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Minority Whisper
なんてことはない
ーーそれは演奏というよりも雑音の集合体だった。
時折携帯で歌詞を確認する金髪肥満体のボーカル、回りの音をかき消す全くリズムの合っていないギター、演奏中に何度もアンプのツマミを弄っては首をかしげるベース、ステージ上の惨状に魂を抜かれたようにうなだれながら淡々と演奏するドラム……
時計を確認すると5分程度しか経過していないが、聴いている側からすれば永遠にも思われた演奏が終わり、ステージ上の四人に申し訳程度のまばらな拍手が送られる。
それが気に入らないのかボーカルが足元のスピーカーを蹴って舞台袖に引っ込んだ。
体育館に貼られた新入生歓迎会の横断幕が、ただただ虚しい。
演奏前に『ロックは魂』などと喚いていた彼らの練習が素人から見ても不十分であることと、噂通り軽音楽部とは名ばかりで、実質ただのカラオケ同好会であることはわかった。