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ゲームの世界に転生?  作者: まほろば
18の町と19の町
35/95

おじいさんとパイプとお菓子



18の町も酪農の町だった。

20件ほどの家と牛小屋?が点在した町だった。

町に1件の宿屋も酪農と兼用らしい。

夕食まで何度もイベントを見たけど光らなかった。

食堂で夕食を食べた時確かめたけど、泊まり客におじいさんは居なかった。

どうしたらイベントが始まるんだろう?

どうしよう。

明日、少し町を歩いてみよう。

翌朝、朝食の時に頭痛がすると言ってもう1泊する事にした。

宿の主人に今日の分の宿代を払っていたら、カウンターにポツンと真新しいパイプが置かれていた。

思い付いてステータスを開くと、やっぱりイベントが始まっていた。

「ああ、それかい。気が付いたらあったんだよ」

私がそのパイプをじっと見てたからか、宿の主人がそう教えてくれた。

「今朝立った客の忘れ物かもしれないな」

え?そんな…。

それじゃあイベントがクリア出来ない。

まさかここで持ち主が取りに来るまで待つイベントとかあり得なかった。

それに、客におじいさんは居なかった。

兎に角町の中を見て回ろう。

最初はざっと町を回った。

次は牛小屋も見て回った。

それでもダメで、今度は放牧する草原まで足を伸ばしてみたけどおじいさんは居なかった。

多分だけど、おじいさんとあのパイプがイベントクリアの鍵のはず。

もう一度町全体を回ろう。

町の外れの大きな木の下に、しょんぼりした女の子がしゃがんでいた。

「…違った」

女の子は私の足音に顔を上げてからそう呟いた。

自分の態度が失礼だったって気付いたのか、女の子は立ち上がって謝ってきた。

「ご免なさい。おじいさんが帰って来たと思ったの」

おじいさん。

「朝の配達に行って、まだ戻って来ないの」

半べその女の子にお菓子を上げて頭を撫でて上げた。

きっとこの子のおじいさんがイベントのおじいさんに違いなかった。

女の子と別れて、急いで町を探し回った。

今度はすんなり馬車の乗り場に居るおじいさんを見付けることが出来た。

あの女の子が見付けるヒントになってたんだ。

『すいません。忘れ物を探してませんか?』

「何故それを?」

おじいさんは私のメモを読むと目を細めました。

『パイプ』

内心焦りながら急いで書いて見せた。

「どこで見た!」

『宿の食堂』

「あ?」

おじいさんは思い当たったのか私をそこに放置して宿へ走り出していました。

遅れて宿へ戻ると、おじいさんがあのパイプを手にしてにこやかに宿の主人と話していました。

「じいさんのパイプだったのか。前のはどうした?」

「これは孫がくれたんだ」

「それを家に忘れたのか」

「何処に忘れたか思い出せなくてな、家に帰れなくて困ってたんだよ」

2人の会話で忘れた流れがよく分かった。

「おおそうだった」

おじいさんは私の前に来ると、胸ポケットから青いメダルを見せた。

「礼にやろう。昔々の何処かの国の硬貨らしい」

手のひらに乗った青いメダルを握り締めたら、イベントクリアが点滅した。

やった!


イベントも終わったし、その日はのんびり過ごすつもりだったけど…、何故か町中の子供に囲まれて過ごすことになってしまった。

お目当てはおかし。

あの女の子が、私からお菓子を貰ったと友達に話したからお菓子欲しさにみんな集まってきてしまった。

上は11才から下は2才まで、16人に囲まれて3時のおやつタイム。

子供じゃなくても女性は甘いもの大好きだから、子供たちのお母さんたちも当然参加した。

話を聞いてて、気付いた。

私は部外者だけど、今はお菓子があるからこうして一緒にお茶してる。

お菓子が無かったら…、それが現実。

上手く隠してるつもりで隠しきれてない私に向ける視線の強さに、改めて気付かされる。

この世界で、話せない私は絶対相手に弱味を見せちゃいけないって事。

お菓子がなくなったらみんなさっさと帰っていった。

夕飯は普通に食べた。

おやつのお菓子は少ししか食べなかったから、夕飯はしっかり食べれた。

今日はお客が多い?

