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ゲームの世界に転生?  作者: まほろば
27の町から36の町
49/95

ガウとダンジョン



グラムに擬装の魔法を使った。

人間にしても元が高いから、そう変わらなかった。

身体中に浮かんでいた鱗が消えて、髪が黒っぽくなったら全然別人に見えた。

グラムの髪は綺麗な藍色に銀が混ざったような不思議な髪だったから、上手く変わってホッとした。

『グラム。私は話せない。だから普段はvoiceじゃなくて筆談を使う』

『何故だ』

『voiceは効果がある距離が限られているから』

『だから念話か』

『そう』

寝る前に作った服を渡す。

『着てみて。サイズは魔法で変える』

『器用だな』

『スキルがあるから』

ふと気付いた。

『グラム。魔力は?獣人は魔力高いんでしょ?』

『俺は獣人ではない。魔力は回復に使っている』

『グラムは回復したら声が出るんだよね』

『ルアンは何故出ない』

『声帯が無いから』

喉を触って見せる。

『無いと話せないのか?』

『自分の喉を触れば分かるよ。切られた場所に有るのが声帯。そろそろ時間だから』

グラムが居るから荷台ではなく馬車の中にした。

このまま36の町まで馬車を乗り継いで行って、グラムをハルツ国に行く馬車に乗せたら、転移で35の町に戻ればいい。

グラムは馬車に乗るのにお金が掛かると知って、金が無いからと乗るのを嫌がった。

『大丈夫。お金ならたくさんある』

なだめて乗せた。

旅は冒険者パーティーが居たから楽だった。

『あいつらはなんだ?』

『冒険者のパーティー、35の町のダンジョンへ行くと言っていた』

『殺意を感じない』

『魔物に会えば変わる』

グラムは不思議そうに冒険者パーティーを見ていた。

グラムは人の暮らしを知らない。

野生の動物を本来の世界に返すように、出来るだけ速くグラムをグラムの世界に返すべきだと思う。

36の町で魔法の袋を買って中にお金や食糧を入れて、念のため装備を渡せば何とかなるだろう。

あ、渡す前に聞かないと。

『グラム。装備は使う?』

『ああ、剥ぎ取られて燃やされたからもう無いが』

『手持ちの装備で使えそうなの後で出すから選んで』

『悪い』


35の町は冒険者で溢れていた。

36の町へは7日で金貨1枚だった。

着いてまず冒険者ギルドへ行った。

宿を紹介して貰って、個室を2つ取りたかったけど、グラムが何をするか怖いから2人部屋を取った。

困ったのは食事。

全然知らない物が出るから、グラムは慎重だった。

『これが人間の食事か?』

『これだけじゃなく、色々ある』

テントや馬車では食べたのに何故?

