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ゲームの世界に転生?  作者: まほろば
12の町と13の町
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忘れたクエストと子供



12の町へは夕方着いた。

支線の町は本線よりかなり小さく12の町も30件に満たない家が集まった田舎町だった。

13の町までの乗り合い馬車は明日の朝イチらしい。

それまでゆっくり休もう。

3日ぶりのベッドに寝転んでステータスからこの町のクエストを見てみる。

えっ!

寝返りの体勢で固まった。

…やっちゃった。

12の町のクエストは、11の町の冒険者ギルドから12の町の宿屋に荷物を届ける、だった。

転移でこのクエストを受けて届けるのはありかなぁ。

最後に魔法の袋(小)とあった。

取り敢えず11の町へ戻ろうとベッドから起き上がったら、夕飯を告げるベルが鳴った。

夕飯が先。

夕飯は固いパンと牛乳を使った薄いシチュー。

どの町からバターが出てくるのだろう。

せっかくのシチューが物足りなかった。

夕食のあと部屋でサンドイッチをかじってから、11の町の冒険者ギルドの裏へ転移した。

急いで表通りに走り冒険者ギルドへ入った。

依頼板から12の町への荷物運びを取って、受付カウンターへ向かった。

生憎受付はおじさんだった。

どうしよう。

時間的にお姉さんに交代は朝まで無さそう。

勇気を出して、ギルドカードと依頼の紙と魔法の袋をカウンターに置いた。

おじさんはチロッと3つを見て、隅にある荷物カウンターを乱暴に指した。

「あっちに見せろ」

おじさんにぺこっと頭を下げて荷物カウンターへ行って、同じ様に3つを出した。

荷物カウンターの受付は若い熊耳の少年だった。

依頼の紙を見て、木の食器を大量に持ってきた。

これが依頼の荷物らしい。

全部を魔法の袋へ収めてからぺこっと頭を下げた。

顔を上げたら少年がビックリした顔で私を見ていて、何か凄く気まずかった。

走って冒険者ギルドの裏に戻ると先客がいた。

角からそっと見ると12、3才くらいの男の子が8才くらいの泣いてる女の子に謝っていた。

「ゴメンよ。お金が足りなかったんだ」

「誕生日だから買ってくれるって言ったのに、お兄ちゃんのウソつき」

しゃくりあげながら女の子が男の子の腕を叩いていて、男の子は泣きそうな顔で叩かれるままだった。

きっと目の前の2人は兄弟なんだろう。

暗くてよく見えないけど、2人ともかなり汚れた服を着ているようだった。

「来年こそあの白いクリームのパンを買ってやるから今年は我慢してくれよ」

白いパン?

