第5話 団長はドがつく不器用
メイド見習いとして働き始めたグラム。
しかし、元騎士団長のクセは抜けず、
料理も洗濯も掃除も大惨事に。
第5話は、
“ドがつく不器用”なグラムの奮闘記。
・⋯━☞厨房☜━⋯・
••✼••メイド見習い1日目••✼••
「おるるるるるあーー!!」
タァーーーーン!!
「ほら、もう一丁おーー!!」
タアァアァーーーン!!
「どうだ!!」
グラムレスは、まな板の上の肉を、
包丁でスイカを叩き割るかのように斬る!
「せぇ~~のぉ~~!」
パカァーーーン!
(スリッパで頭を叩かれた)
「あだぁーー!!」
「何やってるのーー!!」
カチャアーーン!
(包丁を落とした)
「うわっ! あっぶね!
なにすんのさぁ! 包丁持ってるのにー!
ってか、どこからスリッパなんて
持ってきたんだあんたぁー?!」
「こらっ!!」
パカァーン!
(またスリッパで頭を叩かれた)
「いっ……たいってぇ!!」
「何やってるのって聞いてるの!」
「そんなの見れば分かるじゃん!
包丁でヤツを斬り裂いてるんだよ!」
スパァーーン!
(今度はお尻をスリッパで叩かれた)
「いだぁーーー!!」
「いい加減にしなさいっ!!」
「っふぅ~~~ん(泣)」
グラムレスがメイド見習いとして
働くことになった次の日。
誠に遺憾ながら料理の練習……?
「なんなのこの切り方!」
「だって、コレ硬いし……」
「だいたいなんなの!
その包丁の持ち方はっ!」
「はぇ? そりゃあ~剣を持つときは……」
「バカっ!!」
「ひっ……(汗)」
「これは、包丁!
いつまで騎士気取りなの?!」
「何てことを言うんだ!!
俺は騎士を辞めたつもりはねぇ!!」
メイド長の言葉に、流石に怒りが隠せないグラムレス。
たとえ女になったとしても、騎士を捨てた覚えはない。
顔を真っ赤にして、まるで敵を相手にするかのように、
メイド長をしたから、ギロリと睨みつける。
「!……はぁ~~もぉ~~
あ”あ”~~~ダメだわこの子!」
(頭を抱えるメイド長ヴィーロ)
「ふふんふふん……」
(薄ら笑のグラムレス)
「はぁ……仕方ないわね?
じゃあ、あなたは、ランドリー……
お洗濯をしなさいな!」
「お洗濯ぅ? それは女の仕事だろ!」
「あなたも、女の子でしょ!!」
「んぐっ……チクショ……
魔女殿……恨むぞ……(震)」
(震えながらも拳を固く握りしめる)
「また、そんなこと言って!
今、ここを追い出されたら路頭に迷うのよ?」
「ああもぉ! わかりましたぁ!」
「っはぁーーー……」
結局、グラムレスは洗濯をすることになった。
・⋯━☞洗濯場☜━⋯・
「はい、これ!」
「!……これは?」
先輩メイドからグラムレスに手渡されたのは、
見た目はごく普通の魔術師用の魔法の杖だった。
「俺、騎士だぜ? 魔力は、まあ一応あるけど、
魔法なんて使ったことないんだ」
「分かってるわ! でもほら!」
「ふぅん?」
先輩メイドは、指を差して杖を見せる。
その指差す先には、
1~4までの数字が書かれた部分が※スリーブとなり、
それを任意の数字に合うように左右に回すと、
放つ魔法の威力を調整できるようになっている。
もう一つのスリーブには、「小・中・大」となってる。
このスリーブを回して任意に合わせることで、
洗浄範囲を調整するものである。
「この数字がなに?」
「うん! 洗浄魔力の強さを表してるの」
「へぇ~! やっぱり、数字が大きいほど、
洗浄力が強いってわけ?」
「そう!」
「で、こっちの大、中、小ってのが、
もしかして洗浄範囲のことなのか?」
「そう! すごい! グラムちゃん賢いねぇ?」
「……バカにしてる?」
「クスクスクス……(笑)
してないしてない!」
「……んんん」
「この数字をね……」
(数字のスリーブを弄る)
先輩メイドの説明によると、
「洗浄」と発言しながら杖を振ると、
杖の先から洗浄魔法が放たれ、
数字が大きいほど強く、そして広範囲に
物を洗浄できるのだそうだ。
しかもそれは、大魔女ラカが開発したものだそうだ。
「うむむむむ……また魔女殿かよ(汗)」
「あはっ でも、この国の魔導具のほとんどは、
大魔女ラカさまが作ったものなのよ!」
「へえ~そうなんだ?」
「やり方はねぇ……」
使い方は簡単!
