11話 ミスリル帝国に加勢する
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ひたすらガラテアと共に馬に乗り北上している。若くて体力もある軍馬を借りてきたので、とても順調に進んでいると思われる。所々で、休憩を入れつつ夜は辺りが完全に見えないのでテントで2人で休んだ。魔物が出ても結界石のテントがあるため、簡単には破られることはない。
軽食を食べて休んでいるときに気になる事をガラテアに聞いてみた。
「なぜ、俺をあの時殺さなかった?あの時俺はお前を殺すつもりでいたぞ。」
「私には、両親がいて兄が2人いる。伯爵家であり、不自由な生活はしてこなかった。少年は、違うだろう。唯一の肉親である父親を愚かな兵士に殺された。悲しみを理解できないが、一度くらいチャンスを与えてもいいだろうと思ってな。少年を助けるために、色々と根回しなど大変だったんだぞ。我々の兵士を殺し過ぎていたからな。」と言い笑っていた。
翌日もひたすら北上を続けていたところ、遠くに人の集団が見えたので、ゆっくりと近付いた。目的の軍ではなく、盗賊が商人か旅人の馬車を追いかけているようにも見えた。
「ルーク、寄り道していくぞ!」とガラテアが俺に声をかけてから馬車に向かって馬を走らせた。ノア帝国の領地なので、この国の民が、新ガイア帝国をすみかにしている盗賊におそらく襲われたのだろう。
敵の数が10人に対して、馬車は見える範囲で2人だ。捕まれば命はないので必死に逃げている。俺とガラテアの馬はとても優秀なので、すぐに追いつく事ができた。
「おい、貴様達楽しそうに何をしているんだ。私も混ぜてくれないか?」
「獲物が逃げちまうだろう!話しかけるな。な、なんだ、ぎゃー。」
ガラテアが魔力銃で敵の頭を撃ち抜いた。この魔力銃は、俺の前世の記憶にはないので、最近開発された武器だろう。自身の魔力をこめると矢のように発射する仕組みだ。人それぞれであるが、魔力の質や量により威力が変わるらしい。俺もほしいと思った。いくらするんだろう。
俺も針を投げて応戦した。針は接近戦で急所を一撃で刺すには向いているが、離れている場合は怪我させる程度なので、結局近付いてからとどめをナイフで刺した。訓練していない盗賊など俺達の敵ではないので、すぐに討伐する事が出来た。
馬車から商人風の男と女が降りてきた。奥には子供の姿も見えたので、俺達が近くを通ったのは運がよかったのだろう。
「怪我はないか?」とガラテアが聞いた。
「このたびは、命を助けて頂き本当にありがとうございます。何かお礼がしたいのですが?近くの町までご案内してからでもいいのですが。」
「礼は不要だが、こいつらの片付けを頼みたい。それから、この付近で戦争があると聞いたが、軍など見ていないか?」
「それでしたらノア帝国の大軍をこの目で見ました。ここから北東方面に向かって行きました。新ガイア帝国と戦争でもするつもりでしょうか。」
「そうか、ありがとう。」
ガラテアが急ぐように言っていたので、もしかしたらミスリル帝国が危ないのかもしれない。昔、新ガイア帝国は巨大な鉄の壁で国境が塞がれていたはずだ。今、どうなっているか知らんが……。
翌日の昼頃、国境の壁を右手にひたすら進んでいると、遠くで大きな塊の集団が見えた。正面を新ガイア帝国の軍がミスリル帝国軍を抑えて、横っ面をノア帝国軍が攻めていた。ミスリル帝国は、思わぬ伏兵に苦戦を強いられていた。
「ルーク、後ろからノア帝国軍を叩くぞ。ミスリル帝国が負けると大変な事になるからな。行くぞ!」
「あぁ、わかった。これは大変だな。」
ノア帝国軍の背後からガラテアがスキル極一閃を使った。放たれた斬撃が兵士の胴体を真っ二つにしていた。このスキルの恐ろしいところは、連続で何度も使えるところだ。流石、勇者と言われるだけある。既に気づかぬうちに100人はあの世にいっている。
こちらに気付いて、ガラテアのスキルをかいくぐってくる者がたまにいるので、その相手を俺がする。ルビーのナイフと針を投げつけて何とか倒した。中には、現時点では俺より強い奴もいたが、戦闘経験の差でかろうじて倒した。結構危なかった。ガラテアは、好き勝手に殺し回っている。あれだけ強いと何か楽しそうだな。
数千人倒したあたりで異変に気づいたノアの指揮官が、こちらに兵を差し向けてきた。ガラテアを見ると、何か策がありそうなので任せた。スキル転移を使い数千人引き連れて、別の空間に移動した。ガラテアのスキルであり、本人は出入り自由であり、ここに閉じ込めておけば俺達は餓死して死ぬ事もある。一度入れば、ガラテアが解除しない限り絶対に出る事も出来ない。
その後の動揺したノアの兵士達など俺達の敵ではなく圧倒した。ガラテアがスキルを解除すると先ほどの場所に戻り、そこには死体の山が出来ていた。ノアの兵士の士気が下がったのは確認できたので、十分な仕事をした。ガラテアがこれほど強いとは思わなかった。歴史上でも人類最強なのは間違いないだろう。
「行くぞ、ルーク!」と声をかけられたので、後を追いかけた。
「どこに行くつもりだ!」
「ミスリル帝国軍に挨拶してくる。場合によっては軍に加わって新ガイア帝国の討伐に加わる。」
まだまだやる気のあるガラテアについて行く事にした。確かに、万が一ミスリル帝国が負ければ今度はジェノム王国が間違いなく攻められるだろう。落としどころをつけなくてはな。ミスリル帝国も手柄がほしいだろう。最低でも中央大陸はほしいはずだ。ノア帝国の兵士に帰る地はない。
その後、俺とガラテアがミスリル帝国軍に加わり勢いを取り戻し、一気に新ガイア帝国とノアの兵士を追い返した。散り散りになった兵は多数が新ガイア帝国に逃げていった。ノア帝国内に逃げた兵士は、ミスリル帝国が順次討伐する予定らしい。盗賊に成り下がるからだ。
ミスリル帝国軍から離脱した俺とガラテアはジェノム王国に旧王都跡を経由して帰る事になった。この時、いったん帝都ノアに2人で戻っていればと何度もこの後の人生で俺は後悔した。
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