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ゲームの世界に転生?  作者: まほろば
10の町
22/95

パーティーもろもろ



翌朝、メンバーを連れたトーヤが宿へ来た。

驚いた事にあの4人パーティーの無口な子がトーヤのパーティーメンバーになっていた。

話を聞いてみると11の町で旅の資金や生活面で意見が食い違い内部分裂して彼だけ8の町に戻ったところで7の町のダンジョンから戻ったトーヤに偶然会ってパーティーに誘われそこから一緒らしい。

あのきつい子の家が裕福で仕送りして貰っていたが、度重なる無心にこの先の援助を断られたのが内部分裂の理由だそうだ。

無口な彼はパーティーを抜けて自分が受けれる依頼で8の町までの馬車代を稼いだのだそうだ。

他のメンバーは結成から一緒らしい。

無口な彼が抜けた盾役を引き受けていると聞いて、彼も自分と同じだと嫌な気分が再浮上した。

トーヤのパーティーの装備はトーヤだけが初級の中くらいで7の町のダンジョンも厳しかったのでは?と思うほど守備の薄い装備だった。

今回のダンジョン攻略も炎耐性のある装備はトーヤの軽い鎧だけで他の4人の装備はお粗末だった。

特に盾役の彼は盾も体も傷だらけで、最悪でも盾の買い替えは必須だった。

聞いたら11の町から8の町へ戻る乗り合い馬車が盗賊に襲われてその時受けた傷だと返ってきた。

その点をトーヤに伝えると今日の宿泊費も無いから買い換えられないとその場で却下された。

自分たちを守る盾を疎かにするのかと怒りが沸く。

彼も感じたらしく冷たい目でトーヤを見ていた。

背中の偽魔法の袋からこのダンジョンのドロップ品、初級炎耐性付きの盾を選んで出して彼に手渡した。

「その盾は?俺たちには?」

『ダンジョンのドロップ品』

彼が外した壊れた装備をトーヤが斜めがけにしてる袋に入れたのを見て、トーヤも魔法の袋持ちだと知った。

トーヤが袋に入れた盾は無口な子の自前のはずだ。

ジッ、とトーヤを見る目は嫌悪を浮かべていた。

メンバーも複雑な表情だ。

リーダーのトーヤだけがその空気の中で浮いていた。

この先のドロップ品はトーヤに任せよう。

それこそ後から猫ばばしたとか言われないためにも、保管はリーダーのトーヤが望ましかった。

今のトーヤの行動を見て、私も万が一を考えて本物の魔法の袋を買うべきだと強く思う。

気持ちを切り替えて、6人で入口から入った。

「6階まで行けるんだろ?6階からにしよう」

『確実に私以外は死ぬ』

「うっ…」

トーヤが黙ったのでそのまま進んだ。

宝箱を開けていくルートで1階を回る。

パーティーだと出てくる魔物も数が多い。

5人の疲労が予想より酷くて、その日は1階だけで探索を終えるしかなかった。

鍛冶屋にはトーヤだけで行かせて、私と他のメンバーは報告を兼ねて冒険者ギルドで待つことにした。

お姉さんに今日の成果を伝え、このパーティーは盾役の負担が大きいと不安点を伝えた。

お姉さんの目が他のメンバーに向いた。

『ドロップ品の盾を持たせた』

お姉さんが頷いた。

『今日の宿代も怪しいそうなので、あげるつもり』

「良いの?」

頷いて見せた。

そうしてるうちにトーヤが目を輝かせて帰って来た。

「このダンジョンのボスは炎剣を落とす!売値は大金貨20枚だぞ!」

おおー、とトーヤのメンバーが雄叫びをあげる。

私とお姉さんは呆れて見てた。

「貴方たちのメンバーに魔法使いが居るの?ダンジョンボスは魔法じゃないと倒せないわよ」

「えっ!」

「武器の攻撃はほとんど効かないわ」

落胆するトーヤとメンバーたち。

「ボスはムリでも6階層まで潜れるようになればかなり資金面は潤うから頑張ってね」


それからは1日1階づつ攻略していった。

雑魚装備でも売ればその日5人の生活費になる。

本来なら1日の収入をメンバーの人数で割るべきなのにトーヤはパーティーの資金だと言い分配しない。

今までもそうしていたようでメンバーの誰も不平を漏らさなかった。

臨時メンバーの私にも分配する気は無いらしい。

これがパーティー?