数字を洗濯物に対して適当に合わせて、
「洗浄」と発言しながら杖を振るだけだ。
ふむふむ。それなら俺にもできる!
「じゃあ、このロープに掛けてある
シーツに洗浄魔法をかけてみよっか!」
「……ふぅん」
殴ったり斬ったりするのは得意だが、
魔法となると、どうも苦手意識が先に出る。
とにかく、何事も経験だ!
グラムレスは、杖を大きく振りかぶった!
でがこのとき、グラムレスは、
数字を”4”に、文字を”大”に設定していた!
「むん!」
「えっ?! ちょっと待って!」
「洗浄っ!!」
ブォン!
……パァーーン!
「きゃあー!!」
「うわあっ!! な、なにこれ?!」
「はあぁあぁあぁ……(震)」
「へ?……ええええ~~~?!」
なんと!
シーツには、ボコッと大きな穴が空いているではないか!!
何が洗浄だ! 戦場の間違いじゃないのか?
「グラムちゃん! 数字っ!」
「数字? 4だけど?」
「やっぱり! それで強さは?」
「……大」
「ほらやっぱりぃ!!」
「へ?」
「強すぎっ!!」
「強いの?!」
「当たり前よぉ!
ほとんど目立たない汚れていとなら、
強さは”1”で、範囲は”小”で十分なよの!」
「うぇえぇえぇっ?!」
「”4”って、鉄のサビを落とすくらい
強い魔力なのよ?!
しかも、そんなに力いっぱい力まなくても!」
「力むぅ?」
「そう! 騎士だって、力を入れるときは、
力むものでしょ? 魔法も同じ!
力めば力んだだけ、魔力も使うの!!」
「そんなぁ! 先に言ってよぉ!」
洗濯場を追い出されました……
・⋯━☞図書室☜━⋯・
「あれ? グラムちゃん?」
「洗濯場では、俺は使えないからって、
ここに行けって言われて来たんだけど……」
「あらら、そうなの?」
「はい……(凹)」
(珍しく落ち込むグラムレス)
「ふふふ……そう? なら、一緒にお掃除する?」
「……ふぅん」
グラムレスは、今度は図書館で、
本棚のホコリなどを落とす、
掃除をすることになった。
「おおお……すんごい数の本だな」
図書館では、本がギッシリ詰まった本棚が、
人が三人並ぶのがキツイくらいの隙間で、
図書館の端から端まで整然と並んでいる。
だが、ちょうどグラムレスが立っていたところに、
何か、棒のような物が立てかけていた。
なんだろう?
「あ! その”つっかえ棒”には触らないでね!
そこ、下の段が潰れてるから、今日は修理の方が
来ることになってるんだけど、それ取っちゃうと
本棚が倒れちゃうかもしれな……」
「はい? これ?」
ポキッ!
(つっかえ棒を取ってしまうグラムレス)
「あっ! ダメだったら!!」
「えっ?」
グググググッ……
「ん!?……」
グラムレスが、木の棒(つっかえ棒)を取った瞬間に、
本棚が少し動いたような気がした。
「きゃあ! 危ない!!」
「わっ! な、なに? ぐへっ!!」
「ひぃいぃいぃいぃ~~~!!」
(グラムレスを俵担ぎで肩に担ぎ、
猛ダッシュで駆け出す先輩メイド)
「あうあおあうあうおあう……!」
タッタッタッタッタッタッタッ!
