第6話 騎士団専属鍛冶師ファブロ
女体化したグラムが訪れたのは、
騎士団専属鍛冶師・ファブロの工房。
腐れ縁の鍛冶屋と交わす軽口、
そしてラカが残した“謎の注文”。
第6話は、
新しい装備と伏線が動き出す回。
・⋯━☞騎士団専属鍛冶師工房☜━⋯・
カァーーーン!
カァーーーン!
ガタガタ……じゅうぅうぅ~~~
ここは、王宮騎士団専属鍛冶師
「ファブロ・カッティーボ」の工房。
ドワーフにしては、今のグラムレスよりも
一回り大きなガタイをしたニヒルなオヤジだ。
「おやっさぁーん!」
「ああん? ああ、グラムの嬢ちゃんかえ?」
「嬢ちゃんは、やめろ!!」
「ケッ! 違ぇねぇだろうが」
「んぐぐっ……」
「で? なんの用だ?」
「え? ああ、俺の例のヤツはできてるのかな~って、チョイと様子を見に来たんだよ」
「ふん! お前さんが考えるような、
メスガキのお遊びじゃねぇんだ。
そうそう簡単にできるわけがねぇだろ!」
「メスガキも言うな!……
まあ、そうだよなぁ……
200歳を超えるあんたに比べたら、俺なんて」
この男、鍛冶師ファブロ・カッティーボという。
グラムレスとは、男の頃からの腐れ縁だ。
元々は、流れ者の「はぐれドワーフ」。
街外れの路地裏の隙間に急拵えで作ったような、小さな工房で槌を振っていたのだが、とにかく腕が良かった。
グラムレスがファブロの腕に惚れ込み、何日も酒を持ち込んでは杯を交わし、ほぼ強引に騎士団へ誘い込んだのだ。
その腕を見せた途端に宰相にもアッサリ認められ、今では騎士団の専属の鍛冶師として工房まで与えられている。
ファブロとしては、この地に流れて来た理由も聞かないで住む場所も安定した職も与えてくれたのだから、グラムレスには感謝しきれないほどの恩があるのだ。
なので、よほどのことがない限り、ファブロはグラムレスの望むことなら聞いてくれるのだ。
グラムレスは、時々この工房へ足を運んでいた。
なにしろ、ファブロの槌を振る、鉄を叩く、
火花が散る、そして音のリズム……
理由までは自分でもよく分からないが、
とにかく好きだった。
いつしかグラムレスは、体育座りで、
ファブロの仕事風景を眺めていた。
カァーーン! キキン!
カァーーン! キキン!
「………………」
(少女漫画の瞳で見つめるグラムレス)
「なんだ? 見るのがそんなに面白えか?」
「うん! 面白いねえ!」
「ふん! 物好きな嬢ちゃんだ」
「だから! 嬢ちゃん言うなってぇ!
って言うか、俺が元男のグラムレスだって、
分かってて言ってるだろ!!」
「ふん! どうだかな」
「はあ? なんだよそれ? 意味わかんねー
もう、もうろくしてボケちまったか?」
「……ギロッ!」
「にゃ!……ごめんなさい(汗)」
「……ふん」
「………………怖っ(汗)」
流石はのグラムレスも、ファブロのニヒルで貫禄ある睨みにはビビるってもんだ。
おしっこチビリそうになった。
特に、女になってからというもの、少々気が弱くなったのではないだろうか?
「……」
「………………」
「……うん?」
なぜだかファブロは手を止め、
グラムレスをジィーっと凝視する。
「………………………………」
「………………なんだよ?」
「……又巻」
「またまき? なんだそれ?」
「……ぱんち? んん? ぱんつ?」
「パンツ?」
「……見えてるぞ?」
「うぃやぁ?!」
パタパタッ……
グラムレスは、慌てて立ち上がり、
スカートを抑えた。
「べっ、別に平気だし!
