38話 初の任務
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軍に入り2ヶ月が過ぎたころ、毎日毎日訓練ばかりでは新人は、ただの給料泥棒になってしまう。そうならない為に、新人には少しずつ仕事が割り振られるようになった。やはり実践をこなさないと本当の意味での軍人にはほどとおい。
班に分かれて5人ずつ4班になった。この4班で伯爵領内の見回りを2日かけて行う。終わらなければ、戻ってくるなと上官に言われて準備を始めた。問題があれば適宜対処する事。冒険者の領域の仕事には手を出さないようにとも言われた。要は邪魔するなという事だ。
5人で協力しないととても2日で終わる仕事ではない。明日出発するにあたり、1人ずつ役割を決めた。俺はアルテと同じグループになった。地図を広げて村や町の位置を確認してから、まわる順番を決めた。主な目的は魔物討伐や盗賊の対処である。冒険者崩れが盗賊に成り下がり、暴れているケースもある。
基本的には異常なしだが、稀に盗賊と遭遇して戦闘になることもあるので、注意するように上官に言われた。
翌日、アルテの指揮のもと馬に乗り出発する事になった。馬は軍の所有であり、巡回で貸し出してくれる。大事に使わないと降格させられたり、減給。悪質なら首もあるらしい。以前に馬を何頭も潰した軍人がいたらしく、そいつは首になった後で盗賊に成り下がり討伐されたそうだ。
翌日、ジヨンには泊まりになる事は伝えておいた。いってらっしゃいのキスをしてから軍の施設に向かい、仲間と合流して馬に乗り出発した。俺達の担当は、北のエリアである。あらかじめ決めていたルートを進み問題なく2日後に軍の施設に戻ってきた。途中、村や町に寄った際に問題ないか確認のサインをもらってくる必要がある。そうしないと巡回をスキップする奴が出てくるからである。
掃除と訓練は、毎日で、巡回は月に1度である。何かあれば組んでいる小隊で動く事になると上官から言われた。特に今日も何も起こらず平和ではあるが……。軍は平時の時は訓練が多く暇になってしまう。軍の訓練は慣れれば俺にとっては楽になった。問題はこの先である。出世する事だ。そのためには、チャンスで任務を遂行する力がいる。
そんなに多くはない与えられたチャンスをものにしたいな。準備を怠らずに、来るべき時が来るまでじっとしていることにした。雨の強く降る夜に、自宅でジヨンと休んでいるとノックする音がした。こんな遅くに誰だと思ったら、伯爵の次男の中隊長である。
「中隊長、どうしたんです。こんな夜遅くに……。」
「な〜に、可愛い弟が全然会いに来てくれないから。ジヨンもいるだろ。こっちから会いに来たわけさ。」
「新人が中隊長に簡単に会いにいけないでしょう。それは分かるでしょう。」
「い~や、まったくわからん。まぁ、それはいいとして、1週間後に父上と母上が伯爵領に来ることが決まってな。その迎えと護衛に新人を使おうと思っている。責任者はルークを任命するからよろしく。君がいれば問題ないよね。父上達を伯爵領の屋敷に安全に連れてきてほしい。よろしく。」
ジヨンが入れた紅茶を半分飲んだ所で美味いと言い風のように去って行った。俺から見ても次男はガラテアの兄だけあり強そうに見えた。しかし、オリバやガラテアの足元にも及ばないだろう。稀にガラテアの様な超天才が数百年に1度生まれるのだろう。
2日後に中級兵士の上官より新人に対して任務を言い渡された。本来なら新人が行う様な仕事ではないが、東側から来る盗賊の対処に先輩の兵士達も忙しいようだ。新ガイア帝国から爪弾きされた連中であり、その国で生きていけないので、他国で悪さするという昔からの迷惑な流れだ。
人の物は奪う。欲しいものがあれば盗む。若い女を見れば犯す。動物的な発想なので理解しあえない残念な連中だが、実力はほんものであり、死線を何度もくぐり抜けた連中だからしぶとい。正直な所、ミスリル帝国が抑えてなければ、ジェノム王国はすでに滅んでいただろうと言われるほどである。
爪弾きにされた奴らと遭遇する事はないだろうから、時間はかかるが簡単な任務になる予定だ。現在は、軍の施設にいる。20名の新人達がおり、俺が小隊を預かる事になった。アルテを側近につけて経路を確認している。新人の中にはなぜあいつが指揮官なのか?と思っている奴もいた。俺は、軍にコネで入ったけど。
上官より命令が下されたから仕方なく従っているだけにも見える。全員で馬に乗り、馬車も1台用意している。この馬車には食料やテントなどが積んである。
「出発!」と声をかけて縦1列になり馬車の速度に合わせてゆっくりと進む事になった。何度も通った事のある道であるので、不安は今のところない。途中、村や小さい町で食料などを補充した。アルテからのアドバイスで小さい町で一番いい宿の予約をしておいた。戻る時に伯爵夫妻が使う予定だ。道中は問題なく進むことが出来た。
王都に到着後、兵の宿を借りて俺とアルテのみで伯爵邸に向かった。自分が住んでいた所なので不思議な気持ちだったが……。顔見知りの門の兵士に伯爵夫妻の迎えの件を伝えて中に入った。
「伯爵軍ルークとアルテが参上いたしました。」
「ルーク、よく来たな。そちらは初めてだな。まぁいい。出発は明日の昼前でいいだろう。よろしく頼むよ。」
「はっ!こちらこそよろしくお願いいたします。伯爵も元気そうでよかったです。」
その後、俺だけここで1泊してアルテは宿に戻して昼前に準備を整え、伯爵邸に来るように指示した。伯爵夫妻と夕食をとり、次男が会いに来てくれた事やジヨンと仲良くしている事を話した。
翌日、伯爵夫妻は個人の馬車があるのでそれを使い、他にも幾人か一緒に来るようだ。馬車2台を囲むようにして、伯爵領へ向かった。3時間ごとに休憩をとり、夜は小さい町の宿に泊まった。宿には護衛を交代で配置した。
静まり返った夜に俺は伯爵の泊まっている宿を監視している。中隊長から事前にオレだけ知らされていたが、新人の中に貴族派が紛れ込んでいるらしい。何もなければそれでいいが、以前にもあったが、伯爵の命を狙う刺客なら死んでもらうしかない。
交代で2人ずつ見張りをしているが、1人が長剣を抜いて斬りつけたのが見えた。新人が一人倒れて、宿の中に入るのが見えた。後をつけて倒れている兵士を見たが致命傷を負っていたため助からない。ポーションをかけたが、気休めだろう。
後をつけていくと、伯爵夫妻の部屋の前で外から扉を開けようとしていた。
「おい、お前。そこで何をしている?見張りはどうした?」
無言で飛びかかってきたので、一閃をかわして手刀で意識を刈り取った。その後、アルテとともに尋問を宿の一室で行ったが自害されてしまった。毒を奥歯に仕込んでいたようだ。伯爵夫妻が無事でよかった。新人が2人減ってしまったが、その後は無事に伯爵領の屋敷にたどり着いた。
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