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やっぱり私以外にも弄られてるんだね後輩君

ーーいつものように、雑談している最中に、ふと何かを思いだしその事を話し出す先輩。



「ーーそういえばさ、たまに『自分は生まれてこのかた、嘘をついたことがない』って言う人がいるでしょ?あれってどう思う?」


「どう思うも何も、そのセリフを言ってる時点で嘘ついてんじゃんって思います」


この事に、思うところがあるのかはっきりと断言する。


「私もそうは思うけど、そんなにはっきり断言するって事は、後輩君はその事に何か思うところでもあるの?」


後輩君の断言を不思議に思ったので率直に聞いてみる事にした。



「……あるには、あるんですが。……これを言うと大抵の人はひねくれてるって言われるので、あまり詳しくは」






「言いなさい」




言いたくありません。と言葉を紡ごうとしたら、その前に、凄味をきかした口調の先輩に割り込まれた。



こうなると、何を言っても無駄か、と一つため息して話すことにする。




「……単純な話ですが、生まれたばかりの赤子が覚える事の一つが嘘泣きです。……なのでその人に自覚があろうがなかろうが、等の昔に嘘をついたことがあるんだから、今更何を言ってんだって話です」




「…………」




「…………」




互いに見つめあって、数秒間の沈黙が続き、ようやくでた言葉が、




「ーーーー後輩君………ひねくれてるわね」




流石に今回は後輩君を弄るためでもなんでもなく、率直に思った感想だった。



「……だから、言いたくなかったんですよ」




予想してたとはいえ、そうはっきり言われると辛いものがある。




「ひねくれてるとは思うとはいえ、あながち間違ってもないところが、なんとも言えないわねぇ」



「そうですよ、あいつらは意外と強かなんですから」



先輩に肯定してもらったからか、勢いづいて普段思っていて言えないことこともぶちまけてしまう。






「……後輩君、赤ちゃんに恨みでもあるの?」



いつもの後輩君とは違って、ふつふつとしたモノを感じる。



「……ただの天敵です」




それを聞いて、赤ちゃんにも私みたいに弄られてるんだろうなぁ、と察して、ついつい生暖かい目で後輩君を見てしまう。



「ーーそれで、赤ちゃんが強かってどういうこと?」



とりあえず、今はそこを深く追及せずに話を進めることにした。




「ーーあいつらは、本能に忠実だから好みの相手かどうかもはっきりしてるんです」


「例えば?」



先輩の疑問に、少し考えてから体験談を話はじめる。



「……そうですね、例えば親戚の集まりであいつらは注目の的です」




「まぁ、そうね。大抵の人は好きだし」



「そうなると、当然何人かはその子を抱いてもいいかと聞いてくる人がいますよね?」




「うん、私もその1人かな」



「……問題はそこからです。あいつらは好みの相手なら喜んで行くでしょうが、そうでない相手には泣いて抱かれたくないことを周りに訴えます。ーーつまり!あいつらはあの年で自分の好きなタイプの人を自覚しているわけです!」


話していくうちに、熱がこもってきたのか、演説するかのように、握りこぶしを掲げて語りだす後輩君。




「わ、分からなくもないけど、流石に飛躍しすぎじゃない?」



あまりにもあつく語りだす後輩君をみて、若干引いている先輩。


「いいえ!あいつらは、美男美女が大好きに決まってます!」


「後輩君の赤ちゃんに対する熱い思いも分かったことだし、そろそろ話を戻すわよ?」


「え?まだまだ話してないことは沢山ありますよ?」


「い・い・わ・ね?」


これ以上話を続けさせてたまるかと、威圧的に命令する。


「了解しました!!」


反射的に、敬礼付きで答えてしまうヘタレな後輩君。


「で、話を戻すけど、後輩君が言ったことを本人が納得すると思う?」


「するどころか、怒る人もいるでしょうね」



「じゃあ、他に本人も思わず納得しちゃうようなうまい返しはないの?」


「他にですかぁ」



しばらくの間、考えてはみたが、




「……思いつきませんね。その人の私生活をみれば、思いつくかもしれませんが」


「やっぱり、無理かぁ」


後輩君なら、先ほどみたいにひねくれたことを思いつくかと思ったが流石に無理だったらしい。



「ーー出来るとしたら、今後嘘つく確率をあげさせるだけですかね」


何とか代替案を捻り出す後輩君。



「どうやるの?」



「その人にとって『嘘』をつくということは悪い事だと思うから、そういう事を言うんだと思うんです」



「まぁ、基本的にはそうでしょ」



「そこで、『嘘』をついていい場合があることを説明するんです」


「そんなにうまくいくの?」




「さっきの話に少し戻りますが、赤子が嘘泣きをするのは、話すことができないから他のことで注目を集めるためにやっているコミュニケーションの一つだと思うんです。だから、その人にも、『嘘』をつくことで円滑に物事が進むことがあると話してみるといいんじゃないかと思うんです」



「確かに、そんな話をしたらうまくいくかもしれないね」




「でしょ?じゃなきゃ、友人や恋人をサプライズで驚かすなんていう、楽しい嘘すらつけなくなっちゃうじゃないですか」





「それは確かに。そういう嘘なら、つかれる相手も嬉しくなるわね」



先輩が納得してくれて、一安心する後輩君。



「ーーじゃ、来月のクリスマスは期待してるね、後輩君」



「へ?いや、ちょ、まっーー」





「ーーしてくれないの?」




上目遣いに加えて目をうるうるさせて後輩君を見る先輩。



「ーーっ、……普通にクリスマスを二人で祝うんじゃ駄目なんですか?」



「えー、さっきの話を聞いたら、サプライズの方がいいって思うじゃない」



「た、確かにそうですが、こういうのは相手が知らないからやれるもので、やると知っている相手に対してやるのは難易度が高すぎると思うんですよ」




「その難易度を越えてくれると、信じてるよ♪」





ーーあぁ、何時ものように、既に決定事項なんですね。



なら、期限は一ヶ月もあるんだから、今から考えれば何とかなるかもしれない。




「……分かりました。思わず先輩が『後輩君、大好き!!』って言っちゃうくらいのサプライズを考えときます」



「ふふっ、本当に言わせてよ?後輩君」



盛大に空回りした結果、スベッたサプライズになる光景が見えたが、それはそれで面白いことになるんだろうなぁ、と来月が楽しみで仕方ない先輩。




「さて、話疲れたし、そろそろ帰ろっか」



「そうですね」




「あ!最後にもう一つだけ質問があるの」



「……嫌な予感がしますけど、何ですか先輩」




「嘘泣きの話が生々しかったけど、あれって実体験?」




「……そうです。親戚の子を預かってる時に、散々嘘泣きされて駆けつけた親や親戚の叔母にこってり絞られました」




「ーーっぷ、あっはははは!だから、天敵な訳ね。」




赤ちゃんにまで弄られている後輩君を想像して思わず笑ってしまった。



「いつまでも、天敵じゃ数年後に困るわよ?ね、お父さん?」




「ーーえ?い、今のどういう意味ですか、先輩!?」




「ふふっ、どういう意味でしょうねー。ほらっ、さっさと帰るわよ」




「ま、待って下さい、先輩。さっきのことについて、もう少し詳しく説明をーーーー」










ーーーークリスマスの話を書くかは分かりませんが、とりあえず今回の『Sよりな先輩と振り回され気味な後輩君』は御仕舞いです。




やっぱり話を考えるのは難しい。

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