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ゲームの世界に転生?  作者: まほろば
バック30の町から
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40の町



勢いで36の町に来てしまったけれど、何処へ行こうか全然決まってない。

乗り合い馬車乗り場で何処に行こうか本気で悩んだ。

この先はハルツだから本線を上がるしかない。

獣人に擬装してハルツ国へ行くのは、負けた気がして絶対嫌だった。

どうしよう。

37の町から42の町まではハルツ国と書かれてある案内図を見て、固まってしまった。

あ…、次のダンジョンが…。

本線は36、40、43、47、最後の50。

42の町の風のダンジョンはハルツ国にあった。

そして、44の町から49の町まではモナーク国。

どうしよう。

42の町のダンジョンを諦めたくない。

諦めたくないけど、行くのは無理だとも感じていた。

…43の町まで行こう。

今は43の町を目指すしか道が見付からないから。

どうしてもダメなら10の町へ戻ればいいんだ。

そう思いながら料金を見れば、本線の40の町へは馬車4日で大金貨1枚とあった。

「40の町へ行くのかい?」

声に振り向くと、横に怪しい感じのおじさんがいた。

「怪しいもんじゃないよ」

先を越されてじっと見た。

「36と40の間は狙われるから、行くなら気を付けろと言いたかったんだよ」

おじさんはお礼に酒代を少しくれないかと言った。

『狙われるって?』

銀貨を1枚渡して念話した。

「ハルツの獣人を捕まえるのに軍が馬車を囮にするんだよ。36から40に重要書類を送ると偽の情報を流してそこを襲わせるのさ」

『ハルツは引っ掛かるの?獣人ってバカ?』

「たまにな。それにここだけの話だが、27の解放軍の残党も書類欲しさに狙ってくるって話だぞ」

途中から顔を近付けてきたおじさんを避ける。

『解放軍なんてあるの?』

「あるさ、知らないのか?」

『知らない。何から解放するの?』

「色んな事からさ、兎に角怪しい奴を見付けたら軍から冒険者ギルドに知らせろ。いいな」

途中からめんどくさくなったのか、おじさんは軍人の口調で言い捨てて別の客と話し出した。

…軍人だったんだ、解放軍の残党って…。

あ…、あのサブリーダーって言ってたあの青年は逃げ切れた3人のうちの1人なのかもしれない。

まだ他にも居るのだろうか。

あっ!

心臓がどくどくした。

カレンとグラムの居所は把握してると言っていた。

なら、私が35の町に居た事も?

…でも、ダンジョンの中に軍の気配は無かった。

なら何処から見張ってる?

1人で考えたくて、乗場の真ん前の宿を取った。

個室を頼むと驚かれたが、構わず部屋へ行った。

せっかく静かな場所にきたのに、それでも落ち着かなくて何も考えられなかった。

酔った振りしたあのおじさん軍人の目的も分からなくて、苛々してたら夕食を知らせるベルが鳴った。

部屋の中でいったり来たりして、食堂へ行かないでいたら宿の奥さんが呼びに来てしまった。

仕方無く食堂へ向かう。

考えながら食堂へ入ったら、右隅のテーブルに信じられない2人が食事していた。

ドクン!!

立ち止まらなかった自分を誉めてあげたい。

食堂へ入ってきた私にチラリと視線を投げて、軍の女は前に座るルルへと視線を戻した。

え?

女に私の顔が忘れられてるとは思えない。

あっ。

多分前髪切ってないから私だと分からなかったんだ。

この幸運に感謝して、女を背にした席に座った。

クラークさんはクララさんとルルはこの世界から消えると言ってた。

なのに現実としてルルが目の前にいる。

この矛盾がこの世界なんだ。

「甥のクラークから返事は着たんですか?」

「チェスター国の総括クラークさんからは冒険者ギルドを通して素材の引き渡し拒否の連絡がありました」

え?

