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ゲームの世界に転生?  作者: まほろば
43の町から50の町
61/95

噂とダンジョン



のんびり温泉でふやけた後、43の町に向かった。

47の町までは馬車で6日、大金貨2枚。

44の町へは6日で金貨1枚。

氾濫から一月も過ぎてるから、本線の馬車警護の冒険者パーティーも復活してた。

支線の町に立ち寄る必要は無いので本線を選ぶ。

乗客は9人で荷台は私1人。

すんなり荷台に乗れたので楽な6日の旅だった。

47の町は普通の田舎の町だった。

歩いてる人に金持ちの身なりの人はいないし、奴隷の姿もなくて予想に反したのんびり風景だった。

冒険者ギルドで宿を紹介して貰おうとして、止めた。

ステータスの地図を見たら宿は2つしかない。

どっちかに決められなくて、乗り場に出てる屋台のおじさんに焼いた肉の串を買いながら聞いてみた。

「宿かい?綺麗なのは前にあるあれだが、俺なら1本裏の料理が美味い宿に泊まるな」

お礼を伝えて、薦められた宿に部屋を取った。

古い宿だけど掃除が行き届いていて部屋も良かった。

夕食を食べに食堂へ行くと、冒険者で溢れていた。

隅のテーブルに座って、冒険者たちの話を聞いた。

話の半分は48の町のダンジョンで、もう半分は軍のハルツ国攻撃と魔法使いの話をしてた。

「ハルツと36の町で戦ってるって話だが、軍の勝ったって話が聞こえてこないな」

「ああ、チェスター国が見離したらしいからな」

見離した?

チェスター国が?

「ああ、あの報道間違いでか」

横から、誰も名前なんか覚えちゃいないのによ。

とか聞こえてくる。

「告げ口したって軍が発表した女がチェスター国の魔法使いの友人だって話だ」

「モナーク国がキチンと訂正しなかったから魔法使いが怒って、これからは氾濫の手助けにもチェスター国の魔法使いは頼めなくなったって話だ」

「軍がキチンと対応して訂正してたら、この戦争も魔法使いに手助けさせて楽勝だったってのによ」

………

こんなの訂正じゃない。

軍にすれば、私を人質として捕まえれば魔法使いが言いなりになるって思うだろう。

悪人にされるよりもっと悪い。

逃げ隠れするみたいで嫌だけど、軍から逃げるには擬装するしかない。

そこまで考えて、へたに偽装するより髪を茶色にすれば良いんだと閃いた。

もともと地味子だから、軍のあの女と同じで軍が私の顔をはっきり覚えてるとは思えなかった。

チェスター国特有のこの黒い髪の色を、1番多い茶色に変えれば見付からない可能性が高いと思えた。

「魔法使いの友人の名前、何つったかな」

「マリアとかエリスとか何か普通の名前だったぞ」

「名前知ってどうするんだ?」

名前!

「魔法使いにモナークの味方しろって頼ませるのよ」

「言うわけねぇだろ。俺だって軍に濡れ衣かけられたらぜってぇ許せねぇからな」

「それもそうだな」

がははと笑いながら、冒険者たちは話題を変えた。

冒険者たちは覚えてなくても軍からは逃げられない。

クラークさんは最低な方法を選んだと改めて思う。

居場所がなくなってチェスター国に戻るとか考えている気がして、無性に腹立たしかった。

「魔法使いがダメなら龍人を使えば良いのによ」

「隷属の鎖を着けたら廃人になったって話だ」

「カレンが魔物使いで龍人を操ってたって話だぞ」

「そのカレンにも隷属の首輪を着けたら龍人に命令出来なくなって使えなくなったんだと」

「軍も馬鹿だよな」

そうか、軍はグラムに命令出来ないままなんだ。

それを聞いてホッとしてる自分がいた。

龍人の本当の力の前では私は到底敵わない。

絶対に戦いたくなかった。

それに、グラムが居なければこの戦争でどっちかが勝つとか無い気がした。

「でもよぉ、思ったより稼ぎにならなかったな」

「ああ、15階層の番人が居なけりゃ楽勝なのによ」

「光魔法しか効かないとか詐欺だよな」

光魔法?

