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女装剤(ある女騎士の事情)  作者: 嬉々ゆう


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3/13

第3話 規格外の回復効果と副作用

因縁の地龍「一本傷」が城に迫る。

騎士団長グラムは、仲間を守るために捨て身の作戦を決行する。


しかし、戦いのあと――

ラカのポーションが“規格外の効果”を発揮し、

グラムの運命は大きく変わることになる。


第3話、戦いと変化の物語。


 ・⋯━☞騎士団専用訓練場☜━⋯・


「今戻ったぞ!」


「「「お帰りー!」」」


「よお! 今日も魔女さまに会えたか?

 この、羨ましいヤツめ!」


「変な冗談はよせ! そんなんじゃないさ」


「はははっ! どうだかな?」


「ふん……」



 まったく、女っ気のない騎士団だ。

 日頃から、こんな話ばかりだ。

 俺は、いつものように、魔女殿から受け取った?ポーションを、救護班へ届けようと救護班へ向かおうとした。

 が、その時だった!



 カーン! カーン! カーン!


「「はっ!!」」


「「「「ザワザワザワザワ……」」」」


《敵襲ーー!! 敵襲ーー!!

 地龍が多数の魔物を引き連れて

 押し寄せて来だぞー!》


「「んなっ?!」」



 なんと!

 地龍が多数の魔物を引き連れて、

 この城に迫って来ているという!

 

 また、地龍か……

 これも、因縁か?


 俺たち騎士団は、迫り来る地龍に応戦する!



 ・⋯━☞城壁の外☜━⋯・


「来たか!」


 ドドドドドドドド……


「なんだありゃあ?!」


「おぃおぃ、あれはただの地龍じゃねえ!」


「はあ?!」


「奴は、ネームドだ! 一本傷だ!」


「一本傷だと?!」


「「「「ザワザワザワザワ……」」」」



 「一本傷」

 それは、額に一本の刃傷がある地龍で、過去にも騎士団もやり合い何度も倒し損ねた奴であった。

 そして何を隠そう、奴の額の傷はグラムレスが付けた傷であった。

 地龍は、ドラゴン種の中では最弱とされてはいるが、ネームドともなれば話は別である。

 ワイバーン並の戦闘力を誇る強者である。

 そう。奴こそがまさに、因縁の相手だ。


 グラムレスは、常日頃から一本傷を倒すためにシミュレーションを思い描いていた。

 地龍は、一度噛み付いた相手を放さない習性がある。

 その習性を利用して、グラムレスの左腕のプロテクターだけは他のどの部分よりも丈夫に作られていた。

 そう。そのシミュレーションとは捨て身だ。

 何度もしてやられるのは、騎士団団長の名折れだ。

 

 グラムレスとラストは、一本傷に立ち向かおうとするが、他の魔物たちと戦う部下たちに一本傷が襲いかかろうとするのを凌ぐだけで精一杯だった。

 だが、それも時間の問題。

 魔物たちは、部下たちの活躍で、どんどん数が減っていく。


 そして、何かを待っていたかのように、グラムレスが一人ラストから離れていく。

 しかも、剣をサヤに仕舞って。



「ん? おい!」


「ラスト! 任せたぞ!!」

 バタバタバタバタッ!


「あっ! おい! 何をする気だ!!」


「うおおおおおおおおおおおーー!!」


「バカめ! 早まりやがって!!」



 グラムレスは、一人一本傷に向かって突進!

 一本傷もグラムレスに気づき、大口を開けて突進!

 そして……



「グワオオオオー!!」

 ドスドスドスドスドスッ


 ガブッ!!

 (グラムレスの左腕に噛みつく一本傷)


「ん”っ! ぐゔゔゔゔ……!!」


「なっ?! グラム!!」


「「「「団長おおおーーー!!」」」」









 いったい、何が起きたのか……

 グラムレスは、わざと一本傷に左腕を噛ませ、隙を与えたのだ!










 

 ブチッ!


「があああっ!! ぐわぁ~~~!!」


「「「「?!……」」」」


 ドサッ!



 グラムレスの悲鳴にも似た叫び声が響き渡る!

 その声に、何事かと誰もがグラムレスに刮目した。

 そのとき、グラムレスの左腕は無く、血しぶきが飛び散る!

 そしてそのまま、操り糸の切れたマリオネットのように地面に転がった。


 見る見るうちに、グラムレスの鎧は血に染まるも、痛みに耐えながらまだ立ち上がろうとする。

 そんなグラムレスを目の当たりにした団員たちは絶望!

 そのあまりにもショックな光景に全員がフリーズした。


 しかし、グラムレスは動きを止めない!