『熱い』

『龍人の食事は冷たいの?』

『説明出来ない』

『違うのは確かね』

食事の後、部屋で装備を出した。

私がボスに挑む時に付ける地味な氷のダンジョンボスの装備は出せなかったけど、48の町のダンジョンの装備は出せた。

『何故ルアンが俺の装備を持ってる。おい!…違う、傷もなくて真新しい』

最初は念話で怒鳴ったグラムも、傷の無い装備に自分のとは違うと分かったようだ。

『これは48の町のダンジョンドロップ』

『ダンジョンのドロップ?』

『そう、まだかなり先で今の私ではまだ潜れない』

『今の私?どう言う意味だ』

しまったと思った。

無意識に言ってしまった。

『力がマックスになると1回だけ少し強くなって最初から人生をやり直せるの』

上手く説明できなくて変な感じになった。

『俺もか?』

『それは私には分からない』

『強くなって、殺したい奴が居る』

聞かない振りしてた。

グラムの憎しみが溢れすぎて知るのが怖かった。

グラムは復讐のために、あの惨めな姿になっても生きることを諦めなかったんだろう。

『あいつら皆殺しにしてやりたい』

ダメだグラムの憎しみに捕まった。

『話せるなら聞く』

『俺の村には古くから言い伝えがあって。年に1度村で1番強い物が神殿で竜の神に神化を問えた』

『神化?』

『龍の後継者に相応しいかを問う儀式だ』

『竜が龍を選ぶの?』

対等だけに竜に選ばれないと村の長にはなれない。

3年前と2年前はグラムが選ばれた。

去年、村の幼馴染み5人に酒宴で酒に薬を混ぜられて体が痺れて動けないうちに装備を剥がされて燃やされ、奴隷商人に売られたとグラムは言った。

『去年は絶対奴が選ばれた』

『奴って幼馴染みの1人?』

『そうだ。毎年俺と争っていた』

『だからって奴隷商人になんて無茶だわ。何かそうまでして神化を受けたい理由でも有るの?』

『今の長の娘が次の長の妻になる』

あぁだから。

妙に納得してしまった。

それなら必死になるよね。

『だからって相手を殺したいと思うまで憎むの?』

『龍の誇りを汚された。万死に値する』

誇りとか言われたら、止める気持ちも無くなった。

アホらしい。

誇りのために死ぬとか、ばかだと思う。

誇りとか、言い換えればプライドでしょ。


翌日、36の町への馬車に乗った。

乗客は16人荷台は2人だった。

やはり36の町へ行く冒険者は私しか居なかった。

御者と私で火の番をしようと思ったら、グラムが見張りくらいは出来ると馬車から出てきた。

魔物のテリトリーを抜けたのか、静かな旅だった。

36の町に着いて1番に魔法の袋を探した。

良心的で安い品を地図を見ながら鞄屋を回った。

私と同じ大きい方の袋を大金貨160枚で買った。

その中に大金貨200枚と食糧を入れて渡した。

『37の町はハルツだからね。気を付けてね』

『ルアンの親切は忘れない。俺も冒険者になる』

『長になるんでしょ』

『長にはなりたいが…』

グラムが言葉を濁した。

『ルアンはどうするんだ?』

『私は35の町のダンジョンに行く。連絡が取れない友人が居るはずだから』

グラムがはっとした。

『俺のために36の町に着たのか?会ったばかりの俺のために万能薬まで…』

『多分…、グラムに会ったのは嫌いな神の采配だから、グラムは気にすること無い』

『神の采配?』

『そう、グラムという名の誰かを助けろって』

『次は俺がルアンを助ける。困ったら俺を呼べ。俺が必ず助けに行く』

『ありがとう』


擬装を解いて、37の町へ行く馬車にグラムを乗せてから35の町へ転移した。

冒険者ギルドに行ってダンジョンの情報が無いか聞いたら、10階層までの地図をくれた。

「兎に角魔物の炎に気を付けてね」

『はい』

宿をまず10日分先払いして、転移で戻る部屋を確保してから下見に行った。

ガウなら入って直ぐ分かると思ったのに、何の反応もなくて予想外だった。

どうしよう。

まず20階層まで行くしかない。

夜まで潜って3階層まで辿り着いた。

前より大きくなってるようで、地図が宛になら無い。

探りながらだから何日も掛かりそうだった。

毎日2階から3階づつ攻略して、10階層に着いたのは潜り始めて4日目だった。

ここからは複数で魔法を使ってくる。

慎重に慎重に進んだ。

12階層からは誰も居ないのと攻撃の威力が増したので、装備のランクを上げた。

氷の全体魔法がなきゃとっくに炭になってる。

それくらい数も火力も強かった。

18階層からは更にびしびし魔法が飛んできた。

悪意に満ちていてまるで殺しにくるような、一方的な敵意を嫌でも感じた。

19階層になって、やっとガウの気配を感じた。

20階層。

ガウの気配は左からする。

ボスは右。

このちぐはぐさは何?

ガウの気配を後回しにボスに挑む。

私の勘なら、ボスの後ろにガウは居る。


装備を最強にしてボスに挑む。

ボスは火の玉。

普通なら氷が弱点だけど、慣れない闇を使った。

空気が悪意に満ちていて、光で浄化する事も考えたけど、危機感が強くなって闇にした。

火の玉は耳がおかしくなる爆発音を残して消えた。

自分で闇にしたのに、当たって自分が1番驚いた。

これでガウに会える。

床には炎のメダル。

これがはまる部屋を探せって事なんだろう。

気配を辿って奥へ奥へと進んだ。

1つ1つ部屋を調べる。

念話でガウを呼んでみた。

それでもガウは答えなかった。

何があった。

この怒りの空気はガウの怒りだ。

際奥の部屋にメダルをはめる凹みがあった。

これで会えなきゃ…。

風でメダルをはめたら天井が落ちてきた。

それほどまでガウが怒る理由が知りたい。

『ガウ、答えて。カレンはどこ。カレンに会いたい』

届く範囲全部にvoiceで声を流した。

『ガウ。答えて!』

まるで私の声に答えるように奥の壁が壊れた。

崩れた壁の先は暗闇。

私はガウに試されてる。

一瞬だけ迷った。

迷って光の結界を張るのを止めた。

崩れた壁を乗り越え闇の中に足を踏み入れる。

暗闇の中は、最初に見た白い世界に似ていた。

白を黒に変えたらこうなる感じ。

耳を澄ましても何も聞こえない。

ガウの鳴き声も唸り声も何も聞こえない。

こんな時話せる声があれば…、カレンに届くかもしれないジレンマが襲ってきた。

左肩を掠めて炎の矢が飛んできた。

右の胴を掠めてもう1本。

どれだけ私を試せばガウの気がすむのか、右ほほを掠めてもう1本。

ほほが熱い、髪の燃えた臭いがする。

目を閉じた。

4本目はもうわざと外す事はしないだろう。

もしかしたら、カレンは生きてないかもしれない。

そんな不吉な予感が胸を締め付けた。

ガウの気配を感じたとき、炎の矢が右肩を貫通した。

体が跳ねた。

何故か熱いけど痛くない。

あぁ、ガウは私を拒絶してるんだ。

それなら死んでも良いと思った。

力が抜けてペタンと闇にしゃがんだ。

ガラムの顔が頭の中をぐるぐる回った。

虚しかった。

そんな大層な奴じゃないけど、ゲームの世界に飛ばされても頑張って生きてきた。

ガラムの名前で堪えてた気持ちが溢れてしまった。

ガウが殺してくれたら、死んだ後1人でもいいから、もうこの世界に居たくない。




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