第2話 大魔女ラカ
大魔女ラカの家を訪れたグラム。
恐れながらも任務をこなすはずが、
ラカの“意外な一面”を次々と目にすることになる。
そして半年後――
ラカの様子に異変が……?
第2話、ラカとグラムの距離が少しだけ近づく回。
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■ある女騎士の事情■
第2話 大魔女ラカ
・⋯━☞大魔女ラカの家☜━⋯・
次の日、俺は大魔女ラカの家に向かった。
ドンドンドン!
「魔女殿ー! 魔女殿はご在宅かー!」
《はいはい! 少々お待ちを~~~》
家の玄関のドアを通して、魔女ラカの声がする。
とても柔らかく優しい声だ。
この声を聞くだけでも、殺られてしまいそうだ。
カチャカチャ……カチン!
ガチャ……キィイィ~~~
「これはこれは、いらっしゃいませ騎士様!」
「お!……おおお……ど、どうも初めまして!
この度、魔女殿の卸すポーションを受け取る役目を承ることとなりました、グラムレスと申します!
以後、よしなに!」
「まあまあ! そうだったのね?
はいはい、ちょっと待ってくださいね!
あ、どうぞ中へお入りください」
「お、おお……では、邪魔をする」
……パタン!
俺は、誘われるまま魔女の家に入った。
・⋯━☞ラカの家の中☜━⋯・
「お話は坊や……王様から聞いておりましたが、今後は騎士様がポーションの受け取りをすることになったのですねぇ~~~」
「はっ! まあ、そうですね……」
(思わず敬礼!)
グラムレスは、大魔女ラカの、王に対しての「坊や呼ばわり」を聞き逃さなかった。
『ひぃえぇえぇえぇ~~~こええ~~~(汗)
大魔女ラカって、王を坊や呼ばわりするってぇーのは、本当だったのかよお~~~(汗)』
「……あの、なにか?」
「あ、いぃいぃえっ!
なんでもございませんですハイっ!」
(またまた敬礼!)
「クスクスクス……(笑)
そんなに緊張なさらなくても、取って食おうなんて思っていないわよ?」
「そ、そそそそそそ、そん、そんな風なことなど、お、おおおおおお、思っておりませんですぜ! はい!」
「あははははははははっ! 面白い子!」
「子?!……」
流石は300年生きる大魔女。
29歳の俺なんて、まるで小童同然な扱いだ。
絶対に怒らせてはいけない!
ぜっっっっっっったいに!!
だが、そんななか……
「きゃあ!!」
「うおっ?!」
ガチャーーーン!
「!!……だ、大丈夫……ですか?」
「あらあらまあまあ!
また、やっちゃいましたわ(汗)」
「へっ?……」
「まあまあ、どうしましょう~~~」
「……」
この時、グラムレスは思った。
『この魔女、思ってたより怖い人ではないかも?』
「手伝います!」
「あら? 優しいのね」
「え? いゃあ! ははっ……(照)」
「……ふふふ」
カチャカチャ……
魔女ともなれば、こんな程度なら魔法でチョチョイノチョイっと片付けてしまうのだろうが、俺は考えるよりも先に体が動いていた。
そして、約束のポーション50本が用意され、俺は魔女から騎士団が借りている運搬用マジックバッグに仕舞う。
「ありがとうございました!」
「いえいえ、こちらこそ!
ああ、そうそう!」
「はい?」
「私、結構お寝坊さんなのね?」
「は?……はあ……」
「だからね? もし、今後騎士様が来られたときに私が寝ていたらなら、この棚から勝手に持って行ってくれて構わないからね!」
「!……そ、そうですか? 了解しました!」
「ふふふ では、またね騎士様!」
「はっ! お勤め、ご苦労さまです!」
(やっぱり敬礼)
パタン!……
・⋯━☞魔女ラカの家の外☜━⋯・
「勝手に持って行って構わない……か
って、えっ?! 鍵は? いつも閉まってるよな?
じゃあ、勝手に中に入れねぇじゃん!!
あははは……やっぱりあの魔女殿は、少しヌケてる?」
この日、グラムレスの中で、大魔女ラカへの印象が、かなり軽くなったのだっだ。
こうして、俺の月一のポーション引き取り任務が始まった。
半年にもなると、もう慣れてくるもので……
••✼••半年後••✼••
・⋯━☞大魔女ラカの家☜━⋯・
ドンドンドン!
「魔女殿ーー! 魔女殿はご在宅かー!」
《はいはい! 騎士様! お待ちになって》
カチャカチャ……カチン!
ガチャ……キィイィ~~~
「これはこれは、いらっしゃいませ騎士様!
いつも、わざわざご苦労様ねぇ~~ 」
「いえ! これも任務ですから」
「はいはい ポーションできていますよ~」
「はい ありがとうございます!」
こんな具合で、なんの問題もなく続く任務だと思っていたこの頃だったのだが……
••✼••翌月••✼••
・⋯━☞大魔女ラカの家☜━⋯・
ドンドンドン!
《きゃあ!》
「ん?……」
今日の魔女殿は、いつもとは何かが違った。
「魔女殿ー! ご在宅かー!」
《騎士様? ちょっと待ってくださいませ!!》
「んん? なんだか声が枯れてる? 変だな……」
《今、開けますわね!》
カチャカチャ……カチン!
ガチャ! キィ~~~……
「やあやあ、魔女殿! 今日もお美しい……って?」
「……何かしら?」
「魔女殿、目の下にクマが出ていますぞ?」
「あ、あはは……気になさらないでくださいな」
「……そうか? では、いつものを受け取りに」
「あ、はいはい! ちょっと待って……きゃっ!」
「危ないっ!!」
ガバッ!……
魔女殿は、急にふらつき、バランスを崩してしまう。
そんな魔女殿を、俺は慌てて抱き寄せる。
「だ、大丈夫かな魔女殿?」
「ええ、大丈夫ですわ 少し、無理をしただけ」
「では……」
「ひゃあ?!……」
俺は、ラカをお姫様抱っこで、ベッドへ寝かせた。
しかし、なんて軽さだ。
これまで、大魔女ラカとは手の届かない偉大な存在に感じてはいたが、こんなにも小さく頼りない存在なんだなと感じた。
「無理をしないように……」
「す、すみません……」
「では、勝手にポーションを持って行きますぞ?」
バタバタバタッ……ガタガタッ!
「ああっ! ちょっ……」
「代金は、ここへ置いておくぞ!」
ズチャ!……
「あぁあっ! 待って!」
バタン!
「!!………………嘘?」
慌てるラカに構わず、俺は棚からポーションの入った箱を掴むと脇に抱えて、懐から金貨の入った巾着袋をテーブルに投げるように置いて、さっさと家を出て行った。
なぜなら、以前から魔女殿から、棚からポーションを勝手に持って行っても構わないと聞かされていたからだ。
「ああああああああ~~~っ!!
どうしましょう~! どうしましょう~~~!」
などと、魔女殿が悲鳴にも似た叫び声を上げていたなどとは、俺には知る由もなかった。
読んでくださり、ありがとうございます。
大魔女ラカは完璧な魔女……
そう思っていたはずなのに、
彼女の“弱さ”や“天然さ”が少しずつ見えてきました。
そして今回、ラカの体調に異変が。
彼女が最後に叫んだ「どうしましょう〜!」
その意味とは……?
次回、物語が大きく動き始めます。




