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後輩君はアリ?ナシ?

ーー授業も終わり、先輩が来るまで何をして潰そうかと、ぼんやり考えていたら、扉の開く音が聞こえ、



「よしよし、今日もいい子に待ってられて偉いわ、後輩君」


まるで保育園に預けた我が子を誉めるかの様にそんな事を言い出す先輩。そのまま頭をぐしゃぐしゃと撫でてきそうな感じだ。



「……先輩は俺のお母さんですか」



先輩のお母さん姿は似合いそうだが、それが自身のお母さんになるのは勘弁願いたい。






「そんなわけないじゃない、私は後輩君の想い人よ?」



サラッと、予想の斜め上を言われて思考が停止する。




「ーーっ、い、いきなりなに恥ずかしいこと言ってるんですか!?」



顔が真っ赤になっている見られたくないと顔を反らしつつ言い返すと、




「後輩君は、私が想い人って事が恥ずかしいことなんだー。ショックー」



ショックを受けた表情どころか、これからどんな事を言ってくれるのか期待してるよ、と先輩の目が語っていた。


そうなると、後輩君も先輩の期待に答えるべく赤面したまま、



「……そんなわけないですよ。先輩が俺の想い人って事は俺の誇りです」


何とか、今の自分が言える精一杯の事を言って、ますます顔が赤くなってると思い、先輩の顔を見れず、先輩に背をむけてしまう。






「…………」



まさか、こんなにストレートに言われるとは思わず、後輩君に負けず劣らずで顔が真っ赤になる先輩。



「?……先輩?」


絶対にからかわれると思っていたら、なかなか先輩がなにも言ってこないのを不思議に思い振り返ろうとしたら、



「ちょ、ちょっと待った!」



まだ、火照ったままの顔を見せたくないので必死に止める。



「ど、どうしたんですか?」


慌てているっぽい先輩が気になって、振り返りたくなるが、何とか踏みとどまる、先輩の言うことは基本的に絶対な忠犬後輩君。



「ちょうど、後輩君に試したいこと思い出したからそのままヤっちゃおうかと思って」


ようやく落ち着きを取り戻し、今回するつもりだった事は、今の状態が都合がいいので、後輩君が振り返るを止めることにした先輩。



「あ、あの変な事しないですよね?」



このままだと先輩が見えないので、何をされるのか分からす、不安で仕方がない後輩君。



「大丈夫、大丈夫!どちらかというとイイコトかな」


『まぁ、正面からやると恥ずかしすぎて無理なんだよねぇ』と言った本音があるが、そんな弱味を後輩君に知られてたまるかと、意地でも本心を隠す先輩。


「……先輩のイイコトは俺には悪い事な気がして不安です」



普段の先輩を知ってるだけに、不安を解消しきれない。



「酷いわねぇ、先輩の言うことを少しは信じなさいよね」


呆れつつも、少しずつ後輩君に近づく。



「分かりました。覚悟決めましたんで、好きにやっちゃて下さい」



後輩君の許可が出たので、実行するために後輩君の首もとに顔を近づく。



「せ、先輩!?な、なななにしてんですか!!」


慌てて距離を取ろうとするも、


「待ちなさい!!まだ匂い嗅いでないんだから!」


すぐ先輩が手を伸ばして、後ろから抱き締められるかたちになってしまった。



「嗅ぐ!?何でそんな事してんですか!」


このまま暴れるとますます不味いことになりそうだと感じて、諦めて先輩にされるがままにした後輩君。


「……うん、もういいわよ、後輩君」



言われて直ぐに距離を取る後輩君。



「で、なんでこんなことしたんですか?」


やや、非難混じりの目で先輩に訴える。



「今回の話すつもりだった話題には必要な行為だったのよ」


そんな非難など知ったことかと、話を進める先輩。



「せめて、なにするか言ってくれたら、動揺せずに堪能できたのに」



「そうさせないために、不意討ちでやったに決まってるじゃない」


「ですよね。で、話を戻すとして結局なんだったんです、さっきのは?」


引きずってしょうがないので、切り替えて話を進めることにした後輩君。


「その前に、後輩君は運命の赤い糸って知ってる?」


「そりゃ、知ってますけどそれがどうしたんですか?」


話の脈絡がわからず、首を傾げる後輩君。


「それに、ある意味近いのがあるのよ」


勿体ぶって少しずつ話のネタをだす先輩。


「……それがさっきのに関わってくるのか」


ようやく話の方向性を理解して、少し焦りだす後輩君。



「後輩君は分かったみたいね。聞いた話だと恋愛遺伝子って言ってね、匂いで相手の事がアリかナシかわかるんだって!」


それを聞いて心底焦りだす後輩君。


「……つまり、その話が本当だとすると、先ほど匂いを嗅いでしまった先輩は俺がアリかナシか分かってしまったと?」


「その話が本当ならね。後輩君はどっちだと思う?」


どう答えたら正解か分からないから、ここは直感で答えることにした。


「………どっちでもいいです」


「え?何で?」


「だって、アリでもナシでも俺達の気持ちが変わらなかったら、なんの問題でもありません。だからどっちでもいいんです」


「……なるほどね」


「そもそも、恋愛に遺伝子なんて小難しい話なんて持ち込まれても俺にも難しすぎてわかりませんしね」


頬を掻きながら苦笑する後輩君。


「そっか、じゃ、後輩君はアリかナシかの答えはいいよね」


予想してた反応ではなかったが、いいことが聞けて満足気な先輩。


「…………アリだったのに聞かなくても本当に良かったのかな、後輩君」


後輩君には聞こえないほど、小さく呟く。


「さて、今日はそろそろ終わりにして帰りましょうか」


いつの間に帰り支度を終わらせ、先輩に帰宅を促す後輩君。


「そうね、帰ろっか」


後輩君は、今日は先輩に抱きつかれてラッキーだったなぁと考えて、



先輩は、今日は後輩君の色んな一面が見れて良かったなぁと、


考えてる事は違っても、出てくる登場人物はお互い相手の事。



何だかんだ相思相愛な先輩後輩であった。







これで今日の『Sよりな先輩と振り回され気味な後輩君』は御仕舞いです。

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