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ゲームの世界に転生?  作者: まほろば
11の町
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魔法の袋



馬車から見る11の町は不思議な町だった。

ぐるりと町を守っていたはずの壁が無くなっていて、ポツンと無防備な町だけがそこにあった。

この町から先は人より大きな魔獣も出てくるはずなのに、何故?

疑問ばかりがぐるぐると頭を占めた。

検索を掛けてみても結界すら張って無くて、きっと町を脅かす魔獣は出てこない設定に変わったんだろうと思った。

馬車は兵士が立っている形だけの門を通って町の中の乗り場へ向かって走る。

建物も街路樹もゲームの中のままなのに、町を歩く人だけが違った。

人、獣人、獣人を従えた人。

もうゲームの世界じゃない…、NPCじゃないんだ…。

乗り場に着いても変化に付いていけなくて動けないでいたら、おのぼりさんに間違われたみたいで案内の人が親切に色々教えてくれた。

この町の大きさは10の町くらい。

11の町は3つの国の中心になっていて何処の国にも属さない中立な町らしい。

この先の本線の町は全部中立になっているそうだ。

案内人は獣人の奴隷の話もした。

獣人にはめている奴隷の首輪には隷属の魔法が掛けられているから従順で思い通りになると言う。

これから始まる戦争にも獣人の奴隷を使うと聞いて体が震えた。

獣人と意思の無い獣人が戦う…。

人間の身勝手さに吐き気がする。

自分もその人間の1人だと思うと胸が苦しかった。

きっとスキルの魔獣ティムと似通った魔法だろう。

スキルの解呪で隷属が解けるなら…、それでも奴隷の首輪で抵抗出来ないのは変わらないと思うと何も出来ない自分が苦しかった。


乗り場を離れようと歩き出すと、甘い匂いが乗り場の端からしてきた。

生クリーム!

匂いのする方に走ると、細長いパンに生クリームをタップリ挟んだパンが売られてて、かなりの量を買ってアイテムボックスにしまった。

昼を食べてまだ2時間なのに匂いに負けて1つ食べながら地図から冒険者ギルドの場所を探した。

この町の冒険者ギルドは町の中心にあった。

通りを歩いてる人は多くないのに、わざと痩せた子供がぶつかってくる。

初めは驚いたけど、次からは装備のポケットに小銭を入れて盗みやすくした。

ぶつかってくる度に小銭を追加する。

子供は獣人の子より人の子の方が多かった。

冒険者ギルドに入ると受付が2つあった。

受付カウンターの上に人と獣の頭の看板が掛けてあって、みんなそこに並んでいた。

人の看板の受付には人が、獣の看板の受付には獣人が並んでいた。

私も人の列に並んだ。

列が進んだら前の人の脇からカウンターが見えるようになった。

カウンターはおじさんだった。

嫌な予感しかしない。

順番がきて、装備の胸ポケットからギルドカードの端を見せてメモをカウンターに置いた。

『お風呂のある宿を紹介してください』

受付のおじさんはメモを読むと大声で笑って紙を放り投げてきた。

「喋れないお前にはここで充分だ」

飛び上がって紙を掴む。

周囲に笑われながら冒険者ギルドを出た。

歩きながら手の中の紙を見る。

地図で探したら際下級の宿だった。

丸めて捨てる。

受付がお姉さんになってからもう一度聞こう。

お姉さんに変わるのは夕方だと思うからその間に魔法の袋を買いに行こう。


地図から鞄屋さんを検索する。

鞄屋さんは2ヶ所。

地図を見ながら迷っていたら、横でイベントが点滅してるのに気が付いた。

そうだった、11の町はクエストじゃなくてイベント。

パーティークエストは有るみたいだけど見ないふりしてイベントを確認した。

今回も袋に入れた装備が盗まれて、返却から14の町のダンジョンのヒントを教えられる。

ただし今回は魔法の袋(小)になっていた。

少しづつ設定が変わってきてる気がする。

兎に角鞄屋さんへ行こう。

近い方は大通りに面していて高そうだった。

店にいたおじさんは10の町の鍛冶屋のおじさんと同じ空気がした。

『小さい魔法の袋を下さい』

メモをカウンターに置くとおじさんはポンと黒っぽい袋を投げてきた。

驚いてつい検索を掛けてしまった。

《偽造》

えっ!

