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ゲームの世界に転生?  作者: まほろば
17の町と20の町
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氾濫の後



20の町の冒険者ギルドはキリキリと聞こえるくらいピリピリした場所だった。

ギルドの職員に囲まれて会議室みたいな部屋に連れ込まれギルドカードの提示を強要された。

周りは冒険者ギルドの職員だけじゃなく軍の兵士もたくさん取り囲んでいて異様だった。

残念だけど馬車で聞いてた話の通りに見えたし、話と違って上層部だけじゃなくて下もそう見えた。

ごちゃごちゃ考えていたら威圧的な声が聞こえた。

「武器は?」

剣を出したら更に促された。

「他にも有るだろ」

え?

何故知ってる?

仕方無いから嫌々腕輪も出した。

話が違うと横を見ると、リーダーが小さく舌打ちして前を向いていた。

「あれは形だけの脅しだ。俺も引っ掛かるバカを見たのは初めてだ」

後から、そう呆れられた。

確認が終わると、私たちは冒険者ギルドの地下3階まで1列で連れていかれた。

辿り着いた大きな扉の奥には、直径3メートル程の魔方陣が床に掘られていた。

まさか…、この世界の人も転移が使えるの?

目の前の光景に声が出なかった。

「これからお前たちを17の町へ送る」

あぁ、あるんだ…。

魔方陣の中に私を含めて15人の冒険者と大量の書類を手にした兵士が立った。

次の瞬間、目の前に知らない軍人が立っていた。

転移より揺れは強かったけど、17の町へ着いたのは説明されなくても分かった。

「こいつらを連れていけ」

階段を上がると17の町の冒険者ギルドで、職員が忙しく働いていた。

「状況を説明する」

兵士の1人が床の地図を指して話を始めた。

魔物が襲ってきてるのは祠とは反対側の門からで、この2日の激戦で残り500まで減らしたらしい。

消耗戦になっていて獣人奴隷の防波堤も限界らしい。

嘘よね…。

…ホントに獣人を使った?

嘘…。

現実として受け止められなかった。

「あの女をもっと正確に操れてれば1時間で制圧出来たんだ!」

え??

「獣人と人間じゃ隷属の魔法も勝手が違うんだ」

「あの化け物に直接隷属の魔法が掛けられれば、あんな女魔物の餌にしてやるのに」

「無理だな、あの女がこっちの手にあるからあの化け物も踏み留まっているんだぞ」

背中がぞわぞわした。

…女?化け物?

彼らは誰の話をしてる?

まさか…ガウ?

がくがくと体が震えた。

…まさかカレンに隷属の魔法を掛けた?

…カレンを操ってガウを思い通りにしようと?

脳裏に浮かんだのは恐ろしすぎる可能性だった。

自分がどうすれば良いのかが全く分からなかった。

もし正解なら…。

…ならどおしたら。

考えても、答えは1つしかなかった。

隷属の魔法に繋がっているのが本当にカレンなら。

カレンに解呪を掛ける事。

目で見えてさえいれば、遠隔で解呪は掛けられる。

何よりも、今は真実を見付けるのが先だと思った。

あとは、聖獣ガウの本能に任せるしかない。


ステータスの地図からガウを探した。

強い魔力は探知できてもそれは酷く攻撃的でガウとは違う気がした。

ならばとカレンの存在を探したけどそれも見付けられなかった。

変だった。

まるでカレンの姿を魔法で隠しているような空気の抵抗が跳ね返ってきた。

ガウが隠してる?

現状迂闊には動けなかった。

「魔物は残り500」

「お前たちは町の門を守れ」

「獣人の奴隷はどうした」

「壊滅に近い」

気付いたら天井を見てた。

許される行為じゃない。

奴隷にされて死んだ獣人を思えば息が苦しかった。

「その女奴隷をどう使うんだ?」

!!

リーダーの疑問に絶句した。

「調教が使える」

「従える魔獣を魔物と戦わせる」

「強いのか?」

「強い」

「まず状況を確認したい」

リーダーの一言でやっとその場が動き始めた。

兵士の後から門を目指す。

壁の無い町に何故魔物は入らない?

壁の代わりに結界?

疑問の答えは後から分かった。

魔物の嫌う臭いを町の地中深くに埋めてあるんだ。

違う。

その臭いの上に人間が町を作った。

門に近くなると壊されている家も見えてきた。

町の中まで入ってくる魔物もいて、目の前でも冒険者と魔物の戦闘が繰り広げられていた。

視界の中にガウは居ない。

ガウが結界を張っているのか地図から探っても位地の特定が付けられなかった。

…やるしかない。

腕輪を左にはめ、周りからは腕輪の威力に見えるよう派手に炎の魔法を使った。

火の玉が熊の魔物を火だるまにして燃えた。

気付いて。

私はここに居る。

もう1発。

3発目で目標を変えた。

手近の強いものから倒す。

ポーーン。

経験値の音の後、目の前に炎の竜巻が起きた。

ガウ!