「ここだぁーーー!!」

 シャイィイィ……ン……

 (抜刀するグラムレス)


「くらえええーーー!!」

 ザンッ!


「グオオオオオーー!」


「ど……どうだ!!」



 グラムレスは、自分の左腕を一本傷に咥えさせたまま抜刀!

 そして一本傷がグラムレスの左腕を食らっている隙に、剣を一本傷の喉の柔らかい急所に突き刺す!!

 動きが鈍くなる一本傷。

 


「ひぃえぇえぇ~~~団長の腕がぁー!!」


「なっ?!……なんてことだっ!! くそぉ!」


「らーーすとおーーーー!!

 いまだああああーーーーー!!」


「はっ! うおおおおおおーー!!」

 ダダダダダダダダダダッ!


「うおおりゃあーー!!」

 タタッ!


 ラストは、グラムレスの声を合図に一本傷に向かって突進し、力いっぱいジャンプ!!

 そして額の傷に向かって全体重を乗せて剣を突き刺した!!


 

「だああああああーー!!」

 ズンッ!……


「グオッ!……」


「?!……」


「グフゥ……」


 ドシィイィイィイィーーン!


「「「「?!…………」」」」



 一本傷は、ラストに額の傷に剣を根元まで突き刺され、体がビシッと硬直してしばらく痙攣すると、目を白くしてそのまま横に倒れた!



「……やったか?」


「やった! やったぞーー!!」


「「「「うおおおおおおーーー!!」」」」



 ついに! グラムレス率いる騎士団は、宿敵一本傷を倒したのだ!

 だが……



「グラム! グラム大丈夫か?!」


「ああうっ!……かはっ!」


「はぁはっ!!??」


「「「「!!……ザワザワザワザワ……」」」」


「お……お前、その腕……」


「ぃいっ!!……はぁ…はぁ…はぁ……

 へへへっ……く、食われちまった……」


「なんっ……だとお……バカめ……

 この大バカ野郎がぁーー!!」


「はっはっはっ……そう言うなって……」



 グラムレスの左腕は、肘の上からゴッソリと無くなっていた。

 


「あううっ……へへっ……今頃は……

 奴の胃袋の中かな? へへっ……へへへ」


「何をこんな時に笑ってやがる!!

 部位の欠損は、エリクサーでなきゃ再生できないんだぞ!!」


「そんなこと、分かってるさ……

 でも、奴にはこうでもしなきゃ、お前の一撃を与える隙なんて作れなかっただろ?」


「バカめ! もう喋るな!

 とにかく、ポーションを飲め!」

 ポン!……



 ラストは、自分のウエストポーチ型のマジックバッグから、ポーションを取り出し、グラムレスに飲ませた。

 だが、そのポーションは……



「すまねぇな……ングッ……ングッ……」


 シパァーーーーーッ!


「なっ?! なに?」


「「「「おおおおっ!!」」」」



 なんと、ラストがグラムレスにポーションを飲ませた瞬間!

 グラムレスの身体が青白く光り輝いた!

 そして、一本傷に噛みちぎられた左腕もが再生!



「は? はああっ?! なんだこれは?!」


「なんだ? どうし……あれえ?!」



 グラムレスは、左手を高く挙げて、

 グーパーグーパーしている。

 噛みちぎられて失ったはずの腕が、やや細くなってはいるものの、綺麗に再生していたのだ!

 

 だが、それだけではなかった……



 ゴトン!……


「んあ?!」


「へっ?!……な、お、お前……え?」


「なんだ? なぜ、兜が落ちたんだ?」


「「「「おおおおお……」」」」



 なんと!! なんとなんとおおお!!

 フルプレートアーマーのグラムレスなのだが、兜が勝手に脱げ落ち、胴のプロテクターの首の部分からは、可愛らしい少女の顔がひょこっと出ていた。



「な、なんだ? なんだってんだよ?

 あ、あれぇ? なんだか声が……ん”ん”っ!

 それより、なんだか胸が苦しいな……」

 (胸がデカくなって苦しい)


「はわわわわ……はわわわわわわ……(震)」


「ラスト、すまない……

 ちょっと、鎧を脱がせてくれないか?」


「はわわわ……はわわわわ……」


「あん? ラスト?……

 ラストおーーー!!」


「はっ?! あ、ああ、わかった!」


 ゴソゴソ……



 ラストは、グラムレスに言われるまま、鎧を一つ一つ脱がせてやった。

 すると……



「ぷはぁー! スッキリしたぁ!

 しかし、驚いたなあー!