これでみんな楽しいんだろうか?

私には不思議だった。

2日目の終わり、トーヤから同じ宿に移らないかと誘われたけど、この宿が気に入って居るからと断った。

これ以上トーヤとの接点が増えるのは嫌だった。

6日目には待望の6階層に辿り着いた。

明後日からは彼らたちだけで稼ぐ事になる。

私は意識して戦いに参加せず後ろから見守っていた。

ここまでの戦いでメンバーたちも盾の重要性を理解するようになって、盾役の彼もパーティーに居やすい空気になってきていた。

トーヤは嫌な顔をしたけど、毎日雑魚装備を大量に売った資金でメンバーの装備を少しづつ良い品に買い替えたのも戦力が上がった一因だと思う。

宿代と食事代を除いた額を装備に継ぎ足すのは冒険者として当然の事だ。

売るのはおじさんの店でトーヤがして、買うのは鍛冶屋初心者のお兄さんの店で他のメンバーがした。

自分で装備を買うのはみんな初めてらしく、新人店主のお兄さんに相談しながら装備を考える様子はとても楽しそうだった。

そうして装備の知識を得始めると、自分たちの装備が今まで如何に薄っぺらだったかに気付き始める。

それは私が感じているトーヤへの不信感と似通った感情だと感じた。

最終日には6階層で力負けしなくなったから戦いにも余裕が生まれていて、みんなの感情の変化に気付かないトーヤの言動にも余裕が感じられた。

「君が居るうちに7階層まで行くのも良いかもね」

『7階からは範囲魔法を使ってくるからムリ』

書いて見せたら、盾役を増やせばいけるか、とか言う戯れ言が聞こえた。

トーヤの軽率な言動に不安が広がる。

それを聞いていたメンバーの、反発のこもった視線が自分に向いたのにもトーヤは気付かない。

私とダンジョンに潜って冒険者が面白くなった。

そう言ってくれる4人の気持ちがトーヤから離れていくのを感じながらも、私は目を瞑っていた。

仲間と自分を大切にして欲しかったから。

お姉さんの言うとおりで6階が攻略出来るくらいになるとパーティーの資金も余裕になるらしく最終日の夜は私と同じ宿に移ってきた。

『装備の不安は?』

「今の装備で戦えてるんだ十分だろ」

周りの見えていないトーヤに、それ以上は伝えられなかった。

後は彼ら5人の問題だから。


翌朝、トーヤたちに挨拶して宿を後にした。

冒険者ギルドでパーティーから外れたのを確かめる。

ダンジョンの裏ボスは、残念だけど今回は実力不足だし見送る事にした。

いつかリベンジしたい。

後ろを見ると今回の裏ボスだけじゃなく、やり残してるパーティークエストとかも残っている。

いつか気持ちを同じに出来るパーティーメンバーに廻り会えたら、さっき別れた4人のように私も笑い会いたかった。

次の11の町までは銀貨7枚、馬車で4日。

11の町に着いたら本物の魔法の袋を買おう。

それなりに大きい袋は11の町の鞄屋らしい。

ギルドカードの中には大金貨250と7枚あるから足りるだろう。

アイテムボックスの大金貨も待望の1000枚になっていて、こっそりにまにましてるのはコレクターの性なのです。

ぼんやり窓の外を見ながら11の町がどんな町か想像するのも楽しかった。

11の町からは町が国の境界線になってると聞いた。

言われても想像できないから見てから決めよう。



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