別に見られても減るもんじゃねぇし!」
「チッ!……黙っておけば良かったか」
「何言ってんだ、このスケベじじぃ!!」
「ぬははははっ!
今更、恥じる仲じゃねえだろ!
風呂にも一緒に入ってたんだ。 だろ?」
「チッ!……今じゃ状況がちげぇーだろ」
「しかし、勿体ねぇ……
実に、勿体ねぇ……」
「何がだよ?」
「お前は背が高い方ではなかったが、
ナニは、なかなかのモノだった……」
「なっ、なん、何の話をしてんのだよ!」
「ふん! みなまで言わせるんじゃねぇよ」
「そ、そ、そんな……
もうどうだっていいだろ! 今更……」
「……そうか。今更か……そうだな。
そうかもしれんなぁ……」
「……」
そう言って、ファブロは少し…
寂しそうな顔をして、また槌を振る。
カァーーーン! キキン!
カァーーーン! キキン!
「……………よぃしょ」
(また座るグラムレス)
カァーーーン! キキン!
カァーーーン! キキン!
「……………………」
グラムレスは、真っ赤になった鉄を見つめながら考えていた。
人は肉体を鍛えれば、自ずと心も引き締まるという。
逆に、肉体が萎えれば、心も萎えるのだろうか?
俺の体が女になってしまった……
なら、心も女になってしまうのだろうか。
漠然とした不安に苛まれるグラムレスだった。
カァーーーン! キキン!
カァーーーン! キキキン!
じゅうぅうぅうぅ~~~……
「ふぉおおおお~~~」
「……んんん そう言えば」
「ん? なんだ?」
「昨日、あの妖艶の魔女殿がウチへ来たぞ」
「えっ?! 魔女殿が?」
ファブロが言うには、先日、ここへ大魔女ラカが来たという。
いったい、なんの用だったのだろうか?
「ううむ なんでも、また新しい魔導具開発に、ちょいとワシに知恵を借りたいってな!」
「ほほお? それは、どんな?」
「いや……詳しいことは分からねぇが、 ワシが今鍛えてるモンを話したら、ヤケに興味が湧いたらしくてな?
知恵を借りに来たのも忘れたのか、アレコレと注文をつけてきやがった」
「はぁ……注文ねぇ……」
「まあ、ワシも面白いと思ったんでな!
その、案っつーそいつに乗ったんだがよ?」
「……イマイチ言ってる意味が分かんねぇな?」
「…………ははは
まあ、嬢ちゃんが心配することじゃあねえわな
ワシの腕さえあれば、必ず形にしてやるってな!」
「……ますます分かんねぇよ」
「がはっはっはっ!
嬢ちゃんには、分かんねぇか!
まあ、その方が都合がいいっつーもんだ!」
「……さっきから、何言ってんだ?」
ボォウッ!……
「うわっ! あちちちっ(汗)」
ファブロはそう言って、炉の温度を上げた。
「嬢ちゃん、暇か?
他にやることがあるんじゃねえのか?」
「だから、嬢ちゃ……もういいや!
この頑固ジジイに、何言っても無駄だ」
「ああっ! けぇんな! けぇんな!!
そんなにジロジロ見られちゃあ、仕事がやりにくいってもんだ!!」
「チェッ! 分かったよ!
まあ、俺のヤツ、頼んだぜ!」
「おうよ!」
カァーーーン! キキン!
グラムレスは、そう言って工房を出た。
そのとき、ファブロは……
「へへ コイツぁ~嬢ちゃんには似合う代物だぜ」
と、言っていたのは、グラムレスは知らない。
読んでくださり、ありがとうございます。
鍛冶師ファブロとの再会、
そしてラカが残した“謎の注文”。
グラムの新しい装備は、
彼の運命を大きく変えるかもしれません。
次回もぜひお楽しみに。
”ファブロ・カッティーボ”とは、どこかの国の言葉で、”エッチな鍛冶屋”という意味です。




