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滑里乃咲哉①うまい話をさがしても テレビをつける

「ああ…また面接に落ちた…」

二十歳になったら出ていけとみてくれだけ古風な両親に言われている。

ただ本当に古風なら女は働くな、って言われていただろう。


ああ、働きたくないもうすぐ二十歳の誕生日が来ちゃう。


あれは一週間前の面接でのこと。

受けたのは無難なコンビニのアルバイト面接。


『この会社を志望したのはなぜですか?』

『はい、私は…』


志望した理由を聞かれてもまともな考えは浮かばない。

志望理由なんて結局お金しかないのだ。

お金がいらないなら働くはずがない。

たまたまアルバイトを募集していたから。

そんな理由はまず採用されないから飲み込んで、自分を偽った。

高卒で免許ナシ、資格ナシ、バイト経験ナシの私はこれまでに五回面接を受けて全敗。


やる気のなさそうなギャルでも受かるような場所のはずなのにそれすら受からない。

「ケータイいじってるチャラ男とツケマギャルに負けた…緊張せずスラスラ話せたのになあ…」

面接に行く回数が増えたので皮肉にも初の面接のときのような緊張はまったくなくなった。

おかげで言葉につまることもなく、面接官の質問にも受け答えは完璧にできていたとおもう。


「このままじゃホームレス決定だよ!!」

・・・・・

とある会社では会長による次の役割を決める会議が開かれていた。


「会長、ご決断を」

最期の決定をする会長はすっと立ち上がり皆の前へ出る。

「我が社は…ぐっ…」

すると突然会長が胸を抑えながら座り込みそのまま倒れてしまった。

「会長!?」

「救急車!!救急車を!!」


・・・・・・


「もう次に落ちたら死ぬしかないか…」

{たった今入ったニュースです今日の正午、天夢川会長が亡くなりました」

もう腹を括るしか、なんて考えていたら耳を疑うニュースが聞こえてきた。


いまの訃報は手広く事業を拡大して来た有名会社の会長ではないか?

こうしちゃいられない、お葬式にいかなくちゃ。



―――――このときの私は会長の死が私の人生を変えてしまうとは夢にも思わなかった。


――――――


次の日野次馬気分で会長の通夜に参加した。

身内に死人が出たことがない為、初めて参加した通夜、まるでここは別世界のような感覚を覚えた。


少しは悔やみの気持ちはある、けれど私の本当の目的はお葬式の食事である。


皆が沈んだ中で私はひたすら美味しそうなものを探した。

やはり和食が中心であまり食べたいものがない。


端にあった肉を取ろうとすると、正面にいた相手と箸がぶつかりそうになりあわてて避けられた。


「ごめん、まさか葬式で肉を食べる強者がいるなんて考えてなかったよ」

人の良さそうな男性は箸を引っ込めた。

葬式で肉類を食べようとしていた変わり者には違いないので返事に困る。


互いに一枚ずつ肉を摘まむ。

安い肉とは違う気がしする。

さすがは大起業の通夜の食事だ。


「まさか会長が亡くなるなんてねえ…」

「お悔やみもうしあげます」


「早すぎるだろ…くそっ」

俺が社長になって爺さんを家から追い出すつもりだった。


なのに、俺はまだなにもできていないのに、どうして―――

・・・・

男性と肉を食べていた私は彼が去った後、食べなれない高級なお肉で具合が悪くなり化粧室にいっていた。


聞きたくないまっくろな会話が聞こえてきてしまった。

「ようやくあの老いぼれが消えたわ」

それ会長のことだよね?

「あとはあの孫が消えれば…」

「そう思って今日のお肉に仕込んでおいたのよ」


え、あのお肉に毒という名のスパイスでも混ぜ込んだの?

「こんな時に肉を食べられるのは空気の読めないあの子だけだものね」

どうしよう平然と食べてたよ。

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