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女装剤(ある女騎士の事情)  作者: 嬉々ゆう


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8/24

第8話 騎士団長、ビキニアーマーに散る!

ついに完成した、グラムの新しい装備。

しかし、工房で待っていたのは――

想像を遥かに超える“仕込み”だった。


第8話は、

装備と過去と陰謀が交差する回。


 ・⋯━☞騎士団更衣室☜━⋯・


  ••✼••翌日の訓練終了後••✼••

 


「グラムちゃ~ん!

 工房のファブロさんの使いの人が

 呼んでたわよぉ~!」


「「?!……」」



 先輩メイドが、俺を呼ぶ。

 どうやら、ファブロ工房の使いの者から、

 「グラムレス用軽装アーマーの完成」

 の知らせが来たらしい。



「おっ! ついに完成したか!」


「「「「おおおおっ!」」」」


「ほほぉ? そうか!

 よし、行くぞグラム!」


「なんでお前も来るんだよ?」


「そんな水臭いことを言うなよ~

 俺たち裸の付き合いじゃいか!」


「誤解を招くような言い方するなよ!!」


「「「「ええええ~~~!!」」」」


「わっ! なんだ?」


「団長ぉおぉおぉ~~~!!」


「俺という者がありながらぁ~!」


「誤解だってばぁ!!」


「「「「団長おぉおぉ~~~!!」」」」


「ええいっ! うっとうしい!!」


「相変わらず、モテモテね♡」


「嬉しくねぇーしっ!!」


「……ふっ」


 

 なんで俺は、こんな必死になってんだ?

 どうせいつものラストの戯言だ。

 たとえ誤解されても、痛くも痒くもない。


 そんなラストは、壁に背をもたれて、

 嫌な流し目でオレを見て、ニヤリとする。

 本当にムカつくヤツだ!

 でも、根っこから憎めないヤツでもある。

 まったく、どう対処すればいいのか分からない。


 今回も、なぜだか俺に付いて来ると言う。

 なんだってんだ!!


 宿泊棟でも、なぜだか部屋は隣り合わせ。

 食堂でも、なぜだか隣の席に座る。

 出勤時も、なぜだか一緒に出る。

 更衣室でも、なぜだか隣に来る。

 訓練のときも、なぜだか俺ばかり相手をする。


 なぜだか、なぜだか、なぜだか、ばかりだな。


 風呂場でも、なぜだか一緒にはいる。

 いやいや、今は違うぞ!

 一応、今の俺は女だから、メイドたちの風呂場を使わせてもらっている。

 初めて入ったときは、恥ずかしさでサウナに隠れるように閉じこもっていたら、のぼせてしまって卒倒!

 それを知ったラストが……


「心配だから、俺が一緒に入る!!」


 と言って喚き散らしていたが、メイドたちに袋叩きにされてたっけ?

 とにかく、なぜだかラストのヤツ、俺から離れてくれないのだ。

 心配してくれるのは有り難いが、もう少し距離を置いてほしいものだ。

 


「グラム! 」


「!……なんだ? ラスト」


「やっと、お前の鎧が完成したようだな」


「ふふん! そうだな、待ちかねたぜ!」


「じゃあ、仕方がないな!」


「あん? 何が仕方がないんだ?」


「そりゃあだって、近い将来俺の奥さんになる人の正装が完成したんだ。

 近い将来の旦那様が行かない訳にはいかないだろう?」


「はぁい? 寝言は寝てから言えよ?

 近い将来、近い将来って意味わかんねーよ!

 それに、無理して来なくてもいいんだぞ?

 お前も忙しいだろうから……」


「いいや! 行くね!

 是非、一緒に行かせてくれ!

 いや、行かねばならんのだ!」


「そんなに、力まなくても……

 ってかお前、キャラ変わってないか?

 はぁあぁあぁ~~~」



『最近、コイツの扱い方が分かんねぇよ……

 きっと、俺が他の野郎たちに絡まれないようにって、心配してくれてるんだろうけど……』



 グラムレスは、ラストの気持ちに気づいていない。

 いや、気づかない振りをしているのかもしれない。



「はいはい 好きにすればいいさ!」


「ふっ……とおーぜんだ!」


「「「「ズルい!ズルい!!

