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ゲームの世界に転生?  作者: まほろば
6の町と7の町
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最悪な旅と7の町のダンジョン



夜中の戦闘の結果は、少年と2人で5匹を仕止め、2匹に逃げられて終わった。

残りの1匹は焚き火跡にいたおじさんが手傷を負わせて逃がしてしまっていた。

手負いの獣は狂暴になる。

始めは手負いで逃がしたとおじさんが責められていたが、朝には冒険者が居て逃がしたとおじさんじゃなくて非難が私に向いた。

少年も私を庇えば庇うほど非難の的になった。

最後はここに私と少年を置き去りにする話までし始める始末だった。

話せない私が何度書いて反論しても書くそばから破り捨てられる。

もうたくさんだった。

集団心理の凶悪さに吐き気がした。

むしろ置き去りにして行って欲しかった。

転移して5の町から8の町への乗り合い馬車に乗れば済むし、結果今より悪くなるとは思えなかった。

その乗客の暴走を止めたのは御者で、7の町までの行程で又襲われた時に誰が馬車や乗客を守るのか?

7の町まで自分達を守れ?

身勝手な言い分に腹が立ったけど、もし少年までここに置き去りにされたら逆に私が困ってしまう。

腹立たしいけど、頷くしかなかった。


出発の時、私も荷台に乗った。

揺れに慣れてから少年に防具を渡した。

又狼が襲ってきたら剣だけでは不安だったから。

「いいのか?」

嬉しそうな少年に頷く。

少年は友達と2人で7の町のダンジョンに行くところだと握り拳を見せながら言う。

2人の単語に首を傾げていると、後ろの馬車の荷台を指差した。

見るとそこにこっちを睨み付けてる少年が居た。

「この装備があればダンジョンに潜れるありがとう」

え?

あ…そうか。

私の渡し方が勘違いさせたんだ。

ホントは7の町まで貸すね、のつもりだった。

説明が下手だったと彼に伝えたい、けど彼は文字が読めない、ジレンマだった。

少年に渡したのは7の町のダンジョンで手に入れた装備で1つしかない。

違うのにしたかったけど、その装備しかアイテムボックスから出せなかった。

少年は《ダン》と名乗った。

向こうの荷台に乗ってるのは《カラ》。

2人は17才で同じ村の出身だと言った。

幼馴染、同い年、2つの単語が4人を連想させる。

まさか、と思いながら警戒は解かないと決めた。

ダンとカラは乗り合い馬車の料金しか持っていなかったので道中は水だけで過ごしていたらしい。

私の放ったサンドイッチも2人で半分にしたそうだ。

あっ!

背中を冷や汗が伝った。

サンドイッチを投げたのは失敗だった。

ダンが普通ならあるはずの無いサンドイッチの謎に気付かないのが救いだ。

もし気付かれて問い詰められてたら…、上手く誤魔化せる自信は無かった。

これからは気を付けよう。

自分だけ食べるのは気まずい。

アイテムボックスにまだ食糧はあるけど2人の前で出すのは危険に思える。

それならば…、ウサギの肉と携帯食半分をアイテムボックスから取り出して2人に渡した。

やはり2人は慣れていて、ウサギの肉を枝に刺すと上手に焼いて携帯食と食べていた。

焼けたウサギ肉を持ってダンが来たとき、ダンと私を見るカラの目が刺すように厳しかった。

まさか、女の子?

