12話 スタンピード発生
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ガラテアと順調に馬を走らせて大陸を横断している。数百年前まで、この辺りはとても栄えており、大陸の中心地だったが、今では草1本生えていない荒れたところだ。
「もう少しで旧王都跡にたどり着くから頑張りたまえ、少年。」
「その少年というのはやめろ。俺の名前はルークだと何度も言ったが……。」
このやり取りはしょっちゅう行っている。最近は、少年と言いたいだけなのだと思い諦めている。俺がそのうち大人になれば言わなくなるだろう。今はぴちぴちの12歳だからな。
ガラテアは、16歳だったので、年齢を考えれば俺達はやはり異常だろう。異常同士だから気が合うところもある。もう少し大人になれば、ガラテアを抱くことも出来るが、周囲は猛反対するだろうな。
旧王都に入って辺りを見回した。昔、数百年前に俺が住んでいたところだが、当時の面影は何1つ残っていなかった。崩れた建物の一部や砂が積もっていた。かつての栄華は完全に消えていた。
中央付近まで進むと、囲まれた巨大な鉄の壁を見ることが出来た。この壁をノア帝国の初代皇帝が晩年に安全の為に作らせたらしい。この中には、ダンジョンがあるらしく、隕石衝突後に壊れたダンジョンの魔物を閉じこめている。
そもそもダンジョンを攻略出来ればよかったが、難しいのだろう。ガラテアが気配を確認したが、俺達以外は誰もいなかった。しばらく壁を眺めていたら、壁を叩くような大きな音がして、壁の一部が完全にはがれた。中から現れたのは、おびただしい数の魔物達だった。
「スパッ」と即座にガラテアがスキル極一閃を使ったのがわかった。複数体の魔物が真っ二つになっていたが、中からおびただしい数の魔物がこちらに向かってきている。
「ルーク、ここで食い止めるぞ!この数はおかしい。スタンピードだ。」
頷いたが、この数は無理だろう。奥から数万どころか数十万の魔物が次から次へゆっくりと、壊れた壁から外へ向かってきている。この魔物が世に放たれれば人類は滅亡するかもしれない。
ゆっくりと魔物の前線を上げさせない為に俺達は前にしか進めない。ガラテアの邪魔をしないように俺もルビーのナイフで応戦したが、きりがなかった。これには困った。中には強い魔物もあり、ガラテアの攻撃をかわす魔物もいるので俺が対応した。
弱い魔物であれば、スライム、トレント、ゴブリン、コボルト、ウルフ、レッサーウルフ、オーク、シルバーウルフ、巨大スライム、毒スライム、ゴーレム、ゴブリンキング、クロコダイル、ゾンビ系である。
えたいのしれない巨大な魔物マンティコアが現れた時は流石にびびったが……。とにかく数が多く、倒せば倒すほど徐々に魔物が強くなっている気がした。翌日になっても魔物討伐は続き、俺もガラテアも傷が増えてきた。ガラテアがハイヒールを使えたので治ったが、精神的な疲労は積み重なってきた。俺のポーションも使いきってしまった。
アースドラゴン、グリーンドラゴンも現れたがガラテアが単独で首をはねていた。死を恐れずに向かってくる魔物は怖い。レッドドラゴンが現れて、即座にブレスをこちらに向けてはいた。周辺にいる魔物を消し炭にしていたが、ガラテアが転移を使い自身と俺を移動させて回避した。
ブレス後に同じ位置に戻り、ガラテアが即座にレッドドラゴンの首をはねた。俺も雑魚の魔物は討伐したが、徐々にガラテアの足を引っ張りはじめた。この龍は、ダンジョンではなく、昔、龍の爪とよばれていた山から来たと思った。そんな話をきいた事があるからだ。
「ガラテア!きりがないぞ。どうするつもりだ。」
「しゃべるな!少年。無駄に体力を使うな。」
ガラテアの言うとおり、翌日まで討伐は続いたが、まだ終わりは見えない。魔物の数は、減ってきたが魔物の質が上がっている。すでに壁の中に俺達はいるが、両脇は魔物の死体が積み上がっている。前に前に進んでいたところ、奥に見たこともない白金の様な色をした龍が見えた。
目があった様な気がした瞬間ブレスを放たれていた。ガラテアのスキル転移で俺は無傷で回避したが、ガラテアは俺をかばった為に少し遅れて背中を焼かれていた。ハイヒールを唱えてすぐに回復していたが、あれを倒すのは無理だろう。
「ルーク、あの龍は見たことがないだろう。かつて壁が壊された時にあの龍がいたと記録に残っていた。学園でも必ず習う伝説のミスリルドラゴンだ。私でも勝てるかわからない。以前は、運が良く暴れ回ってから、勝手に消えたらしい。もしかしたら、ダンジョンの最終ボスかもしれんな。それなら納得の強さだ。これから私が単独で討伐に向かう。ルークはここに残りなさい。」
「あの龍の強さは異常だ。あれは人間では勝てない。やめておけ。もし行くなら俺も連れていけ。」
「あの龍は、何百年も生きている伝説だ。倒せる可能性があるのは、私以外にはいないだろう。今後も現れる保証はない。それにダンジョンボスなら壊れたダンジョンの問題も解決するからな。大丈夫だ。心配するな。必ず生きて戻る!」
「……好きにしろ。なるべく早く迎えにこい。」と言いガラテアを見送った。それからどれだけ時間が過ぎたのだろう。この空間は、時間の流れが外と同じとは限らない。眠いが寝ることも出来ず、ただひたすらガラテアを待った。
その時は突然現れた。先ほどの場所に立っており、周りを見渡したが生きている魔物の姿はなかった。少し奥へ歩いて進むと銀色の蛇の様な無残な姿になったミスリルドラゴンが転がっていた。そのすぐ側にガラテアの姿が確認できた。
「来たか!」と声が聞こえたと思ったら、そのまま後ろに倒れたので急いで近づいて体を支えた。明らかに血を流しすぎている。
「ガラテア、ハイヒールを使え!早くしろ。死ぬぞ。」
「ああ、もう魔力は残っていない。それに傷が治っても血は戻らない。実はもう目も見えていない。少年ともう少し一緒にいたかったな。実は私は、寂しがり屋でな。ずっと孤独だったんだ。勇者という立場を得てから誰も私と対等に口をきく奴はいなかった。でも、少年は違った。それがとても心地よかった。ずっとお前といられたらよかった。」
「もうしゃべるな。俺の名前は……。」気付けば、本能的に今生の別れと理解しているのか、涙が自然と出てきた。
「俺も父親を失ってから孤独だったが、お前に拾われて良かったと今なら思える。俺を一人にするつもりなのか?」
「願わくは少年が大人になり、学園で学び、仕事をして、恋をして子供が出来る普通の生活をしてほしい。時間だ。両親や兄達にガラテアは幸せだったと伝えてくれ。勇者ガラテアはきちんと役目を果たしましたと……。」
その後、ガラテアが静かに息を引き取った。勇者、勇者と騒がれていたが、その体は今の俺より少し大きい程度だった。しかし、その背中はこの世の誰よりも強く、頼りがいがあった。
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