食堂が満員で、数えるとお客は22人も居た。

お客の話題は、魔物の氾濫の話が多かった。

「知ってるか?15の町の前に16の町で氾濫の予兆があったらしいな」

「それなら次は14の町か?」

「いや、あちこちであるって話だ」

「それもモナークだけっていうじゃないか」

「ハルツの話が聞こえてこないだけだろ」

…チェスターは?

ちょっと不安になった。

「まさかと思うが、獣人が魔物を操ってるんじゃ」

「俺もそう思った」

「こうなったら速いとこ戦争に勝って、獣人全部を奴隷にするべきだ!」

…え?

自分たちが獣人を操って奴隷にしてるって事をまさか忘れてしまってるの?

そう思ってもそれを書く勇気は無かった。


翌朝、19の町への乗り合い馬車に乗った。

19の町へは銀貨7枚馬車で5日だった。

乗客は6人で荷台は居なかった。

馬車に揺られながら青いメダルの事を考えてた。

この世界の硬貨は国が出来ても3国共通のはずだから、おじいさんが言ってた過去の何処かの国の硬貨とか絶対考えられなかった。

それに、メダルに彫られているのはドラゴンだった。

最初氷のドラゴンかもと思ったけど、もっとごついドラゴンにしか見えなかった。

まるで地のドラゴンの感じ。

ドラゴンの上に雷のような物も書かれてるから、地じゃなくて雷かもしれない。

もしかしたら…。

カレンに聞いたら何か分かりそうだけど、冒険者ギルドを通しての連絡には何か1つ抵抗があった。

今度カレンに会えるのはいつだろう。

それに…、かなり目立つガウの事も噂にならないのは何故?

まさか今も隠れてカレンの側に居るの?

不吉な予感がするけど、今はそれを確かめる術が無かった。

その日の夜営地に着いて、日が沈んでも19の町からの馬車は来なかった。

「馬車はどうしたんだ!」

「冒険者パーティーは?」

乗客の不安を消すように片手を上げた。

「たった1人、しかも女」

絶望的な口調にムッとしたけど無視して、御者と朝まで火の番をした。

狩りは大量だった。

熊や狼だけじゃなく、木の幹の魔物まで出た。

翌朝焚き火の始末をして、私は荷台に乗った。

今夜を考えて、少しでも寝るための判断だった。

荷物の隙間に身を入れて寝やすい場所を探した。

2日目の夜営は19の町からの馬車に冒険者パーティーが乗ってたから助かった。

翌日の夜も他の冒険者パーティーが乗り合わせていて私の出番は無かった。

4日目はまた私だった。

明日は19の町へ着くから、今夜一晩の辛抱だった。

焚き火の前で火の番をしていると、初日に騒いだ2人がこそこそ近付いてきた。

「あの熊の毛皮だけど、安く譲ってくれないかな」

「金貨8枚出すよ」

ノーと首を振った。

そんな安値で売れるわけ無かった。

「女が売りに行っても安く買い叩かれるだけだぞ」

「だから俺たちが買い取ってやるよ」

にやにやしてる2人に笑い返して剣に手を置いた。

まだ夕食前なのに、周りは狼に囲まれていた。

2人も狼の唸り声に驚いて飛び上がったけど、それなりに場数は踏んでるのか火の着いた薪を持って振り回し始めた。

そこから朝までめんどくさかった。

手助けする代わりに分け前を寄越せと当然の顔で言ってくる。

19の町からの馬車が女性ばかりだったのもあって、2人の横暴さは目に余った。

2人を止めないのなら火の番はしない、そう御者にメモを渡したら渋々止めてくれた。

魔物を迎え撃ちながら、襲ってくる数が馬鹿みたいに増えてる気がした。

予兆とは呼べなくても活動は活発になってるんだろうって思った。




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