憎しみに燃えるガウが門の上に居た。

「出てきたぞ!!」

「女を出せ!!」

そこから先は一瞬だった。

深くマントを被らされた人間が門の小屋から引き出されて、軍の奴らが叫ぶ。

その後ろには灰色の服を着たかなり金に近い髪の魔法使いが3人杖を持っていた。

狙いはガウだ!!

!!

カレンの気配がぼやけてたのは魔法使いの結界にカレンが閉じ込めてたからだったんだ!!

その瞬間、ガウと私が動いた。

私の解呪と強奪のガウ。

炎の目眩ましが消えたら、そこにはガウにまたがる黒いマントがあった。

ガウが高く低く強く鳴く。

ここで捕まったら笑えない。

重ねて解呪と回復をガウとマントに掛けた。

駆け抜けるガウを目だけで見送り、腕輪を使った。


ボスのゴブリンキングを倒すまで、それから1時間もかからなかった。

魔法を使わず腕輪の威力も試してみたけど、軽い火傷みたいなダメージしか与えられない。

思った以上に威力が低くて、魔物を倒してレベルが上がる度腕輪はひび割れていって、ボスが沈んでから見ると黒く変色していた。

「こっちへ」

冒険者の勝利の雄叫びが上がるなか、冒険者ギルドの職員が、後ろから私を強引に引っ張った。

無理矢理連れていかれたのは門の後の軍のテントで、贅沢な中にはふんぞり返ったじじぃがいた。

軍の偉い人らしい。

「よくやった」

頷いた。

「お前には報酬をやろう」

頭を下げて下がろうとした後の兵士に邪魔された。

「その腕輪は軍で調べるから置いて帰れ」

やはり。

逆らわず腕輪を外して兵士に渡した。

腕輪は使いすぎで壊れる寸前だから没収されても何ともなかった。

「これが」

テントを出る前に振り返ると、じじぃが腕輪に魔力を流しているところだった。

外に出て、意識して腕輪に魔力を飛ばしてみる。

壊れてしまえばいいと思ったけど今壊れたら自分が疑われるかもしれないって気付いて急いで止めた。

明日再チャレンジしよう。

「報酬は明日受け取れるようにしておく」

兵士に背中を押されて、勝利に酔う波の中に放り投げられた。

泳ぐように人波から抜けて路地に紛れてから、地図からガウの気配を探した。

今ならガウが見付かる確信があった。

居た。

町から離れた森の中に、ガウとカレンの気配がした。

感じる魔力は安定しているから怪我も無いはずだ。

ホッとしたら、無意識に胸に手を置いていた。

今は、夜まで待とう。


前回泊まった宿は幸い空いていた。

ガウに自分の魔力を送り場所を分からせた。

多分続きは夜。

今はここまでと決めた。

夜に紛れてカレンと話せたら、あれからの話が聞けるだろうか。

疲れた体をベッドに寝せてステータスを開いた。

短時間の戦闘でレベルは51まで上がっていた。

ゴブリンキングで立て続けに鳴ったのが耳に蘇った。

やっと51…。

20の町のダンジョンでいくつまで上がるだろう。

60…か、65までは上げたかった。

夕食の食堂でリーダーに会った。

「大活躍だったな」

リーダーにポンポンと肩を叩かれ頷いた。

「腕輪は没収されたらしいな」

頷いた。

『あの魔方陣は?』

頷きながら急いでメモを書いた。

「過去の産物だ」

この世界の何ヵ所かに同じ魔方陣が作られていて、その上に冒険者ギルドがあるらしい。

魔方陣の原動力は魔力。

本だと魔石とかになると思うけど、この世界では地中の魔力を使って動かす仕組みらしい。

「1回動かすのにかなりな魔力を食う」

話しているうちに他のメンバーも集まってきた。

「あるとは聞いていたが、俺らも乗ったのは初めてだ」

「気持ちの良いもんじゃなかったが、緊急だ」

頷いていると思わぬ話題が飛び出してきた。

「軍が使う魔方陣はもっと乗りやすいらしいぞ」

軍?

軍も転移を使う?

首を傾げていたら、モナークは王都と主要都市を魔方陣で繋いでるんだとリーダーが短く教えてくれた。

古い昔から王都の場所は秘密とされていて国民も知らさせていないと聞いて更に驚いた。

…………

そんな設定あるの?

きっと無茶なゲーム設定からきてる気がした。

リーダーの話だと、王都は結界に護らた場所にあって王族と貴族しか住んでいないらしい。

政治は?

宰相とかも貴族だから全て王都で可能とか言われたら笑いしか出てこなかった。

もしかしたら…ゲームのパージョンアップで追加で別のサービスを増やそうとした?

リーダーたちの驚きの話は私を慎重にさせてくれた。

高い山の天辺とか深い森の中とかに王都を結界で隠してる、それがモナークって設定にしたかったんだ。

ならハルツは?

『ハルツの王都も?』

「ハルツも王都の場所は秘密にされている」

「定説は結界に護られ世界樹、って言い伝えだ」

え?




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