48の町のダンジョンは変わってないのかも。

48の町のダンジョンは30階層で、ボスは闇魔法を使う女の吸血鬼。

ドロップはグラムに渡した装備がランダムで1つ。

氷のダンジョンを知らない普通の冒険者には、最上級ダンジョンだった。

兎に角行ってみよう。

立ち上がりかけて、思わぬ話が聞こえてきた。

「43の町に眠る武器でもありゃあ違うだろうが、軍が血眼になって探しても見付からないんだからな」

「お前にゃ最初から無理だ。諦めろ」

「うるせぇっ!」

「軍でも見付からないんだ、ガセかもしんねぇぞ!」

その後は有る無いの喧嘩になって、でっぷり太った店主が止めさせに奥から出てきた。

これ以上は居ても聞けないだろう。

目立たないよう、ソッと部屋へ戻った。


翌朝48の町への馬車に乗った。

48の町へは金貨1枚で4日。

50の町へは大金貨3枚で7日だった。

残念だけど、48の町までは馬車の中だった。

乗客は15人で荷台3人。

荷台にはボロボロの装備の3人が乗り込んだ。

夜営地に着いて、焚き火の番は荷台の3人が当然の顔で引き受けた。

炎に見えた顔は疲れた40くらいのおじさんたちだったから、飲まずには居られないのかもしれない。

馬車の横で寝ている私の所へも、お酒の臭いがした。

うとうと、時々目覚めながら夜明けを迎えた。

狼の群が火の番の3人を襲ったのはあっという間で、お酒が入った袋を奪うとさっと走り去った。

後には狼に抵抗して傷をおった冒険者が残された。

互いに傷の手当てをしあい、文句を言っても乗客は誰も相手にしない。

幸い2日目の夜は48の町からの馬車に冒険者パーティーが乗っていて、焚き火の番をしてくれた。

3日目の夜は48の町からの馬車も商人や女子供だけで、仕方無く乗り合わせた商人3人が交代に火の番をする事になった。

夜も遅くなって、荷台の1人が熱を出して残りの2人が薬は無いかと騒ぎだした。

狼に襲われた傷はかなり深かったようだ。

薬は持っているが、代金の払えない奴にただで渡すほど商人も甘くない。

私も見てみぬ振りをした。

脅してでも出させようとする冒険者2人に、商人3人は抵抗して出さなかった。

商人でも旅慣れているようで、冒険者に喧嘩で負けないくらい強かった。

そして翌日、熱を出していた冒険者は48の町に着く前に冷たくなって死んだ。

休憩の時間に、残った2人の冒険者が死んだ冒険者の装備と服を剥いで土に埋めた。

これがこの世界の現実。

明日の我が身かも知れない現実。

アイテムボックスのポーションを渡せばあの冒険者は死ななかったかもしれない。

そう分かってるけど出す気持ちにはならなかった。

一時の同情でポーションを渡してしまえば、彼らはダンとカラと同じになる。

胸に沸く苦い思いを飲み込んで着いた48の町は、鍛冶屋と宿屋と薬屋の町になっていた。

ダンジョンの町だから大きい冒険者ギルドもあったけど、行く気にならない。

もし、冒険者ギルドの許可がなければダンジョンに入れない、とかにならなきゃ近付きたくなかった。

乗り場に出てた屋台のおばさんから宿を教えてもらって、半月分を先払いして個室を取った。

ダンジョン探索は明日からにして、今日はゆっくりお風呂に入ると決めた。

お風呂に満足して食堂へ行くと、少年が冒険者に頭を下げて何か頼んでいた。

夕飯を食べながら聞いてると、パーティーに入れて欲しいと冒険者に頼んで歩いてるらしい。

どのテーブルでも断られて、少年はがっくり肩を落として食堂を出ていった。

装備も初心者用だし中の服も汚れていて、年齢から孤児が冒険者になった感じだった。

何故軍に志願しなかったのか不思議に思った考えを、直ぐ訂正した。

意思を無くす奴隷になるより、苦しくても冒険者として生きていく方が未来に可能性が残ってる。

少年がそのまま宿を出たとは思わなくて、翌朝ダンジョンで見たときは目の前の光景に驚いた。

馬車の荷台にいた冒険者2人と少年が、一緒にダンジョンの入口から中へ入っていく。

3人と道を別にして1階から攻略を始めた。

1階から2階、3階までは信じられないくらい初心者用のダンジョンになっていた。

4階から6階は初級の中級で、7階から10階は初級の上級になっていた。

11階から15階は中級の初級の強さだった。

15階まで1週間もかかったのは、無駄に広いし埋まってなかったコレクションが数点出たからもっと集めたくて何度も1階から周り直したからだ。

初級だけでまだ10点以上埋まってないけど、これ以上は出そうになかった。

何度も繰り返す中で時々あの3人とニアミスする。

3人は初級の中級の4階から6階に毎回いた。

会う度に少年は疲れた顔をするようになって心配だけど、私がかける言葉は無かった。

15階の番人はゴーレム。

装備を最強にして挑んだ私が馬鹿みたい。

ただのゴーレムで脱力した。

ポーーン。

冒険者が言ってた光魔法は効かなかった。

他の魔法も効かないし固くて普通の武器は効かない。

だから冒険者に倒せないと言われてるんだろう。

でも、何故光魔法になったのか不思議だった。

レベルが上がって120。

念願の闇魔法の全体魔法と、何故か土魔法の地震のスキルを手に入れた。

地震で町を地の底に沈めるとか想像したら怖すぎる。

自分が中まで悪魔になった予感にゾッとした。

翌日から覚悟して16階から攻略する。

気負って足を踏み入れた16階は変わらず中級の中級で、22階まで中級のままだった。

簡単なのに経験値の美味しい魔物ばかり増えて、22階に着いたらレベル123になっていた。

23階から28階は、中級の中級から上級の魔物が混ざって出てくるようになった。

最終ダンジョンがこんなに優しくて良いんだろうか。

ここにはドラゴンが居ないからこんなに楽なの?

答えが見付からないまま29階への階段を降りた。

29階に着いた時のレベルは128。

覚悟して、装備を最強にして29から進んだ。

29階から30階は中級の上級で吸血蝙蝠がメインで光魔法を多用するしかなかった。

魔力の残りを気にしながらの攻略は疲れる。

ボスの扉の前に着いたのは昼だったけど、魔力の不安から明日に伸ばして1階に転移した。

装備を変えて、夕方まで淡々と階数を重ねる。

埋まらなかったうちの1つが幸運にもドロップして、にやにやしながら続けた。

降りた7階は不穏な空気が流れていた。

聞き覚えのある怒声と戦っているらしい音。

あの3人だと直ぐに分かった。

「倒れてねぇで戦えっ!」

「こいつ倒さなきゃ今日も野宿だぞっ!」

信じられない言葉に動けなかった。

倒れてるのは少年だろう。

初級の中級じゃそんなに稼げないかもしれないけど、3人が安宿に泊まるくらいにはなるはずだった。

幸い今は茶髪に擬装してる。

3人の前に走りながらvoiceを使った。

『早く逃げろっ!』

「ありがてぇ」

「逃げるぞ」

2人の冒険者は少年を引き摺って階段を登った。

サクッと片付けて、その日は15階のゴーレムを倒してから宿に戻った。




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