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ゲームの世界に転生?  作者: まほろば
17の町と20の町
38/95

カレンとガウ



真夜中に町外れの祠まで移動した。

そこから更に森の方向へと移動してガウを探した。

互いに辺りを警戒しながら近付く。

星明かりもない暗闇にガウの気配だけが頼りだった。

「ルアン」

カレンの声に足を止めた。

「ありがとう。助けてくれて」

カレンの声は弱かったけど口調はしっかりしていた。

「ルアンは魔法使いなんだね」

予期してたから頷いた。

ガウに護衛目的で解呪を掛けた時からこの可能性は見えていたから。

それなら遠慮しない。

カレンとガウと自分。

光の結界で守り光を灯した。

「光…属性」

『14の町で別れてからを聞いて良い?』

メモを見たカレンの顔が歪んだ。

「あの日の夜、兄の友人って騎士が宿に来て…」

カレンの兄の意思を継ぎたいと言われたらしい。

「だけど本当はガウが目的だった」

宿の食堂で話したから外に居たガウに助けを呼ぶことも出来ず、首輪を付けられた。

マントを外して、カレンは黒く焼かれた喉を見せた。

魔法の袋から上級ポーションを5本出してカレンに飲む動作を促した。

「こんな高価な…」

『作ったのは私。心配しないで』

光属性は回復を得意とすると気付いたのだろう。

カレンがやっと頷いて飲むタイミングで回復魔法も重ねてかけていった。

光を使う目にはカレンの受けたダメージが手に取るように分かるから、これでも足りないくらいだった。

幸いカレンの魔法の袋は腰に着いていたままだったので、追加のポーションをしまわせた。

『隷属の魔法を直ぐに体から消せる魔法はないの』

「ええ、体の奥に残ってる感覚が強くあるもの」

『毎日上級ポーションで体の中を洗って』

一月続ければ魔法の痕跡は消えると見えた。

上級ポーション、お金、食糧。

可能な限りカレンの魔法の袋に移した。

あの時自分がガウを登録しろと教えなければ…、彼女の今は確実に違ってた。

胸に吹き出す罪悪感に気持ちが潰されそうだった。

「ルアンのせいじゃないわ」

カレンはそう言ってくれても、自分を責める気持ちは無くなってくれなかった。

「悔しいのは兄の遺書も預かっていた書類も、全て燃やされてしまった事…」

………

「軍と冒険者ギルドが裏で手を組んでたなんて…」

唇を噛みしめるカレンに言葉が見付からない。

「27の町に、モナークの王制と戦ってる解放組織があるの」

カレンはそのメンバーになるつもりだと話した。

『ガウを利用されないよう気を付けて』

「気を付けるわ」

今回かなり人間不振になったからと歪んだ笑顔で笑ってから、カレンはガウの背中に乗った。

「ルアンにもガウの声が聞こえたら遠くにいても話せるのに。それがとても残念よ」

遠くに居ても?

念話、みたいなもの?

あっ!

