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ゲームの世界に転生?  作者: まほろば
17の町
34/95

魔法使い



翌朝、雨の音で目が覚めた。

朝食の時に雨が止むまで泊まると宿の主人に伝えた。

「泊まってくれるのはありがたいが平気なのか?」

歯切れの悪い宿の主人に3日分の宿代を先に渡した。

歩きの時の旅と違って、馬車の旅で雨の為の連泊とか珍しかったからかなり不審がられた感じだった。

私のように宿に止まったのは風邪で熱を出している1組の夫婦だけで、他の客は雨の中旅立っていった。

次からは私も仮病を使おうと、後から思った。

部屋へ戻ってから18の町のクエストを確認する。

見ると18の町もクエストじゃなくイベントだった。

イベントは、おじいさんの無くし物。

報酬は20の町のダンジョンの裏ボスの情報。

え、え?

驚きでもう一度見直した。

こんなイベント知らない。

おじいさんて?

何処のおじいさん?

それにまた裏ボス?

…ホントにゲームじゃなくなってきてるのかも。

再度見直すと、その下の19の町のクエストの宿屋で病人を初級ポーションで助ける、も読めた。

初級ポーションか…。

つい昨夜の祠が思い出された。

あのまま立ち去る事も出来ず、ついあれこれ食糧を出している自分が愚かだった。

子供たちは飛び付くようにがつがつ食べ始めて、食べながらも目線は装備の中に隠してる魔法の袋に釘付けだった。

分かってたけど、やはりため息が出た。

少年はクール、少女はシーラと名乗った。

2人が兄弟だと聞いてホッとする自分がいた。

忘れたつもりだったけど、やっぱりダンとカラが心の奥に引っ掛かってるんだって今更気が付いた。

聞くと2人の親は病気で亡くなったらしい。

借りていた家を追い出されてからは祠に住むようになったそうだ。

他の子供たちも親を亡くして帰る場所がないから一緒にいると言った。

みんなで薬草摘みや荷物運び等で働いているらしい。

「羨ましいよ」

クールは冒険者になりたいと言うけど、1度も剣を持ったこともないらしい。

「剣を教えて欲しい」

真剣なクールに押されて雑魚の剣を構えさせてみた。

「わ、私も!」

シーラも緊張して前に出てきた。

真剣な2人。

スキルで何とか戦ってる私には上手く教えるとかは出来なくて、結局素振りしか教えられなかった。

冒険者ギルドへ登録するお金と雑魚から使えそうな装備を2人に渡すと、何度もお礼を言われた。

ダンとカラの二の舞に成りませんようにと祈りながら、祠を後にしたのは真夜中だった。


雨が止んだのは、それから4日目だった。

その間に雨を通さないマントや毛布に挑戦したけど、使える物は完成しなかった。

何か無いかなぁ。

とか考えながら朝食の後宿を出て、足りない物の買い出しをしながら乗り合い馬車の乗り場まで歩いた。

乗り場の前の人だかりに足が止まった。

え?

赤茶?赤茶に近い金?

牧師みたいな灰色の服に赤茶の髪の集団って…。

まさか…。

20人ほどの集団を客や町の住人が取り囲んでいた。

「魔法使いか?」

「髪からするとそうだろうな」

「始めで見るな」

ひそひそ話してる声に私も頷いた。

この世界の金髪ってこんななの?

金髪じゃないじゃん。

あ…。

集団の一番前に居る老人は、白髪に近く見えた。

え?…もしかしたら。

白っぽく見えるけど…白に金が混じってるようにも見える気がした。

この世界の金髪って…。

だから私が染めてるってあの子たちは思ったんだ。

人並の端を通って乗り場へ着いた。

聞くと18の町までは馬車3日で銀貨5枚で、20の町までは馬車2日で金貨5枚だった。

「今日は20の町までの馬車は貸し切りだ」

え?

