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ゲームの世界に転生?  作者: まほろば
ハルナツさんの村で
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リスタート



10の町へ戻ってきて半年が過ぎた。

時間が止まっていると聞いてから周りを見ると、本当に誰も変わらないように見えた。

帰って直ぐはトーヤからしつこく勧誘された。

残りのパーティーからも誘われた。

だけど気力が無くて、ただボーッと宿で1日息をしてるだけで過ごしてたら半年過ぎていた。

ギルドマスターのクラークさんは、時間が止まってるのを知っていた。

知っててチェスター国に居るって言っていた。

「好きなだけボーッとしてろ」

そう言ってから、言った。

「呼ばれるまでな」

その時は聞くのもめんどくさいから知らんふりした。

そんなある日、冒険者ギルドから人が来た。

「20の町のギルドから手紙が着てます」

『手紙?』

「ハルとナツさんからです」

初めは誰か分からなくて受け取り拒否仕掛けて、あっと思って慌てて取りに行った。

『私宛の手紙を』

冒険者ギルドのカウンターにギルドカードを出した。

受付のおじさんが手紙を取りに行ってる間、ギルドマスターのクラークさんと話した。

「魔物の動きが活発になっているからな。行くならなまった体を鍛え直してから行けよ」

返事を返さず手紙を受け取った。

開封しないで宿の部屋へ持って帰る。

表の名前は私。

裏はハルナツさんの連名だった。

急いで封を切った。

『ルアン


元気にしてますか?