   ぶぅ~!ぶぅ~!!」」」」


「副団長! ズルいっすよ!」


「うるせぇ!」


「「「「!!……」」」」

 (タジ……)


「……人選を誤ったかな?」



 実はラストには、副団長を任せている。

 今の俺がこんなだから、実質空いたスポットとなるため、団員たちを纏める者が必要だ。

 もちろん俺は、団長の座から引く気はない。

 始めはこのまま、ラストに団長の座を譲りたいとも思ってはいたが、今俺が身を引けば、騎士団から完全に席を抜かれてしまうかもしれない。


 それだけは阻止しなければ!!



 ・⋯━☞ファブロの工房☜━⋯・



 そして、俺とラストはファブロの工房へ。



「よう! 来たかい できてるぜ!」


「はっはぁ~! 待ってたぜ!

 ……って、なんだこりゃあ?!」


「うわあっ!……これはまた……(喜)」


「はっはっはっ! どうだ?

 こいつぁ~すんげぇーだろ?

 まねきん……っていうそうだがな?

 魔女殿が教えてくれたんだが、嬢ちゃんの体型にピッタリに合う物を作りたいなら、絶対に必要だってんで作ってみたんだが、我ながらよくできたと思う!」


「あわわわわわ……(震)」


「すげぇーよ! おやっさん!」


「だろう? んでな?

 コッチは、ビキニアーマーというらしい」


「…………(震)」


「んっひっひっ……」

 (ニヒルに笑う鍛冶屋のオヤジ)


「へっへっへっ……」

 (ヨダレ垂らして笑うアラサー野郎)


「なっ……なっ……何だこれは……」


「「ぁあん?」」


「なんなんだこれわぁーーー!!」



 それは、見るに堪えないモノだった。


 グラムレスの体型にピッタリ合わせるためとは理解できるが、等身大のグラムレスそっくりな人形のようなもので、それに着せられていれたモノが、どうやらファブロの作った鎧?らしい。


 こんなの鎧じゃねえーー!!



「どうだ、嬢ちゃん 気に入っただろ?

 早速、着てみるか?」


「うんうん!(喜)」

 (うずうず……)


「こん……」


「「うん?」」


「こんな紐みたいなの、着れるかあー!!」


「「はぁ?」」



 それは、いわゆる「ビキニ水着」だった。

 だがしかし、この世界には「水着」の概念がなく、着るものを着て泳ぐなどという文化もない。

 泳ぐときは、男も女も真っ裸だ。


 それより、「マネキン」とは言うが、あまりにも肌の質感が生きた人の肌っぽい。

 たぶんファブロは、「マネキン 」の意味を理解していない。

 今、グラムレスの前に立つマネキンとやらは、生きているとしか思えない!

 鉄以外に、何を作ってやがるんだ!!

 もしかして、グラムレスに似た女性を捕まえてきて、装備させてるのでは?と思うほどにリアリティがハンパない。

 大魔女ラカの提案だと言うが、「マネキン」だの、「ビキニ水着」だのって、彼女はいったい何を考えているのだろうか?

 それ以前に、彼女はいったい何者なのだろうか?


 それにしても、気味が悪いくらいグラムレスに似ている。



「こん、こんなの着られねぇよ!

 だいたい、保護部位がやたら少ねえーじゃん!

 せめて、ライトアーマーはないのかよ!!」


「ああ、あるぜ」


「あるのかよ!!

 だったら、それを出せよ!」


「チッ……余計な物を作りやがって」


「あん? 今、何か言ったか?」

 (ジト目でラストを睨むグラムレス)


「別に!」

 (サッ!と顔を背けるラスト)


「ほら、コイツだ!」


「おおおー! あるじゃん! あるじゃん!

 こーゆーのが欲しかったんだよ!」


「だろ?」


「ケッ!……」


「よっと!」


 バサッ!