アイテムボックスを見ると生クリームのパンは10個以上入っていた。

あの女の子にこれを渡してあげたいけど、ただ近付いただけじゃ逃げられそう。

考えても良い考えは浮かばなくて、両手に生クリームのパンやサンドイッチを抱えて女の子に近付いた。

驚かせないようにパンを見せながらゆっくり歩いた。

男の子は警戒して逃げようと女の子をグイグイ引っ張るけど、嫌々と抵抗する女の子の目は私が抱えているパンに釘付けだった。

可能な限りにっこり笑って2人に近付いていく。

慣れない笑顔で顔の筋肉はひきつっていたと思う。

諦めた男の子が女の子の手を離すと、一目散に走ってきて生クリームのパンをむしゃむしゃ食べ始めた。

「美味しい」

近付いてきた男の子に残りのパンを渡す。

『名前は?』

手が空いてからメモを書いて男の子に見せた。

「読めない」

男の子は首を振ってそう言った。

女の子が男の子の手にあるサンドイッチも嬉しそうに食べ始めたから、男の子にも食べるようジェスチャーで促した。

男の子も食べ始めたけど、直ぐに食べ物を持ってるのを誰かに見付かったら取られると言ってその場を離れようとする。

そんな男の子を引き留めて、袋から出したように見せた金貨5枚と銀貨5枚を男の子に手渡した。

別に金貨5枚と銀貨5枚を出して布でくるみ紐でぎちぎちに巻いて見せた。

こうするとポケットで硬貨の音がしない。

それも男の子に渡した。

女の子を引っ張りながら私に頭を下げる男の子。

2人が角を曲がって見えなくなってから、12の町の宿屋の部屋へ転移した。


魔法の袋を持って食堂へ向かうと、5人の冒険者がお酒を飲んでいた。

宿のおじさんを探すと厨房へ居たから依頼の書類を見せて何処に出せば良いかを尋ねた。

おじさんは1番端のテーブルを指した。

袋から品物を全部出すとおじさんが数を確認して受け取りのサインをくれた。

これで依頼は終了。

部屋へ戻ろうとしたら5人の冒険者のうち1人のおじさんに呼び止められた。

「嬢ちゃんも冒険者か?14の町のダンジョンに行くんだろ?情報やるからこっちへ来な」

他の4人も笑いながら手招きするし、宿のおじさんも頷いていた。

部屋へ戻りたかったけど断れる雰囲気じゃなかった。

「嬢ちゃんはランクいくつかね」

『ギルトランクBです』

「嬢ちゃん喋れないんか」

驚いてる冒険者に頷いて見せた。

「こりゃたまげた」

「今まで苦労したんだろうなぁ」

「頑張るんだぞ」

驚く者哀れむ者励ます人と、冒険者の反応はマチマチだった。

「嬢ちゃんは話せなくても実力があれば冒険者になれる良い見本だな」

豪快に笑うおじさんにバンバン背中を叩かれて息が詰まった。

「よしっ!気に入った」

おじさんたちはがばがばお酒を飲みながら14の町のダンジョンの話を楽しそうにしてくれた。

14の町のダンジョンは町のすぐ横にあって、8階層になっていると威張る。

「14の町のダンジョンは兎に角ドロップ率が高い」

「6階までは雑魚が集団で襲ってくるから雑魚装備が貯まる貯まる」

「1日潜れば大の魔法の袋がパンパンになるくらい雑魚装備が集まるのさ」

1日で?

話から馬車でのパーティーの会話が思い出された。

あれってこの事を言ってた?

「14の町の鍛冶屋はごうつくばりでな、足元を見て買取り金額をグッと下げてきやがる」

「捨てるより売る方が少しでも金になるから渋々売るがな」

何と無く話が見えてきた。

ぼられたくないから魔法の袋3つなんだ。

「まぁ6階まで行けたら雑魚を拾わんでも充分儲けが出るがな」

「嬢ちゃんにゃあちときついかもしれんがメンバーに助けて貰いながら潜ればなんとかなるぞ」

「ボスは木の化け物だ」

え?蝶…じゃないの?

「炎に弱いが武器でも倒せる」

え?え?

「落とすのは属性付きの槍だ」

「何の属性かで買取り値が決まる」

「闇や光は高い」

もしかしたら…ゲームの世界が変わってきてる?

「分かったか?」

『属性はランダム?』

「ああ、運便りだ」

「兎に角ドロップ率が高いから無駄に雑魚武器が貯まる」

「それだけ頭に入れとけばまず困らんだろ」

『ありがとう』

明日の朝11の町行き乗り合い馬車に乗ると言う5人の冒険者に御礼を言って部屋に引き上げた。


おじさんたちの話を思い返しながら、14の町のダンジョンもレベル上げながら気長に潜ろうと思った。

今のレベルでどこまで潜れるだろう。

ゲームの時と違って設定が変わってきてる気がして酷く落ち着かない気分になる。

現状でただ1つ分かってるのは、レベルを上げて氷のダンジョンへ辿り着かないといけない事だけ。

ステータスの地図を開いて、順番にダンジョンをなぞってみた。

この先にあるダンジョンは7つ。

14、20、27、35、42、48、ラストの氷のダンジョンの7つ。

きっと私の事だから、14の町のダンジョンが攻略出来たら20の町のダンジョンも、って思うんだろう。

………

決めた。

ダンジョン全部挑もう。

最終ダンジョンに辿り着く前に、ステータスをカンストさせたいって本気で思った。




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