ギルドは嫌いだと言った。

「志願兵と偽って若い冒険者を奴隷にしよる」

黙ってお爺さんを見た。

「お前さんも仲間を奴隷にされたようじゃな」

咄嗟に身構えた。

良い人に見えたのに違うかもしれない。

「お前さんのきつい目を見れば直ぐ分かる」

お爺さんは大金貨と宿までの地図を寄越した。

「わしが信用できたらもう1度おいで」

お辞儀をして急いで店を出た。

冒険者ギルドへ向かう必要が無くなったから、乗り場で明日の時間を確かめてから宿へ向かった。

この47の町も、人数は少ないけど、町を巡回してる兵士がいた。

宿で個室を取って食事よりお風呂を先にした。

ゆったりお風呂にしてから食堂に行った。

食堂は冒険者より商人が多くて、周りから聞こえてくる話も商談が中心だった。

「43の町からようやく軍が居なくなったな」

「まだ駐留してる小隊は居るぞ」

「居ないも同じさ」

「次は48の町に集まる手筈らしいな」

48?

隣のテーブルの話が気になった。

「軍は最下層に10人が閉じ込められたダンジョントラブルって事にして、チェスター国の魔法使いを呼び出して捕まえたいらしい」

「ホントなのか?」

「もうチェスター国に救出依頼を出したらしいぞ」

「それが嘘だってチェスター国にバレたら大変だぞ」

モナーク軍の中にあの番人を倒せる兵士が居るとは思えないから、情報だけ流した気がした。

「馬鹿。大きな声出すな」

キョロキョロ周りを見ながら、今日仕入れたばかりの情報だからバレたら俺が疑われると必死だった。

偶然だけど、48の町を離れて良かったと思った。

あれ?

って思ったのは部屋へ戻ってからで、43の町の話も罠だった可能性に気付いた。

誰を騙したくて流した罠だったんだろう?