 魔女殿のポーションは初めて飲んだが、

 失った腕まで再生するなんて、

 とんでもない回復効果だよな!」


「有り得ない……有り得ない……」


「「「「…………」」」」


「……ん? どうした?」



 有り得ない……。

 確かに有り得ない回復効果だった。

 だが、皆が感じる有り得ないとは、グラムレスの考えていた有り得ないとは別だった。

 ここで初めてグラムレスは、他の騎士たちの様子が何かがおかしいことに気づいた。

 皆、なぜか自分を血走った目で見つめるのだ。



「……な、なんだよ? お前たちまで……」


「グラム……」


「なんだ?」


「お前は……お前という奴は……」


「はぁん? さっきからなんなんだよ?

 やっと奴を倒せたんだ! もっと喜べ!」


「お前という奴は…………」


「お、おい……なんでそんな目で近寄る?

 ってか、お前えらく背が高くなってないか?」



 何かがおかしい。

 自分の体もおかしいし、皆の雰囲気もおかしい。

 まるで飢えた獣のような目をしている。

 腹でも減り過ぎたか?


 などと考えていたら……



「なんて可愛いんだ、お前ぅわあーー!!」

 ガチャン!


「いででででででででっ!!

 こ、こらあ!! フル装備で抱きつくな!」



 ラストが、まるで我を忘れたかのように発狂気味にグラムレスに抱きつく!

 それもそのはず!

 騎士団とは、女っ気のない部署だ。

 目の前に、胸が張り裂けそうなほどボン!

 ウエストがキュッ!と引き締まり、

 ヒップもボン!と、大きな良い形して、

 更に、ショートボブの、ボーイッシュな可愛らしい女の子が、下着姿でいるのだから、タガが外れて我を忘れるのも無理もない。

 

 その後、一悶着はあったものの、グラムレスが女に変身したのは、大魔女ラカのポーションを飲んだせいだと確信!

 なにせ、ポーションを飲んだと同時にグラムレスが女性化したのだから、疑う余地などはない。


 すると、団員たちが何を思ったのか、順番にグラムレスに求婚し始めた!

 まるで、某人気婚活バラエティー番組の告白タイムのように。



「団長ー! 可愛いっす! 結婚してください!」


「うっせぇーー! やだよ!!」


「グラム団長! よろしくおなしゃふぅ!!」


「……あんて?」


「だだ、団長! 結婚したぁーっさい!!」


「何言ってんだ! 言葉は正確に!」


「じゃあ、俺の番!

 団長! 結婚してください!!」


「やだよ! バカ!!」


「何で?! 正確に言ったのにぃ!!」


「そこじゃない!!」


「俺は?! 俺は?!」


「何がだ?!」


「何処までもついて行きます!」


「ついて来るな!」


「ええ~~~!? この間は、俺について来いって

 言ってくれたじゃないっすかあ!!」


「意味が違う!!」


「俺! 俺! 俺のこと、気に入ってるって言いましたよね?!」


「社交辞令だ!」


「そんなぁ~~~!!」


「団長ぉ! 俺の幼なじみよりも可愛いっす!」


「誰だよそれ?!」


「団長ぉー! 団長は天使っす!」


「違う! 違う! 女神っす!」


「魔物の糞でも食ったか?」


「「ひどぉーい!」」


「おいおい! いい加減にしろよお前たち!」


「「「「!!……ザワザワザワザワ……」」」」


「ラスト……助かったよ」



 ラストの一言で、皆が静まりかえる。

 ところが……



「な!」

 ぴとっ……


「な、なんだよ この手は?」



 ラストは、グラムレスの肩を抱き、引き寄せながらそう言う。



「あ、ああー……ごほん!

 ええーーまあーーあれだな!」


「はぁん? 何言ってんのお前?」


「だからな?……俺にしとけ!」


「?!……」



 グラムレスは、ラストの言葉にポカーン……



「な、なな、なに? 何言ってんの?」


「うむ、だからな? 俺はな?

 お前が好きだから、結婚してやる!」


「………………っはあ~~~!

 ばっっっかじゃねぇーのぉー?!」


「いや、俺は本気だ!!」


「うっせぇ! ぶっ殺すぞ!!」


「団長! ダメですよ!

 女の子がそんな口を利いてはいけません!」


「お前は俺のおかあさんか!!

 俺は男だぞ! 野郎と結婚なんて……」


「「「「団長は、女の子です!!」」」」


「やめろおーーーーー!!」



 このとき、グラムレスは、自分が女になってしまったことを、初めて身をもって知った。

読んでくださり、ありがとうございます。


地龍との激闘、

そしてラカのポーションによる“予想外の副作用”。


グラムはついに――

女の子になってしまいました。


騎士団の混乱、

ラストの告白、

そしてグラム自身の戸惑い。


ここから物語は、

“ある女騎士の事情”へと本格的に踏み込んでいきます。


次回もぜひお楽しみに。

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