今日はお願いがあって手紙を書いてます。

最近私たちが住む村の周りに魔物が出て困ってるの。

冒険者ギルドの方も来てくれたけれど数が多くてお手上げだと帰ってしまったのよ。

どうかいらしてください


ハルとナツ』

手紙を読んで旅の支度をしていたらギルドマスターのクラークさんから念話が飛んできた。

『行くのか?』

『行きます』

『なまった体を鍛えてから行け』

ついクスッと笑った。

『りきんではなさそうだな』

『はい』

『今すぐ出るのか?』

『はい。宿を引き払ったら直ぐに』

『気を付けていけ。困ったら知らせて寄越せ』

『はい』

スキルのvoiceの別な使い方を教えてくれたのもクラークさんだった。

私がチェスターを出てから、何度か念話が繋がらないか試してくれてたらしい。

その時はまだ私のレベルが足りなくてvoiceが無かったからだと思う。

クラークさんから念話を教えて貰って、直ぐカレンとガウに飛ばしてみたけど繋がらなかった。

クラークさんも私が帰ってきてから繋がったと言ってたから、何か繋がる条件が有るのかもしれない。

仕度を終えて、宿を精算してから19の町へ飛んだ。


19の町の宿の夫妻にハルナツさんの村までの道を聞いたら、危険だからと止められた。

ギルドカードを見せて、もう1度聞いた。

「いくらAでも話せないあなたを行かせられないわ」

『何故?』

「話せないと他の冒険者と連携が取れないでしょ?」

『私はソロです』

「えっ!」

覚悟はしてたけど腹立たしい。

『独りで行きますから場所を教えて下さい』

「本気なの?」

『はい』

心配そうに地図を書いてくれた夫妻に頭を下げて、ハルナツさんの村へと急いだ。

目的の村は19の町から荷馬車で1時間徒歩で1日。

魔物を倒しながらの強行軍は運動不足の体にかなり堪えたけど、お陰で体が動くようになった。

最初は魔法に頼ってたけど、村が見えてきた頃は剣でも倒せるようになっててうっすら汗もかいてた。

やっと着いたのに村の門は閉まってて、何度叩いても開かなかった。

夜で暗いし魔物も近くにうようよしてるから朝まで待つとかの選択肢は無かった。

仕方無いよね。

風魔法の力で村を囲む板壁をよじ登った。

「誰だっ!」

村の中に飛び降りた途端に怒鳴られた。

村の中心で燃えてる焚き火の明かりで、ゴツいおじさんが拳を振り上げてこっちへ走ってくるのが見えた。

おじさんを避けながらハルナツさんの気配を探した。

「ちょこまか逃げやがって」

好きで逃げてる訳じゃない。

下手に応戦したら怪我させてしまうから逃げてる。

苛々してきたところにハルナツさんが来た。

「待って下さいな。その子は私たちがお願いして着て貰った冒険者なのよ」

「ルアン。良く来てくれたわね。ありがとう」

「ばあ様たちの知り合いだと?子供じゃねぇか!」

私を指して怒鳴るおじさんの手をぺしゃりとハルさんかナツさんが叩いた。

「子供じゃありませんよ。ルアンはAランク冒険者なんですよ」

「ご免なさいね。閉じ込められてて気が立ってるの」

「食事もままならないからなおなのよ」

それならと、ハルナツさんの前に数頭の魔物を魔法の袋から取り出して置いた。

『お久し振りです』

メモを見せた。

「良く来てくれたわね」

「疲れたでしょう」

『解体して皆さんで食べてください。討伐は明日から始めますので安心してください』

魔物を指した。

「ありがとう」

「ありがとう」

「本当にAランクならギルドカードを見せてみろ!」

胸ポケットからギルドカードを出して見せた。

「寄越せ!!」

カウンターみたいに飛んでくる手を避けて、数歩後ろに下がって身構えた。

「やめてください!」

おじさんがビクンと動かなくなった。

ギギギ、と首だけが声の方を向いた。

そこには私より少し若い感じの少女がいた。

「す、すまねぇ」

「だからお母さんに嫌われるのよ」

え?えっ!

まさか親子?!

「ルアンさん初めまして。出来れば後ほど母と会っていただけますか?母はチェスター国の人間です」

父親?を無視して話し掛けてきた少女の言葉に一瞬だけ驚いたけど、私も会ってみたかった。

『喜んで、今からでも御会いしたいです』

「行ってらっしゃいな」

「そうよ、行ってらっしゃい」

横でメモを読んでたハルナツさんが言った。

少女の案内でその場を離れた。

「すいません。父は母を連れて行かれるかもしれないって不安から狂暴になってるんです」

ハルナツさんがチェスター国の私を呼んだと村人に言ってから、ピリピリして手が付けられないらしい。

その気持ちは何と無く分かった。

月に帰るかぐや姫を、行かせたくなくて邪魔するのと同じ心理だと思った。


少女が案内した家には、床についている40歳くらいのおばさんが待っていた。

おばさんの仕草や雰囲気が、クラークさんに良く似ていて知らず足が止まった。

「初めまして」

『初めまして』

「誰かに似てますか?」

可笑しそうにくすくす笑いながら、おばさんはクララと名乗った。

『10の町のギルドマスターのクラークさんにそっくりなので驚いてました』

「…え」

信じられない、と呟いてじっと私を見るクララさん。

『クラークさん!兄弟います?クララさんとか』

『クララ?』

『はい』

「あぁ、あなたは遠くと話せるのね」

羨ましそうな声に、何故か冷や汗がでた。

『俺の婆さんの名前だ』

『お婆さん?クラークさんと同じくらいですよ?』

『チェスター国の人間だ。年齢は関係ない』

そう言われても信じられなくて頭が拒否してる。

手汗をズボンで拭いた。

「クラーク、会いたいわ。会いに帰れれば…」

あの子がギルドマスターになってるなんて…。

クララさんは声を堪えて泣き始めた。

帰りたい?帰れないの?

クララさんにどう接すれば良いのか分からなくて途方にくれていたら、少女がクララさんの背中をさすりながら言った。

「大丈夫お母さん。体が治ったら里帰り出来るから」

「…そうよね。お願い、孫のクラークの話をして」

仕方無く、クララさんが寝付くまで2人の会話の橋渡しをさせられた。

終わった時はどっと疲れていた。

「ありがとう」

『いえ』

「チェスター国へ帰るのは母の夢なの」

『夢?』

「母は帰りたくても帰れなくて。何度か馬車に乗ったけれど結界に阻まれてしまって帰れなかったの」

諦めてこの村で結婚してそして自分が産まれた、と少女がクララさんの寝顔を見ながら言った。


クララさんの家から外に出ると、ハルナツさんが待っていて村人に紹介してくれた。

村人は捌いたばかりの肉を焼いて食べていた。

「あの数をあなた1人で倒せるのですか?」

村長の疑問も分かった。

他の冒険者が二の脚を踏んだ数にソロで私が挑むのだから、信じられないのも当然だと思った。

「たまに1頭2頭出てくるのなら村人の力を集めれば何とか倒せますが、あれほど数がいては…」

『明日は1度一掃しましょう。魔物は血の臭いに集まってくるので皆さんも忙しいと思ってください』

書きながら、埋めた数を見ながら倒すべきかも、とも考えていた。

「忙しいとは?」

『必要な部位を取った後土に埋めて貰いたいのです』

「それは何時もしてますが?」

『そちらの進行具合を見ながら倒すつもりです。埋めるのが速ければ速いだけ一掃が速く終わります』

「へぇ?」

こうして話していていても未だに半信半疑何だろう。

実際に倒す姿を見せなければ信用されないし、報酬の話も無い気がした。

「ルアン。報酬なのだけどね」

「大金貨30枚でどうかしら」

『明日、結果を見てからにしませんか』

チラッと村長を見て2人に告げた。




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