軍が何の目的で動いてるのか分からなかった。


翌朝、予定通り50の町へ向かう馬車に乗った。

乗客は9人で荷台は私1人。

翌日から降りだした雨は3日経っても止まなかった。

雨が続くとどうしても病人が出る。

この旅でも小さい女の子が熱を出して、母親が商人に初級ポーションを売って欲しいと頼んでいた。

「お願いです。50の町に着いたら必ず払います。ですから売ってください」

「今お金が無いなら売れませんよ。ですがそのネックレスと交換なら売っても良いですよ」

「そんな、これは…」

商人の言い分は弱味を突いた商いだけど、それを間違いとは言えない。

小さい子供を連れているなら、初級ポーションくらいは用意しておくべきだと私も思うから。

母親はネックレスと取り換える決心が付かないらしく、他に誰か持ってないかと隣の馬車にも聞いていた。

『どうぞ』

子供の泣き声を聞いているのも嫌だったから、メモと一緒に初級ポーションを母親に渡した。

「え?ありがとう」

母親は、メモから私が話せないと気付くと、子供に飲ませたあとこっちに背を向けた。

予想してたから気にもならない。

さっさと荷台に戻って、親子の事は直ぐに忘れた。

その2日後、止まない雨でぶり返したのか子供の熱は更に上がった。

母親は私にもっと無いかと聞いてきたが、私は無いと手真似で伝えてマントにくるまった。

50の町に着くのは明日の夕方。

母親は50の町に着いたら返すから、とポーション代を貸して欲しいと乗客に頼んで回った。

母親の私への対応を見ていた乗客は、お金を持っていても貸そうとしなかった。

私のように踏み倒されては敵わない、と乗客の顔に書かれていた。

荷台に乗ってる冒険者はお金が無いと思っているらしく、私はスルー。

夜にネックレスがポーションになった様子が聞こえてきても関係なかった。


50の町はひっそりとしていた。

雨だからじゃなくて、町が静かだった。

乗り場の屋台にお薦めの宿を教えて貰い個室をとる。

食堂も同じで、話しているのは同じ馬車に乗っていた客ばかりだった。

「いったいこの町はどうしたんですか?」

静けさに堪りかねた1人が宿の店主に聞いた。

「軍から情報が漏れるから話すな、と命令が」

宿の主人はひそひそ声でそう客に答えた。

「情報が?情報って何の情報ですか。それが分からなきゃ漏らす漏らさないも無いでしょう」

「何でも48の町にチェスター国の魔法使いを捕まえる罠を仕掛けたとか、それがその日のうちにチェスター国の知るところになってしまったそうです」

宿の主人は声を押さえるよう手真似で泊まり客伝えて、情報が何なのかを話した。

そうか。

速い段階でクラークさんの耳に入ったらしい。

ホッとする自分が馬鹿だ。

食事しながらステータスの地図を見た。

氾濫の兆候はない。

何か分からないけど、警戒させる何かがある気がして落ち着けない。

部屋の明かりを付けずに窓の外を見る。

目立たないようにしてるけど、道の角に兵士が立っていて歩いてる市民を見張ってるみたいだった。

真夜中まで待って、兵士交代の隙をついて町を出た。

氷のダンジョンまでの道は明かりが無くても平気。

50の町から1時間くらい歩いて着いた神殿跡は、風化して屋根とか壊れていた。

嘘…。

ダンジョンへの地下へ続く階段がない。

そして。

階段があった場所に碑石があって、繋げると4角形になる4つの窪みと真ん中にもう1つ窪みがあった。

もしやと思って土と雷と炎の指輪を出したら、4角形の窪みの3つが光って反応した。

これって…。

42の町のダンジョンも潜らなきゃ駄目って事?

脱力してしゃがみこんでしまった。

48の町のダンジョンは潜れたから、42の町のダンジョンも潜れるかもだけど馬車がある気がしない。

1度43の町へ行って馬車があるか見てみよう。

はぁ…。

もし42の町のダンジョンクリアして指輪を揃えても、真ん中の指輪が無いよね。

それってアウトじゃないの?

普通ゲームのパターンなら

ここは氷のダンジョンに入れて、ボスを倒して5つ目の指輪を手に入れたら氷の竜に会うための5つの指輪を嵌める碑石が現れる。

普通絶対そんな設定でしょ。

ホント止めて欲しい。

ここまで来てゲームの難易度上げてとうするの。

これ無理ゲーだった?