「はっ!……はぁ…はぁ…はぁ……」
「なに?! ねぇ、なに?!」
グラムレスを担ぎながら図書館の端まで来ると、振り返って見る先輩メイド。
先輩メイドに担がれながらわけが分からないグラムレス。
だが、次の瞬間……
ググググググ……ギリギリギリギリ……
「んなっ?! 本棚が倒れるぞ!!」
「当たり前よぉ! グラムちゃんが、つっかえ棒を取っちゃったんだから!!」
「何それ! 知らねーしっ!!」
「ああああああああーー!!」
「わっ!……わっ!……わああ……
と、止めなきゃ! ぐえっ!!」
「ばかぁ! 行っちゃダメ!!」
「……ぐううぅっ!!」
グラムレスは、咄嗟に何とかしようと思い、
傾く本棚に向かって走り出そうとする。
そんなグラムレスの意思を察した先輩メイドは、
グラムレスの後ろ襟首を掴み、
力いっぱいグイッ!と引き戻す!
グラムレスは首が締まり、カエルのような声になる。
だが先輩メイドはパニックのあまりに、
首吊り状態のグラムレスに気づかない。
「ぐぅえぅえぅ~~!!」
(離してぇ~!!)
「あ!……ごめんね! でも……」
「けほけほっ! はぁ…はぁ…はぁ…
ああああああ~どうしよう~!」
「もう無理ぃ~~~~!」
ググググググ……ギリギリギリギリ……
なんとなんと!
グラムレスが取ってしまった棒とは、
下の段が潰れた本棚を倒れないように
つっかえ棒にしていたんだとか。
つっかえ棒の無くなった本棚は、
木が潰れるような鈍い音を立てながら
ゆっくりゆっくりと傾いていく。
そして……
「「あああああああ……(汗)」」
ギリギリギリギリ…バキバキバキバキ…
ドン!
「「きゃあっ!!」」
ドン!…………ドン!……ドン!…ドン!
「「あああああああーー!!」」
なんと本棚は、まるでドミノ倒しのように、
次から次の本棚へと止まることなく傾き、
隣の本棚を次々と倒していく!
そしてついには、津波のように……
ドンドンドンドンドドドドドド!!
「「ぎゃあぁあぁあぁあぁ~~~!!」」
ドドドォーーーーン!!……
「「!!…………………………」」
しぃ~~~~~~~~~……ん
モワモワモワモワ~~~……
全部倒れきったあとには、モワモワとホコリが舞、
まるでビル破壊でもしたのか?
と思うような有様だった。
「と……止まった」
「当たり前でしょ!
もう倒れる本棚なんて残ってないんだから!」
「!!……………………(´>ω∂`)☆」
「んもぉ! ばあかあああーーー!!」
「ひぃいぃいぃいぃ~~~(汗)」
後に、この惨劇のことを、
「グラムレスがつっかえ棒取ってしまって、
図書館の全ての本棚をドミノ倒しした事件!」
と、言われたとか、言われなかったとか……
・⋯━☞厨房☜━⋯・
魂を抜かれたアンデットのような顔をして、
グラムレスは力なくトボトボ歩いてくる。
「あら! どうしたの?
もう、洗濯は終わったの?」
「……いや」
「そう言えば、凄い音がしたけど、
あれは何だったのかしら?」
「さ、さぁ~ねぇ~~~(焦)」
「……グラムレスさん?」
「……な、なんでしょうか?」
「あなた、何か隠してるでしょ?」
「!!…………」
ガクガクブルブル……
この後、グラムレスは正直に白状しました。
こっ酷く、叱られました。
メイドたち全員で片づけました。
騎士団も手伝ってくれました。
もちろん、グラムレスも一緒に……
後に、図書館の片隅で、
グラムレスが一人泣いていたのは内緒です。
そして、最後に任されたのは、
トイレ掃除でした……
・⋯━☞集合トイレ☜━⋯・
「あうううう~~~あううう~~~(泣)」
まだ、この時代には、「スライムトイレ」は、
無かったのだった。
この元騎士団団長の事情がキッカケに、
大魔女ラカが閃くのです。
「ひぃいぃいぃいぃ~~~ん(泣)
くちゃい! くちゃい!」
――こうして、団長の試練はまだまだ続くのであった。
ちゃんちゃん
読んでくださり、ありがとうございます。
料理、洗濯、掃除……
どれも壊滅的に向いていないグラム。
しかし、これも“女騎士の事情”の一つ。
彼の試練はまだまだ続きます。
次回もぜひお楽しみに。
※(スリーブとは筒状の動かせる部品のこと)