「新人魔法使いの訓練に20の町のダンジョンへ行くんだそうだ」

話を聞きながら18の町までの料金を払った。

「20の町行きが出てからの出発だ」

指差された先には馬車が2台停まっていてもう乗客が乗っていた。

1台目は満席で2台目に辛うじて1つ空きがあった。

席に落ち着いてから20の町への馬車を然り気無く見てると、6台目の馬車が引かれてきていた。

視界にあの白髪の老人が映った。

あの老人が集団のリーダーだろうか?

彼らの魔力って…、高いのかな。

気になって、つい老人に鑑定を掛けてしまった。

!!!

レベル70

魔力を見て、思わず驚きで固まった。

次の瞬間。

!!

老人の突き刺さる視線に顔を隠した。

隠しながら遅いけど光の結界も張った。

心臓がだくだくした。

手のひらの汗が半端なかった。

スキルレベルマックスの鑑定が見付かるなんて信じたくなくて、恐々顔をあげて老人を見た。

老人は探すように辺りをキョロキョロ見回していたけど、馬車の出発を聞くと乗り込んでいった。

…良かった。

20の町への馬車が出て、直ぐにこっちも出発した。

窓枠に掴まりながら、考えるのは魔法使いの事だけ。

それほど驚きだった。

あの老人の魔力の低さが私の中の魔法使いのイメージを変えてしまっていた。

レベル70で魔力70なんて、言いようが無かった。

もしかしたら…、私とステータスの読み方が違う?

このゲームの世界に放り込まれた最初の時でも、私の魔力は70より高かった。

今は3000近いし。

それでも町を破壊できるほどの魔力じゃない。

仮定として、この世界の魔法使いが魔力70で町を破壊できるとすると、私は魔力15000はないと同じ様に破壊できないと思う。

………納得できなかった。

今は敵わないかもしれないけど、レベルがあがれば負けないと思った。

でもレベル70じゃむり……きっとレベル120は必要だと思えた。

出来れば魔法使いが魔法を使ってる所が見たかった。

私と、レベルと魔力と威力を比べられる事が出来たらこのモヤモヤは消える気がした。


昼ご飯は枯れ地で馬車の中で食べた。

森が遠いのが敗因で外は埃が風に舞っていた。

「おい」

私の前に座った商人のおじさんが、窓から首を出して御者に聞いていた。

「今日は警備のパーティーが乗ってないんだな」

「なぁに、18の町から来る馬車には乗ってますよ」

「なら夜は安心だな」

「へい」

客と御者の会話を聞いて、夜は眠れそうだと思った。

本当に夜はすんなり眠れた。

18の町から来た冒険者パーティーはベテランで、真夜中の熊との戦闘も危なげの無い強さだった。

それに比べ2日目の夜営は若い冒険者パーティーで、宵に出た狼の群にも四苦八苦していた。

客の中にも不安な雰囲気が流れて、焚き火の周りより馬車の側で丸まっている客が多かった。

そんな空気を和ませるように、乗客の1人が魔物の氾濫へ話題を向けた。

「15の町の氾濫の時、あの魔法使いたちが居たら楽勝だったよな」

「確かにな、新人でも魔物をブッ飛ばすくらい強いに違いないからな」

「魔法使いかぁ、俺も魔法が使えたらなぁ」

「死神と背中合わせだぞ」

「使えたら戦争へ行かせられるんだぜ」

脅かされて最後は声が小さくなっていった。

「ダイジョブだろ。獣人の奴隷が分厚い壁になるし」

「それがな、最近獣人も考えてよ。捕まらないように魔法を跳ね返す何かを付けてるって話だ」

え?

「てことは、獣人の奴隷が居なくなるって事かよ」

「だから今、それを解除させる魔法をモナークの王が学者に命じて探させてるそうだ」

「大変じゃないか」

………

そんな都合のいい魔法なんかあって欲しくない。

何処まで人間本意なんだろう。

ムカムカして寝たからか、起きたら頭が痛かった。




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