青いメダルを思い出して走り出してたガウを止めた。

「ルアン?」

ガウから降りたカレンに青いメダルを見せた。

「…これって20の町の」

『何か知ってるの?』

この世界は5体のドラゴンが治めていて、20の町のダンジョンも竜が治めている。

『他のドラゴンは?』

「20の町のダンジョンには雷の竜。27の町のダンジョンには地の竜。35の町のダンジョンにはガウが仕える炎の竜」

カレンは指を数えながら話した。

「42の町のダンジョンに風の竜、全てを統べる氷の竜のダンジョンもあると言い伝えられてるわ」

………

「このメダルは?」

『旅の途中で貰ったの。20の町のダンジョンのヒントにって、くれた人は言ってた』

「ルアンが35の町のダンジョンを攻略するとき、きっと仕えるガウには分かると思う」

カレンとガウを見送って、転移で宿の部屋へ戻る。

今一番気掛かりなのは明日のこと。

あの様子だとゴブリンキングの素材は軍か冒険者ギルドの買い取りになるだろう。

多分踏み倒される。

予測出来て腹が立った。

連れてきたのだから20の町へ連れて帰ると思うけど、この機会だから本線を馬車で行こうか。

前に本線の警護パーティーには魔法使い率が高いと聞いたことがあるから、もしかしたら魔法を使ってる処を見られるかもしれない。

そう考えてたら寝ていた。


翌朝、冒険者ギルドへ行くと受付はおじさんだった。

『討伐の報酬を』

ギルドガードを添えてテーブルに置いた。

おじさんはガードとメモを持って奥に移動した。

おじさんが連れてきたのは昨日の兵士で、私が喋れないと知ったら態度が変わった。

「喋れない奴に渡す報酬はない」

まさかこの展開は予想してなかった。

報酬は兵士の懐に入るのだろう。

悔しさに唇を噛んでギルドガードをおじさんから受け取ろうと手を伸ばした。

「払った方が良いですよ」

後から来たお姉さんが受付のおじさんを押し退けると、にこやかに笑いながらそう言った。

「あ?」

「このギルドガードにはチェスターのギルドマスターの権限が着いてます」

怪訝そうな兵士にお姉さんがガードの隅にある印を指して見せた。

「このガードの持ち主に不正な扱いがあった場合。チェスターの冒険者ギルドが出てきます」

「え、え?お前チェスターのギルド知ってるのか!」

『ギルドマスターのクラークさんは知ってます』

平静を装いながら書いてたけど内心ドキドキだった。

「じょ、冗談だよ。ちゃんと渡すからな」

上擦った声で書類をおじさんに投げ渡すと、兵士は奥に逃げていった。

『ありがとうございます』

「当然の報酬です」

おじさんを奥に下がらせてから、お姉さんは簡単に報酬の説明をし始めた。

報酬は大金貨2200枚。

やっぱり素材は買い上げだった。

大金貨1000枚は硬貨で貰った。

延べ板か宝石にしますかと聞かれたけど、使い勝手が悪いからと大金貨でお願いした。

昨夜カレンに大金貨500枚渡した後だったから、この収入は嬉しかった。

「功績からギルドランクがAに上がります」

えっ!

カードの書き換えが終わるまで待つように言われ、後の椅子に落ち着いた。

ほうっ、と息を吐いて目を閉じた。

クラークさんのお陰で報酬も受け取れたしランクも上がった。

もしチェスターに戻る機会があったら、キチンとクラークさんにお礼を言おう。

それから直ぐにギルドカードは戻ってきて、その足で乗り合い馬車の乗り場へ急いだ。

乗り場へ着いたら本線も支線も出た後だった。

諦めて買い出しに回る。

何と無く、また宿に戻るのはちょっと嫌だった。

あ、明日の朝まで20の町の宿に泊まってみよう。

脇道に入って、20の町の冒険者ギルドを頭の中に浮かべてスキルの転移をタップした。

出たところは冒険者ギルドの隅だった。

幸い死角になっているらしい。

冒険者ギルドから宿を紹介して貰うのは今日の今日で危ないから、鍛冶屋か屋台を探すことにした。

この町にも花の鍛冶屋の看板があったので、14の町の残りの雑魚装備や他を目立たないくらいちょこちょこと売った。

屋台の肉は美味しかった。

町の数字が上がる度に味も上がる感じがした。

20の町で以外なのはお酒が売られてる事だった。

今までの町で売られていためちゃめちゃ度数の低い物じゃなくて、シャンパンくらいのお酒が売られてるから肉の煮込みに使えるそうだ。

だからか煮込み料理が看板にも目立った。

屋台のおばさんに宿を紹介して貰って昼から寛ぐ。

お風呂は無いけどさっぱりした宿だった。

「17の町の氾濫も収まったってな」

「ああ、ボスはゴブリンキングらしいぞ」

もう噂が伝わってる?

昨日の今日でどこから流れたんだろう。

昼食の後、ダンジョンまで足を伸ばしてみた。

??

ダンジョンの前には兵士が立っていた。

見ていたら灰色の服の魔法使いたちが出てきた。

先頭に見覚えのある老人を見付けて、顔を隠した。

まだ17の町に居ると思ってたから驚きだった。

この集団はいつまで20の町に居るんだろう。

魔物だけじゃなく魔法使いも警戒しながら潜るのかと思うとがっかりだった。

この20の町のダンジョンは12階層で、ボスは今着てる装備をランダムで落とした。

今日は初日だから様子を見ながら1階から潜った。

手応えは14の町のダンジョンとあまり変わらない。

少しレベルが上がった感じ。

3階層、4階層と降りてみて、少し敵のレベルが上がって強くなる感じだった。

………

不思議だった。

ダンジョンの強さなら町の数が高いほど強いはずなのに、20の町のダンジョンより10の町のダンジョンの方が格段に難しい。

もしかしたら、チェスターが一番難しい?

答えが見えないうちに6階層まで辿り着いた。

「…たすけ…て」

6階に足を踏み入れた途端、切れ切れな声がした。

ゾクッとした。

声の主から自分はまだ見えてないはず。

足が止まったのは切れ切れな声なのに刺さるほどの殺意が自分に向かってきてたから。

その角を曲がったら、確実に斬りかかられる。

そんな確信があった。

恐らく、ダンジョン内を縄張りにしてる強盗。

ステータスの地図から確かめてみると、4人のパーティーらしき影があった。

あっちもこっちもで、20の町のダンジョンは攻略に手こずりそうだった。

がっかりして宿に戻り、翌朝早く17の町へ戻った。




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