スキルの鑑定を掛けると。

《ただの袋、表面に魔法の袋の偽造魔法付き》

ここまで悪質だと言葉も出ない。

「大金貨80枚だ」

買うも買わないも告げず店を出た。

話せないだけでこんな扱いを受けるんだと思うと、悔しくて泣きそうだった。

上級職のクラフトは取得してるから自分でも作れるけど、全然センスの無い私が作るのは…。

出来るだけ買って済ませたかった。

もう1つの鞄屋さんは下町にあるらしい。

やっと小さい店を見付けて入ったら、店主はウサギ耳のおじさんだった。

「いらっしゃい」

優しい声に後押しされてさっきのメモを出す。

おじさんはビックリしたのかちょっと私を見て、それから笑顔になると袋を2つ出してくれた。

「ピンクの花柄はベッド半分のサイズで大金貨10枚。グリーンのはベッド1つ分のサイズで大金貨20枚になるよ」

頷いてからもう1つ書いておじさんに見せた。

『ピンクを買いたいです。あとダンジョンのドロップを入れられるサイズの袋は有りますか?』

お金が有るのか確かめられるのは嫌なので、背中の袋から出したように見せて、大金貨を200枚出した。

「こんな大金持ってたら危ないよ」

『どうしても欲しかったから』

おじさんは奥から綺麗な海の中みたいな袋とピンクのチューリップ柄の袋を持ってきてくれた。

「どっちも6畳のサイズで大金貨180枚になるよ」

ブルーの方を指差して、2つの代金の190枚をおじさんに渡した。

テーブルに残った10枚を買ったばかりのピンクの袋に入れてから、おじさんにありがとうのと頭を下げた。

「君はチェスターから来たのかな?」

店を出ようとしてた私におじさんが聞いてきた。

振り返って頷く。

「チェスターに獣人の奴隷はいなかったかな?」

獣人の?…あっ。

「居たのかい?」

『始まりの町』

「始まりの町って?」

あ、そうか。

『1の町。犬の耳の20歳くらいの青年。見たのは1年近く前』

おじさんは私が書くのをもどかしそうに見て、犬の耳のって書いたら食い入るように見てきた。

「1の町迄は探さなかった、そうか1の町か。ありがとう、本当にありがとう」

おじさんに何度もお礼を言われて、もじもじしながら店を出た。

その足で冒険者ギルドへ引き返した。

小銭は良いけど途中袋の中のお金を盗まれたら困るので鞄に隠蔽を掛けた。

ピンクの袋をベルトに着けてるのに誰も気付かない。

何故か嬉しくなって冒険者ギルドへの道は足取りも軽かった。

冒険者ギルドへ入る前に隠蔽の魔法をといた。

やっぱり夕方からはお姉さんに交代していた。

何時ものように書いてお姉さんに見せた。

「紹介は出来るけどお金は持ってるの?お風呂有りだと金貨3枚はするわよ」

お姉さんまで…。

「悪気は無いのよ。紹介したのにお金がないとかになったらギルドの恥だから」

おじさんから買ったピンクの袋から大金貨を出してお姉さんに見せた。

お金を持ってるのを確かめてから、やっと宿を紹介して貰えた。

これから先は、きっとこんな対応が多くなる気がしてため息が出た。

紹介して貰った宿は金貨3枚。

部屋へ入ってから雑魚武器を20個くらいピンクの袋に移してベッドへ放置。

あとは盗むのを待つばかり。

夕食を食べて帰って来てもまだ袋はあって、一晩経っても残ってるなら他の宿へ行くしかない。



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