有り得ないから。

立ち上がって辺りを見回しても、氷のダンジョンへのヒントらしい物は見当たらない。

部屋へ戻る前に魔法で可能な限り復元して、光のシャワーで聖地らしく清めた。


行く宛を見失って、がっかりして部屋へ転移した。

ばふんとベッドにダイブして、今日はもう寝ようと思っていたら外が騒がしくなった。

窓から外を見ると、女の子が兵士に追われていた。

伸び上がって見たけど、女の子が角を曲がるところまでしか見えなかった。

それから2時間くらいして、乱暴なノックと大声で叩き起こされた。

「起きろっ!」

「お客さん起きてください」

寝惚けながらドアを開けると、宿の主人と兵士が廊下に立っていた。

「泊まっているのはお前だけか」

眠たそうにして頷いた。

「ほら、お客さんだけでしょ」

主人が兵士を促して出ていった。

何がどうなったのか分からないまま朝になった。

夜中に起こされて2度寝したせいかまだ寝足りない。

あくびしながら食堂に行くと、主人が来て昨夜の騒ぎを謝ってきた。

「済まなかったね。昨夜捕まえた孤児に逃げられたらしくて、全部の部屋を見せろと聞かなかったんだ」

『悪いことしたの?盗み?』

「探してる理由は言ってなかったな」

食堂が混んできたから仕度しようと席を立ったところに、昨日の兵士が他にも4人連れて入ってきた。

「主人。もう発った客は居るか」

「いえ、まだここか部屋にいます」

「なら全員をここに集めろ」

主人は理由を聞いたけど、兵士は揃ったらを繰り返して強気だった。

泊まり客が集まってから、4人の兵士は食堂を出た。

残った1人が威嚇しながら話し出した。

「この中に町長婦人のネックレスを盗んだ奴がいる。大人しく自首しろ」

黙っていても4人が荷物を確かめてると言った。

兵士のネックレス云々を聞いて、馬車で一緒だった2人が互いを見た。

あのネックレスとポーションを取り換えた商人はこの宿の客じゃない。

他の宿に泊まってるとか、最悪この町に家がある可能性もある。

そう考えていたら、乗り合わせていた客の1人がネックレスとポーションを取り換えた話を兵士にした。

「町長婦人から取り換えただと」

「はい。あの馬車に乗ってた者はみんな見てます」

「その取り換えた商人はどこにいる」

「この宿には居ませんよ」

商人は取り換えた商人の特徴を兵士に教えた。

「見付けるまで1人も宿を出すな」

兵士は主人に命令すると宿を出ていった。

「すみませんがそう言う事なので」

申し訳なさそうに主人が頭を下げた。

昼食の時に、納品にきた八百屋から聞いた話として、主人がその後の話を泊まり客にした。

「町長がネックレスをしてないと婦人を問い詰めたのが夕食の時で、その時婦人は馬車を降りるときに孤児がぶつかってきて盗まれたと言ったそうなんです」

それで、盗んだ孤児を捕まえるために、駐屯してる兵士が駆り出されたらしい。

何人かの孤児を捕まえて質問してたら1人が逃げた。

主人の話を聞きながら、窓から見たのは孤児を捕まえてるところだったんだと納得した。

夜中のは逃げた孤児を探してたんだろう。

「ところが、迎えに行った者たちを集めて町長がみすみす盗まれてと叱責した」

そんな事実は無いから、迎えに行ったは否定する。

それで、実はネックレスとポーションを取り換えたと町長婦人が話したのが今朝早くらしい。

ネックレスは大金貨200枚はする品だから、町長は怒り狂ってその商人を探してるそうだ。

まだ探してる途中なのか。

見付かるまで商談にも出られないし馬車は行ってしまってるからこの町を出ていくことも出来ない。

泊まり客は不満を主人にぶつけた。

主人が今夜の宿代を払えと泊まり客に言った事で、更に不満は膨らんだ。

夕方取り換えた商人は見付かったが、何故か私まで町長宅に呼び出された。

行ってみると、町長の家の居間には1人の男性の他に、あの母親とあの商人が不貞腐れて座っていた。

「君は家内にポーションをくれたそうだけど」

椅子から立ち上がった町長は、30才を超えたくらいの真面目そうな人だった。

町長の隣に座ってる町長婦人を見てから頷いた。

「その時の話が聞きたい」

最初の商人と町長婦人の会話からポーションを渡した経緯、2個目は無かったから断った話に誰もお金を貸さなかった話までをメモに書いた。

「家内は支払いの約束をしなかったのか」

町長が横の町長婦人を確かめるように見た。

「違うわっ!その子がいらないと言ったのよ!」

「ふんと横を向いて払わなかったじゃないか。同じ馬車に乗ってた他の2人もその場を見てるんだぞ」

町長婦人の言葉に被せるようにして、商人が否定する言葉を吐いた。

「違うわっ!払う約束をしたわよね。ねっ」

町長は哀れむように町長夫妻を見てから私を見た。

「すまなかった。倍額を支払おう」

町長は、子供連れだから薬は多目に持っていくよう言い付けていたそうだ。

「家内の叔母が病気になって、その見舞いにやらせたんだが。一緒に行かせた召し使いを叔母の看護に残して来たばかりかポーションも置いてきたようだ」

町長はかなり怒っていて、町長婦人を里に戻すときつい口調で言っていた。

「あなた!」

「何度も言ってきたはずだ。今までは目を瞑ってきたが、子供の命まで危険に晒すほど愚かだとは」

言いながら町長の両手は怒りに震えていた。

「そこの商人との話も長くなりそうだ。先に君への謝礼を払おう」

町長に促されて別室へ行くと、大金貨10枚と手紙みたいなメモを渡された。

「君は冒険者のようだから金より価値があるだろう」

開いて見るとどこかの迷路の地図だった。

「48の町のダンジョンは行ったことがあるか」

頷き返すとボスはと聞かれた。

もしかしたら。

ステータスを見ると、イベントが点滅していた。

頷いて、ボスの装備一式を机に出した。

「その紙は裏ボスへの地図だ」

改めてみると、28階の休憩室らしい。

「どこか分かるらしいな」

剣を取って見ていた町長にはっきり頷いた。

「この装備を譲って貰えないだろうか」

『この地図の代価としてどうぞ』

「良いのか?」

頷いて宿に戻った。




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