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ゲームの世界に転生?  作者: まほろば
8の町と9の町
18/95

2つのニアミス



翌朝、誰よりも早く起きて建物を後にした。

地図で冒険者ギルドを確かめてから乗り合い馬車の乗り場に向かった。

一時でもこの町に居たくなかった。

それに、出てるだろう屋台も目当てだった。

9の町への馬車は銀貨6枚、3日。

11の町へは金貨10枚、7日。

どっちへ行こうか一瞬だけ迷ったけど、クエストもあるし11の町までは支線を行こうと決めた。

見ると、9の町への馬車の出発は明日だった。

屋台で見付けた照り焼きチキンを挟んだような甘めのサンドイッチは、2つも買って食べてしまうほど美味しかった

他に5つ買ってアイテムボックスにしまう。

8の町を出る前に大量に買いだめするつもり。

ぶらぶらと町のメインストリートを歩く。

明日は9の町へ向かう乗り合い馬車に乗るつもりなので大通りだけ見て回るつもりだった。

8の町も始まりの町と同じくらいの大きさだけど、売ってるものは手がかかってる物が多かった。

洋服の店、下着の店、細工物の店、目に付いて覗いてみたけど地味子の私には似合わない。

ゲームの時は気にならなかった、イヤ逆にもっと地味なアバターを探したくらい。

終わってる。

午前中は主に食糧の買い出しで終わり、お昼を美味しそうな食堂で太い不思議なパスタを食べた。

ちょっと食休みして冒険者ギルドへ向かった。

依頼板から9の町へのお届け物と10の町への鍛冶屋の配達の依頼を手にして受付の列に並んだ。

手短に言うと。

9の町へのお届け物は10才の子供だった。

思わず絶句する。

話せない私でもOKなのかきちんと確認した。

それでもOKらしい。

前回は商人の護衛だった。

今回もそうだろうと安易に考えていたのに…。

お母さんと8の町にいるおばあさんのお見舞いに来たら、おばあさんの体調が悪くてお母さんが看病することになってしまった。

なので子供を9の町の父親の元へ送り届けて欲しい。

父親は到着の日時に9の町の冒険者ギルドで待っていると受付のおじさんが言った。

鍛冶屋の依頼は修理した防具の配達だった。

どちらもゲームらしく期限がなかった。

子供の配達とか、怖すぎる。

多分ゲームの設定なら字は読めるはずだ。

受付のおじさんに確かめると頷かれた。

子供は明日乗り合い馬車の時間に母親が連れてくると受付のおじさんに説明された。

鍛冶屋の荷物も明日にして貰う。

子供のためにお菓子やくだものを買い足した。


宿を尋ね忘れて冒険者ギルドへ引き返したら、受け付けに見覚えのある4人が居た。

最初に気付いたのはきつい子だった。

きつい子がリーダーをつついた。

「え?ああ、久し振り」

用事が済んだのか4人はこっちに寄ってきた。

「まだこんなところに居たの?相手が強くて先に進めないとか言ったら笑えるんだけど」

嫌味な所は半年近く会わなくても変わってない。

逆に4人がそうなのかも、と思い当たってしまった。

「俺たちは真っ直ぐ進んできたんだ」

5の町から直で8の町に来たらしい。

「この町へはいつから居るの?」

『今日着いた』

「え?馬車に居なかったろ?」

嘘つくなと言うリーダー。

『7の町から来た』

「ふぅん、回り道してきたのか」

納得顔のリーダー。

「次はどこへ行くつもりだ?」

『9の町』

「悪いな。俺たちは直で11の町へ行く」

何が悪いのかよく解らないけど、私は頷いて受付の列に並んだ。

11の町。

そんなに飛ばして実力は追い付いてるのだろうか。

見た感じ装備は新人のままのようだけど…。

馬車のお金はどうするのだろう?