「「!!……」」



 ファブロは、そう言って被せ布を捲った。

 そこには、よく女騎士が装備するような、軽装アーマーを装備した人が……いや、俺そっくりのマネキンが立っていた。


 なぜだか、この軽装アーマーを目にしたとき、ズキン!ときた。

 なんだかとても懐かしいような・・・

 すると、ふと思い出したことがあった。


 ………………

 …………

 ……


 ••✼••追憶••✼••


 ずいぶんと前の話しだが、俺がまだ15歳で冒険者だった頃。

 まだまだ駆け出しだった俺を助けれくれた人がいた。


 俺がソロで、リーフ村付近の「エアーツダンジョン探索」をしていたときだ。

 冒険者となって、たったの二カ月でレベル30を超えて、初心冒険者の「クリスタルクラス」から、一階級上の、駆け出し冒険者「アメジストクラス」へと昇格していた。

 周囲から、「若手のホープ」と持て囃され、俺は調子に乗っていた。

 なので腕に自信があったのもあり、下級の魔物なんてそこらの森に湧くフォレストウルフと変わらないと。

 だが、ダンジョンに入ってすぐに、魔物たちに囲まれてしまった。

 相手は、ワーウルフだった。


 ワーウルフは、武器を持つ魔物だ。

 おそらく、冒険者の物を奪って使っていたのだろう。

 コロニー化した魔物には、上級種のリーダーがいる。

 ソイツに、足をやられたのだ。

 動けなくなった俺は群がるように囲まれて、袋叩きにされていたところに、誰かがいつの間にかやって来て、颯爽とワーウルフのコロニーを殲滅したのだ。

 

 その人こそ、女騎士だったのだ。

 

 俺は、その女騎士に憧れた。

 いや、惚れたんだと思う。

 いつか必ず彼女よりも強くなって……


『俺、いつか必ずあんたよりも強くなって迎えに行くから!』


 そう彼女に告白した。

 そのとき、彼女は笑ってくれた。

 それは、俺と彼女との約束だった。


 でも……

 彼女を家に迎えに行ったとき、もう彼女はいなかった。


 彼女は、俺が騎士になったその年に騎士を引退して、髪も瞳の色も言葉も違う誰かと結婚して、この国を出て行っていまった。


 どうして俺を、待ってくれなかったのか。

 あのとき、迎えに行ったのに……


 そして、しばらく経って気づいた。

 彼女は最初から、俺なんかに興味などなかったのだと。

 彼女はあのとき笑ってくれたけど、返事なんてしていなかったじゃないか。

 勝手に一人で勘違いして、勝手に一人で落ち込んで……


 今となっては、ほろ苦い想い出だ。

 でも、今でも彼女に憧れの気持ちは残っている。

 そんな彼女が増備していた「軽装アーマー」。

 

 そっくりなんだよ。

 そう。彼女が装備していた軽装アーマーにさ。


 ••✼••追憶終わり••✼••



「お……おい、何泣いてんだよ?」


「へっへっへ そんなに嬉しかったってか?」


「ふぇ? あ、ああああれれぇ?」



 なんで涙なんて流して泣いてんだ?

 やっぱり、女になってから気持ちも女に近づいてるのか?

 あー! いかんいかん!!

 こんな調子じゃ、部下たちに笑われちまう!



「ちっげぇーよ! 鉄の焼ける煙が目にしみただけだ!」


「……そうか?」


「……?」


「それより、俺、こっちのアーマーだけでいいわ!」


「「なんでっ!?」」


「なんでって、これがあれば、そんな紐みたいなの要らねえだろ?」


「「そんなわけねぇ====!!」」


「なんでハモってんだ!?」



 ラストとファブロは、眉間にシワを寄せ、歯をむき出しにし、まるで便秘で力んでんのか?て思わせるような真っ赤な顔して力いっぱい叫ぶように言う!



「なっ…なんなんだよ!? こえぇーーよ!」


「言っておくがな?」


「な……なんだよ?」


「このビキニアーマーをインナーに着なきゃ、軽装アーマーは装備できない仕様なんだぜ!」


「なっ……………………

 ぬわあああああにぃいいいいいいいー!!」



 どうやら俺は、ファブロと大魔女ラカに、嵌められたようだ。


読んでくださり、ありがとうございます。


グラムの新しい軽装アーマー。

そこには、ラカとファブロの“悪ノリ”と“本気”が詰まっていました。


そして、グラムの胸に残る

ほろ苦い過去の記憶。


次回、ついに――

あの装備を着るときが来るのかもしれません。


お楽しみに。

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