第1話 騎士団長グラム
魔導大国マイーヤの騎士団長、グラムレス。
背は低いが腕は確か。
仲間に担がれ、気づけば団長になっていた男。
そんな彼に、ある日突然――
“大魔女ラカ”からの仕事が舞い込む。
これは、ひとりの騎士が巻き込まれる
“女装剤”と“秘密”の物語。
俺の名は、「グラムレス」。
仲間たちは俺を、「グラム」と呼ぶ。
普通は若い女性たちには人気な職なのだが……
俺は未だに嫁さんを貰えず、もうすぐ三十路だというのに独り者だ。
やはり、他の仲間たちに比べ背が低いのが仇となっているのだろうか?
こんな俺ではあるが、魔導大国マイーヤで、王宮騎士団の騎士団長を任されている。
自慢じゃないが俺は、
「ドラゴンスレイヤー」の称号持ちだ。
その功績により、「騎士爵」の爵位を叙爵され、一代限りではあるが、一応は貴族としての地位をいただいている。
「ドラコンスレイヤー称号」様々である。
とはいえ聞こえはいいが、実はドラゴンと言っても、最下級レベルの地龍を騎士団一丸となって一体倒しただけの話。
俺だけの功績ではない。
なのに我ら団の部下たちは俺を担ぎ上げ、俺は拒否したものの無理やり団長にさせられてしまった。
この団唯一の爵位持ちとなれば、これも仕方がないのかもしれないが……
ただ、団の中で唯一の爵位持ちで、そして一番歳上ってだけで、我ながら情けない話だが、俺には仲間たちを引っ張り団をまとめるような器ではない。
だが幸いにも、団長にされてからと言うもの、特別何か重責な事柄をさせられることはなかった。
そう。この日までは……
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■ある女騎士の事情■
第1話 騎士団長グラム
俺は、いつものよつに、マイーヤ騎士団専用訓練場で、仲間たちと汗を流していた。
「とおーーりゃあーーー!!」
ガキィィィ~~~ン!
「ぐうっ!……ぬぬぬね……やるな?」
「どうした? お前の実力はこんなものか?」
「ああ? ……んだとぉ!!」
カキィン!
「地龍を倒したのはマグレか?
我らが騎士団のグラム団長さんよ!」
「へっ! 口だけは達者だなラスト!」
俺が、「ラスト」と呼んだコイツは俺の同期で、俺の見越しでは近い将来「聖騎士」に成りうる者と期待している、俺の唯一の親友と呼べる奴だ。
俺がいなければ、この団一位の実力を持つと自他共に認める強者だ。
正直俺は、今でも実力は負けていると思う。
奴のことだ。
きっと、この訓練でさえ俺を相手に手加減しているに違いない。
さっさと功績を上げて、俺に代わって団長になってくれればいいものを……
などと、いつも思っていた。
「よおーーしっ! 今日の訓練はこれまで!!」
「「「「おお~~~!!」」」」
バタバタバタバタッ……
「ふっ……まったく、どいつもこいつも……」
俺の掛け声で、団の奴らは嬉しそうに訓練場から去っていく。
皆、見物に来た女の子たちにしか興味ない。
ま、騎士団とはいえ、所詮はこんなもんだ。
俺も、着替えるために更衣室へと向かう。
そして今日も、いつものように交代の他団と入れ替わり、我が家へ帰ろうとしたときだった。
・⋯━☞騎士団更衣室☜━⋯・
「グラムレス騎士団 団長殿!」
「ん? 何用ですか?」
「救護班 班長殿からの通達です!」
「救護班? なんだ?」
「はっ! グラムレス騎士団 団長殿には、大魔女ラカ殿の卸すポーションの受け取りを頼みたいとのことです!」
「はあ?! そんなの救護班の仕事だろ?」
「いえ! 既に宰相殿からの指示も受けているとのことです!」
「んなっ?!……やるしかないのかよ」
「では!」
「はあ~~~……」
とうとう、きてしまった!
騎士団長として、何か重責を担うのは責務。
既に救護班班長も、何かしらの重責を担っていると聞く。
しかも、宰相からの指示もあると言う。
受けざるを得ない……
「参ったな……あの、大魔女ラカ殿か」
俺は、正直大魔女ラカという妖艶な魔女が苦手だった。
一度だけ見たことがあるが、それはそれは美しい魔女だった。
……が、彼女の流し目には、ゾクッとする。
美しく素敵な女性なのは間違いないが、下手に怒らせたなら俺なんて手を触れずにコロッと殺られてしまうだろう。
マジで怖くて仕方がない。
でも、これも仕事だ。やるしかない。
俺は意を決して、大魔女ラカのもとへ向かうのだった。
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グラムレス=艷麗の意味。
ラスト=欲情の意味。
ラカ=Love and curse (愛と呪) 略してラカ。
読んでくださり、ありがとうございます。
騎士団長グラムの前に現れたのは、
大魔女ラカからの依頼。
ただのポーション受け取り――
そう思っていたはずなのに、
ここから彼の運命は大きく動き始めます。
次回もぜひお楽しみに。