稼いでるようには見えなかった。

何時ものように受付でお勧めの宿を紹介して貰う。

御礼を伝えて冒険者ギルドを出れば、外で4人が待ち構えていた。

「せっかく会ったんだもの一緒に晩御飯食べましょ」

きつい子が強引に誘ってくる。

承知するまで言い続けそうな口調だった。

仕方無いと頷いた。

「宿の食堂で良いわよね」

相変わらずと思いながら頷いた。

4人が泊まっている宿は裏通りにあった。

4人部屋で1人銀貨3枚と聞いて初めて宿にもランクがあると気が付いた。

4人に冒険者ギルドから宿を紹介して貰ったから、お茶だけ一緒にすると伝えた。

「金貨2枚の宿なんて贅沢よ」

宿の食堂へ移動してる途中できつい子が言い出した。

きつい子の一言が引き金になったのか4人の私を見る視線は険悪だった。

席に着くときつい子が口火を切る。

「私たちからくすねた大金貨25枚で豪遊してるんだから余計腹立つわよ」

予想してた言葉がやっぱり飛んできた。

それが言いたくて強引に誘ってきたのだろう。

まだお金が入ったのか見てないから解らないけど、どれだけ言われても返す気持ちは無かった。

「悪いと思うなら返しなさいよ!」

食堂に居たお客が手を止めてこっちを向く。

また私が悪者になるだけだ。

めんどくさくなって帰ろうと思った。

どれだけ書いて説明しても喋れる人には敵わない。

「よせよ」

立ち上がろうとした所に声を掛けられた。

声の主を見たら、それもめんどくさい相手だった。

「誰だお前」

リーダーはもう喧嘩腰だ。

きつい子の好戦的な口調に刺激されてモチベーションが上がってる感じだった。

「俺は彼女の知り合いだよ」

トーヤが涼しい顔で答えた。

「じゃあお前が返すのかよ」

「何を返せって言うんだ?まず話を聞こうか」

相手が男だからかきつい子が私に初級ポーションを押し売りされたと話を変えてトーヤに訴えた。

黙って聞いていたトーヤが笑いながら話し出した。

「要約すると、君たち4人は初心者なのにダンジョンに挑んで傷付いた所で彼女に出会った」

そこまでは良いね?と私に聞いてきたから頷いた。

「ダンジョンを脱出するのに君たちが傷だらけだったから彼女がポーションを出して君たちが飲んだ」

トーヤは食堂の客たちにも聞こえるように話してる。

「俺は代金を払うのが当然だと思うが、みんなはどう思うかな?」

あちこちから当然だと声が上がった。

きつい子がふるふるしながら叫んだ。

「私たちは前の日に冒険者登録をした初心者だったのよ!助けてくれるのは当然でしょ!それなのに冒険者ギルドのお姉さんたらポーションの代金を払えって強引に取り立てたのよ!みんなその子のせいだわ!」

トーヤとお客から呆れたようなため息が漏れた。

「登録した翌日にダンジョン?それ姉さんが怒るのも当然だよ。それで連れ帰ってくれた彼女に感謝しないで金返せなんて、俺なら恥ずかしくて言えないね」

その後も4人に味方するお客は居なかった。


4人がすごすごと部屋へ引き上げたあと、トーヤが深く頭を下げて来た。

「ごめん。あの時は君の話を聞かないで彼女の話を鵜呑みにしてしまってすまなかった」

今更謝られても済んだ事。

返す言葉が見付からなくて黙ってたら、トーヤが前の椅子に座った。

「あれからリリカの希望通りダンジョンに潜った。くるむ布がないと知ったのはせっかく手に入れた宝石が割れてからだった」

その時の様子が目に浮かぶようだった。

2日ほどリリカと一緒に居たと言うトーヤは、リリカの話からお姉さんはリリカが居ない間に式をしたんじゃないかと思ったらしい。

私もそこまでは考えなかったからビックリした。

「リリカとの2日で2人もチームを抜けた」

話が解らない私に言われても、と首を傾げて見せた。

「天然を装おって1人のメンバーを誘惑した」

それは誘惑じゃなくて…。

「彼女は無意識のはずだと言いたいんだろ?」

うんと頷く。

「奴にはパーティーに恋人が居た」

えっ!

「リリカは俺や他のメンバーの前では奴に絡まなかったから気付かなかった」

まさか、リリカのせいで別れたとか言うの?

「村へ帰ると言うリリカに奴はパーティーを抜けても一緒に行くと言った」

それで恋人もパーティーを抜けた?それは変だよ。

そう考えていたら。

「彼女はパーティーを抜けて実家に帰った」

それなら納得できた。

「奴も直ぐにリリカが自分を好きじゃないと分かったらしい。リリカと別れて戻ってみれば彼女はパーティーを抜けた後だった」

奴と彼女の村へ一緒に行ったけど、彼女はまた絶対繰り返すと言って別れる気持ちを変えなかったらしい。

恋愛経験無しの私でも、それが女性の心理だと思う。

「パーティーが4人になったタイミングで君に会った。うちのパーティーへ入ってよ」

軽く言われて聞き逃しそうだった。

『ノー』

何度も言葉を変えて誘われたけど、1度信頼が消えた人とパーティーを組むなんて考えられなかった。

トーヤは10の町のダンジョンに挑むと言った。

4人では依頼の報酬より費用の方がかさむと言う。

炎の耐性付の装備が有るなら楽勝と書くと魔法を使う魔物が出るのかと慌てて聞き返してきた。

耐性付の装備がないなら、7の町のダンジョンが良いと勧めてみた。

ボスは剣士ゴブリンで倒してドロップする装備は金貨8枚で鍛冶屋が引き取ってくれる、と書いた。

「ありがとう、早速行ってみるよ。金を貯めて10の町のボスを倒してやる」

鼻息の荒いトーヤと別れて、冒険者ギルドお勧めの宿で念願のお風呂に入った。

ゆったり湯船に浸かってあの4人の事を思い出す。

冒険者ギルドで4人に会ったときはまた言われると覚悟してた。

居合わせたトーヤが庇ってくれたのにめんどうな、とか思って悪かったな。

あ、御礼も伝えてなかった。

もしまた会えたら伝えよう。

偶然って凄い。

それにしても…。

町の数字が上がるにつれ出てくる魔物も強くなってくるのに彼ら4人は初期装備のままに見えた。

大丈夫?

そしてトーヤも残った4人で10の町のダンジョンに潜るつもりだったみたい。

あ、…名前。

2回目だからか何も感じなかった。

トーヤに7の町のダンジョンを教えたけど資金が貯まったら10の町のダンジョンへ行くに違いないと思うとやはり心配だった。

きっと赤字のパーティー資金を10の町のダンジョンで貯めたいからだとろう。

10の町のダンジョン…。

レベル15の私で攻略できるだろうか。

きっと7の町のダンジョンより難易度は数段上がると思うし、危険度も上がると思う。

不安になったけど、それでも潜ってみたかった。

あっ!

トーヤがあの宿に居る理由って…。

ポンとある予測が浮かんだ。

それほどパーティー資金が足りなくなってる?

4人だと依頼をこなしても赤字になるってトーヤが言ってた事が思い出された。

6人なら受けられる討伐の依頼も4人なら倒せないから受けられないんだ。

未だ自分の力量も掴めない私が彼らを心配するのはなんか違うと思うけど、彼らの不安なこの先を考え始めると悶々としてしまってなかなか寝付けなかった。



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