外見は汚れた服にボサボサの髪だけど、お肉を食べる仕草とかダンを見る視線の柔らかさとか、見れば見るほど女の子に思えた。

それからは意識してダンとは関わらないようにした。

ムダにカラに睨まれたくない。

それが私の本心だった。

何事もなく3日めになった。

ダンとカラは物言いたげに時々私を見ていた。

朝から私も食事を摂っていないから2人からは言い難いんだと思った。

アイテムボックスの中と相談したんだけど、3人で食べれる物が見付からなかった。

空腹だけどサンドイッチの二の舞は踏みたくない。

携帯食は昨日3人で食べ尽くしてしまったし。

7の町に着くまで、私も空腹に耐えるしかなかった。


7の町へ着いたのは夕方だった。

7の町は5の町と同じくらいの大きさで、ダンジョンのある町らしく冒険者で溢れていた。

笑えるけど、乗客たちは何もなかったかのように馬車を降りて人波の中へと消えて行った。

私も馬車を降りてダンとカラに手を振って別れる。

まず町の中心へと人の流れに乗って歩いた。

7の町はゲームで見てた町並みより綺麗だった。

今夜の宿を見付けなくちゃと思いながら、頭の中でステータスを開いた。

クエストはダンジョン攻略だと思っていたら、クエストではなくて7の町もイベントになっていた。

ボスを倒した報酬はダンに渡したあの装備だった。

……

正直迷った。

装備は欲しいけどボスに勝つ自信がない。

でも装備は欲しかった。

前回のデータもある、装備もある。

怖いけど、やっぱり欲しい。

悩んで、ダンジョンを攻略してもう一度あの装備を手に入れるって決めた。

決めたら俄然ダンジョンクリアに意欲が湧いてきて、足取りも軽くなった。

今夜の宿を探すのに地図を開いたら冒険者ギルドが町の中央にあった。

きっとダンジョンがあるから冒険者ギルドも有るのかもしれない。

冒険者ギルドから今夜の宿を紹介して貰おう。

ダンとカラが気になって探索から探してみる。

特定な個人を探せるかはわらかなかったけど、後をつけられてる気がしてしょうがなかった。

見付かったけど…私の後ろを歩いてるみたい。

これって…始まりの町と同じじゃ…。

落ち込みながら冒険者ギルドへ行くと、受付のお姉さんから宿は満杯だからギルドの仮眠室へ泊めてあげると言われた。

有り難く泊めて貰う。

ダンとカラは冒険者ギルドまでは追って来なかった。

冒険者登録をしてない?

仮眠室で空腹を満たすと眠気が襲ってきた。

早朝、受付のおじさんに泊めて貰った御礼とダンジョンへ潜りたいと伝える。

ダンジョンは冒険者ギルドの管轄じゃないから潜るのに許可はいらないと豪快に笑われた。

冒険者ギルドの外にダンとカラの気配が無いことを確かめて、さっさと町外れのダンジョンへ向かった。

私の方が2人にかち合わないように警戒してる。

これって何か違う。


予想した通り、ダンとカラはダンジョンの前に居た。

軽く頭を下げて挨拶する。

ダンが近寄ってきて一緒に潜りたいと言った。

顔の前で、ノーと手を振る。

「俺たちだけじゃ心細いし。あんたも潜るんだろ?一緒に連れていってくれよ」

ノーと繰り返してダンジョンに入ろうとしたら、ダンが私の二の腕を掴んで引き留めようとした。

グンと腕を取り返して睨む。

「よしておけ」

そのやり取りを通りすがりに見ていた中年の冒険者がダンの肩に手を置いて止めてくれた。

「女が居なきゃダンジョンも潜れないのか?」

「俺たちダンジョンは初めてだから頼んでたんだ」

「あれは頼んでたんじゃなくて押し売りだろ。ドロップ品が欲しいから一緒に連れてけってなぁ身内なら分からないでもないが、身内なのか?」

ダンが馬車で親切にしてくれたからとか、もごもご冒険者のおじさんに言っていた。

「それに、この装備も彼女がくれたんだ!」

おじさんは問うように私をみたから、読めますようにと願いながら夜中の狼の襲撃と装備を渡した経緯を書いて渡した。

「なるほどな」

メモを読んでおじさんが頷いた。

「ここに潜るのは渡した装備をもう1つ手に入れるためって感じだな」

頷くと頷き返された。

「ソロで潜れるのか?」

前回もソロだった、と書いて頷く。

「それなら先に行きな。この坊やには俺らがきっちり初心者のいろはを教えとくさ」

お礼の気持ちを込めて頭を下げた。

おじさんは私が喋れない事に一言も触れなかった。

こんな気持ちの良い人もいるんだ、と思ったら胸がほわんと暖かくなった。

入口は開いていた。

え?何で?

よく見るとダンジョンの入口に唐草模様みたいな魔方陣の紙が貼られていた。

貼ってくれた人に感謝。

このダンジョンは3階層。

初心者ダンジョンなのでボス部屋まではトラップも無し、出てくる魔物も1階はスライムや草系、たまにゴブリンが出てくる程度。

2階はゴブリンの出現率が上がって1度に出てくる数も3匹とかに増える。

3階は装備を着けたゴブリンと木の人形が出てくるようになるんだけど、魔法を使ってこないから楽勝。

ボス部屋の住人はゴブリンの剣士バージョン。

防御も低いから剣でも倒せる。

私はまだ剣に自信がないから、前回と同じく弱点の氷魔法を使った。

ポーーン。

レベルアップの音がした。

ステータスを見ると、やっとレベル3。

上がるの遅すぎだよ。

宝箱の中はダンに渡した装備と同じ物が入ってる。

ここからは未開の隠しボス部屋への道。

怖いけど、ここまで来たら挑んでみたかった。

辺りを見回して、装備を最上級に変えて挑む。

トラップの解除は教えて貰ったのに手間取って、狭まる壁に潰されそうだった。

そしてボスはゴブリンキング、背中に嫌な汗が…。

まず剣士の弱点の氷魔法、ダメージが入らないから炎に代えた、けどダメ!

風と土も使ってみた。

かまいたちも頭上から石を落としても効果は無いし、ゴブリンキングは迫ってくるし。

半べそで電撃を放った。

焦げた臭いがする。

ポーーン。

ステータスを見たら、レベル5!

ゴブリンキングでレベルが2も上がった!!

ドロップは…黒い革の鎧。

あ…ここも1個づつ装備を集めるダンジョンだ。

がっかりしながら、奥の魔方陣から外へ出た。



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