ルルの怒った返事は早口で聞き取れなかった。

「もう1つの検案のルアンですが、確かに魔法は使えないんですね?」

「使えません。私が軍に没収された雷の腕輪を使って魔物を倒してたのを、この目で確かに見ました」

誰かに見られてる気がした。

それで気が付いた。

これは、罠だ。

大袈裟にぎょっとして後ろを見てから、夕食を持って他のテーブルに移った。

手遅れかもしれないけど、擬装で雰囲気も変えた。

ルルもチェスター国を誘き寄せる罠だ。

それと知らず、私が掛かるところだった。

危なかった…。

味も分からない夕食を残さず食べて、きりきりする胃を隠して普通な振りで部屋へ戻った。

『クラークさん。聞こえますか?』

『どうした?』

『すいません。本当に偶然なんですが、ルルの罠にはまりそうになりました』

事情を話すとクラークさんの笑い声が聞こえた。

ルルがモナーク国で優遇される条件として、氾濫の時の素材の返還を求めてきたと聞いて驚いた。

『氾濫の時の魔法使いを特定したいから、ルアンが魔法を使えるのかをルルに確認したんだろう』

バレてたのかとため息を付いたら、クラークさんが違うと教えてくれた。

チェスター国民のはずのクララでさえチェスター国に戻れない事実をモナーク軍は掴んでいて、クララから引き出せる限りの情報を得たと思っていたらしい。

『クララの話で、モナーク国の軍の中でチェスター国は何時でも占領できる国に成り下がっていたんだ』

『でもモナーク軍は結界を抜けられないんじゃ?』

『最近抜ける秘策を見付けたようだ』

『えぇ!』

『だから30の町の氾濫を口実にチェスター国をモナーク国に取り込もうとしたんだが』

『…が?』

『チェスター国の優秀な魔法使いがあっさり討伐してしまったから、大義名分が無くなった』

『でも…、きっとまた言ってきますよ』

『嫌、氾濫を討伐した魔法使いがチェスター国に居る限り迂闊には襲ってこれない』

クラークさんは奴隷の数の激減と補充がきかない現実がチェスターを助けている、と淡々と言った。

『最近は大金を見せ付けて、国民から少年志願兵を募っているとも聞く』

何も言えなかった。

『モナーク軍がルアンに目を付けた理由は、もう何度も接触してるんだ説明する必要も無いな。それと、ルアンは気付いてないと思うが、モナーク軍が接触出来るチェスター国民は俺とルアンだけだからだ』

『あ…』

『万が一、モナーク軍がルアンを捕まえたらチェスター国の魔法使いが隊を組んで強奪すると脅してある』

クラークさんは保険だと笑った。

『あ、それと』

もう1つ、35の町のダンジョンで予想してなかった3人に会った事も話した。

何処から監視してるのか分からなかったとも伝えた。

『何にも感じなかったのか?』

『はい』

『気付かれずに監視か…』

疑問のまま、取り敢えず43の町を目指すと伝えて念話を終えた。


翌朝、40の町へ向かう乗り合い馬車に乗った。

馬車5台で乗客は18人。

荷台は私と同じくらいの細い少年だった。

昨日の話を知ってから見る乗客はみんな軍人に見えて、とても中に乗る気持ちにはなれなかった。

トイレ以外は下にも降りず、時間の経つのが長い。

森から遠巻きな視線は感じるけど、それが獣人なのか人間なのかは見分けることは出来なかった。

違う、しなかった。

どちらの味方もしたくないから関わりたくなかった。

短い旅を終えて着いた40の町は、がらんとして廃墟かと思うくらい寂れていた。

馬車を降りて冒険者ギルドまで歩きながら両脇の店を見ると、半数以上が空っぽだった。

町に人が少ないからぶつかってくる子供も居ない。

36の町は…、って思い出そうとしてハッとした。

グラムを37の町への馬車へ乗せた時の36の町と、数日前の36の町は全然違っていたって今頃気付く。

何故?

何が違うのか分からなかった。

あ…獣人が居ないんだ。

着飾った金持ちは減って少なくなったけどいるのに、獣人の奴隷は1人も見当たらない。

そう言えば…、冒険者ギルドで獣人用のカウンターが無人になったのは何時から?どの町からだった?

記憶がボヤけてて思い出せない。

ステータスの地図から町を見ると、子供らしい反応が町外れに集中していた。

自分に隠蔽を掛けて、町外れまで歩いた。

探しても子供の中に獣人の子供は見当たらなかった。

諦めて道を引き返して、着いた冒険者ギルドは人が少なくて閑散としていた。

職員の目が一斉に私へ向いて、次の瞬間ガッカリしたように反らされる。

依頼板を見る振りをして、こそこそ話す職員の声を風魔法で拾い集めた。

「本当にチェスター国の冒険者がこんな寂れた町に来るのか?軍の見間違いだろ」

「36の町の宿でギルドカードを出してる」

「この町への馬車に乗ったのは確認されている」

!!

自分の迂闊さにげんこつしたい気分だった。

「それにしても遅いな。とっくに馬車は着いてる」

「まさかと思うが冒険者ギルドに寄らないで宿を取ったんじゃないのか?」

「それならそれで連絡が入るはずだ」

自分への怒りで体が震えた。

「もっとその冒険者の情報は無いのか?」

「残念だがチェスター国の冒険者ギルドから泊まった情報が抜かれて、性別も年齢も分からない」

「いや、軍からは少女のはずだと来てるぞ」

!!

また一斉に私を向いて、残念そうに反らされた。

もしや…、女の子に見えないとか?

「その女の子を捕まえて、チェスター国に素材の返還させるつもりなんだろ?」

「有り得ないよな」

「だよなぁ。態々自分から捕まりに来るとか、チェスター国の奴ってハルツより馬鹿なんじゃないか?」

もうムカムカしながら冒険者ギルドを後にした。

地図から探した唯一の宿は馬車乗り場の近くだった。

え?

宿の手前の暗闇に人影があった。

見ると同じ馬車の荷台に乗っていた少年だった。

そのまま、気付かなかった振りで宿に入った。




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