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ゲームの世界に転生?  作者: まほろば
14の町
30/95

裏ボスの情報



翌日、雨の中ウサギ耳のおじさんから渡された住所を頼りにダンジョンと逆の町外れにある家を訪ねた。

ドアをノックして暫く待つと、50才くらいの紳士が静かにドアを開けた。

「どなたかな?」

マントのフードをとって紳士にメモと手紙を見せた。

「君は11の町から?」

頷く。

「用件は?」

紳士は手紙を上着の内ポケットにしまうと私に訪ねてきた。

『14の町のダンジョンの情報を』

私が書いたメモを受け取らず一瞥した紳士の態度からは追い返したいのがひしひしと伝わってきて、バカみたいに訪ねたのを凄く後悔した。

「これは確かに友人の筆跡だが、君が彼と知り合いだと証明する何か証拠はあるかな」

紳士は私とウサギ耳のおじさんからのメモを何度か見比べて、聞いてきた。

袋の中からガラスのブローチを出すと紳士に渡した。

取り上げられる可能性もあったけど、それならそれで構わないと思っていた。

「どうして着けてない」

自分を疑っている紳士の言動にうんざりする。

そのまま体の向きを変えてその家を後にした。

ボスの情報は惜しいけど、嫌な思いをしてまで得ようとは思わなかった。

とったフードをかぶり直して宿に戻り、装備を替えてからダンジョンに潜った。

14の町のダンジョンは聞いていた話の通りドロップ率がかなり高った。

やはりゲームの中で潜った時とはどこか違っていて、戸惑う気持ちが強かった。

それでも、宝箱もない単調な通路を魔物を倒しながらひたすら潜った。

嬉しかったのはアイテムリストの初級欄がかなり埋まって、この先のドロップも期待できる事だ。

その中でも2階でドロップした雑魚剣が点滅してるからよく見たら、14の町のクエストクリアに必要な剣だった。

14の町のクエストは、ダンジョン2階でドロップする剣の納品とあった。

寄り道はしてないけど1日では採算の取れる6階に辿り着けず、漸く足を踏み入れたのは翌日の昼だった。

6階からは空気が変わった。

出てくる魔物も少し強くなったしドロップ品の質も上がってそれなりに売れるものが落ちるようになった。

もう少し進みたかったけど、角を曲がった先にあの6人パーティーを見掛けたから切り上げて宿に戻った。


戻った宿には昨日の紳士が待っていた。

部屋へ通す気になれず、そのまま食堂の隅を借りて話すことにした。

昨日と違って態度からけんは取れてるけど、今さら話すことはないと思った。

「先日は失礼した」

紳士がテーブルに乗せたガラスのブローチはウサギ耳のおじさんがくれた物だった。

「手紙を読んで謝罪しに来た」

紳士はブローチの隣に1枚の紙を広げた。

「君が欲しい情報だ」

だから?

何のリアクションも起こさない私に、紳士は決めつけるように言葉を投げてきた。

「欲しかったんだろう」

こんな頭にくるやり方で出されて?

部屋へ戻ろうとした私を呼び止めてブローチと紙を掴ませてから、紳士は有り得ない事を言った。

「お前が攻略出来たらだが、ボスのドロップ品は高値で買い取ると約束しよう。頑張ってくれ」

呆れた。

中学の時の最悪な教頭に酷似してる紳士の態度に、もう怒ってるのが馬鹿らしくなった。

紳士は一方的に言うだけ言って満足したのか、私の返事も聞かずに帰っていった。

部屋へ戻って、持たされたグシャグシャの紙を開くと几帳面な文字で情報が書かれていた。

裏ボスは7階とあって、場所と扉の開け方と裏ボスも木の魔物だとあった。

攻略を断念してから裏ボスの情報とか渡されても嬉しくない。

てかこれって、攻略出来たら売りに行かなきゃダメなのかな。

取り敢えず…、明日から攻略すると決めた。


翌日は6階から再スタートして、夕方にボス部屋の前に着いた。

ボスの攻略は明日にしようかとも思ったけど、周りに誰も居ないからこのままボスに挑むことにした。

今回も装備を最上級に替えて属性無効の盾を着けた。

ボス部屋の扉の先には、高さ150センチくらいの木の幹が立っていた。

え?

嘘…でしょ。

これって普通に森にいる魔物だけど。

図鑑増えなかったから正解だと思う。

サクッと炎で倒す。

ポーーン。

久々レベルアップの音がした。

ボスのドロップは槍。

鑑定すると雷属性だった。

これって…。

もう一度挑んで確かめてからだけど、10の町のダンジョンに比べたら練習みたいにボスが弱すぎる。

裏ボスにもその後挑んだ。

裏ボスは3メートルほどの木の魔物で弱い氷の魔法を使ってきた。

ピコーーン。

図鑑が増えた。

こっちも炎の魔法がよく効いた。

ポーーン。

今日2回目のレベルアップの音がした。

ドロップは属性付の腕輪で鑑定すると炎だった。

腕輪の属性も槍と同じでランダムだと思う。

槍も腕輪も攻撃の武器にしては威力が低くて、その日は戸惑いながら宿へ帰った。

やっぱり、ゲームじゃなくなってるんだ。

なくてもこの世界で生きていくしか道はない。

何度も自分に言い聞かせて、これからを考えた。

それからも毎日ダンジョンに潜った。

何度か時間を変えてボスに挑んで調べたけど、ボスも裏ボスも復活は翌日だった。

日付が変わるとリセットされる感じらしい。

時たま6階で6人を見掛けたけど、それも1週間もしたら姿を見なくなった。

きっと帰ったんだと思う。

おじさん冒険者たちには1度もニアミスしなかった。

潜る時間が違ったんだと思う、

6階から回って裏ボス、ボスと倒していく。

アイテムリストを埋めたくて、週1くらいで1階から周りなおしたりした。

ボスも裏ボスも攻撃してくるのは物理攻撃か弱い氷魔法で固定だった。

弱点も炎で固定で剣でも倒せた。

簡単すぎて、逆に戸惑ってしまう。

14の町のダンジョンは10の町のダンジョンより数段優しく経験値は数倍多かった。

それでもレベル40まで上がるとそこからがまたなかなか上がらなくなった。

槍と腕輪は属性コンプまで一月近く掛かった。

光と闇はかなり出にくくて雷は一番出やすかった。

その間カレンとガウにも1度もニアミスしなかった。

変だとは思ったけどあの話の後だから訪ねて行きにくかった。

そんなカレンとガウの事を冒険者ギルドで尋ねたのはそろそろ次の町へと思い始めてからだった。

残念だけど、カレンもガウもこの町には居なかった。

私と話した翌日に町を出たらしい。

私もちょっと気まずかったけど、カレンもそうだったのかもしれない。

初めて友達になれそうな人に出会えた気がしてたから、聞いてかなりショックだった。


翌朝、一月以上居た14の町を出て次の15の町へ向かった。

紳士は尋ねなかった。

確かに裏ボスの情報は教えて貰ったけどもう関わり合いたくなかった。

15の町へは馬車4日で銀貨5枚。

乗客は女性2人と子供2人、それと荷台の私だった。

必然的に夜の火の番は私と御者になった。

「こんな静かな旅は初めてだ」

御者のそんな呟きが出るくらい、馬車は私の光の結界に護られ4日後の夕方に15の町へ着いた。




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