9話 ガラテアの策略 その2
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ガラテアは、ルークが移動石で離脱した事を確認した後、静かに扉を開けた。鎧を着た頑強そうな男と脇に控える男、宿の周りには8名が待機している。こいつらは始末した方がいいだろう。
「こんな夜遅くに、どちら様でしょうか。」
「申し訳ございません。賊を捜してまして、何でも目撃者によると若い女性と少年の格好をしている冒険者風を装っているとか。心当たりありませんか?」
「ないと言ったらどうする?」
「そんなはずはありませんよ。この男は、あなたの顔をご存じでして、ジェノム王国の勇者ガラテア様でいらっしゃいますね。遠くに見える軍はあなたが連れてきたのですよね?我々についてくれば、危害はくわえませんよ。そうでなければ、力ずくで連れて行きます。」
「なら力ずくで連れて行けばいいだろう。」
その瞬間に脇にいた男が口から針をふいてきた。簡単にかわしたが、頑強な男が長剣を鋭く振り下ろしてきた。どうやら私をこの場で殺すつもりのようだ。
スキル転移を使った。これは、移動石とは異なり、自分で指定したエリア内にいる特定の人物を私の作り出した世界に飛ばす事が出来る。この世界から出るためには、私を殺すか、もしくは私がスキルを解除するしかない。
この世界は、地平線がどこまでも続く何もない所だ。戦闘を行うには適している。10人のノアの兵士を私の世界に招待してあげた。兵士達は自分の身に何が起きたのか理解出来ていないように見えた。高みからの見物である。魔力銃を構えて、兵士の一人の心臓を打ち抜いた。残り9人である。
同様にして5人を殺したところ、私の存在に気づいた兵士がいた。残りの5人がこちらに向かってきたので、王国最強と言われているミスリル製の剣リアを抜いた。この剣は、ジェノム王国の宝物庫にあった物で、私が勇者という事がわかり国王より頂戴した。私が勇者をやめるときは、返還するつもりだ。
スキル極一閃を使った。こちらに向かってきた5人の兵士の体が真っ二つになった。この技は、斬撃を飛ばす技になる。私のスキル転移では、敵を倒し終えると自動的に最初にいた元の場所に戻ることになる。つまり、宿の周りは死体だらけだ。
窓から外に出て、屋根伝いに走りながら、目立つ事なく隠れられる場所を探した。大きな屋根の上でもいいが、明日の日中を過ごす事を考えて、教会の天井裏に侵入して夜まで待機する事にした。
軽食を食べながら、思い出すのはルークの事である。見た目は少年だが、思考の深さやスキル刺突の鋭さは目を見張るものがあった。戦闘センスも抜群であり私を凌ぐかもしれない。言葉遣いもあまりよくないが、対等に扱われている感じも悪くない。
まだまだ伸び代があるので、今後の活躍に期待している。戦争が終わって落ち着けば、どこかの教育機関に通わせても面白いかもしれない。面白い拾いものをしたと思うとうれしさにやけてしまう。他人に興味を持つのはルークが初めてだ。
翌日の朝、外の様子がいつもより騒がしい感じがした。いたる所で兵士が巡回しており、誰か探しているように見えた。私は、夜まで動くつもりはない。1つ困ることがあるとすれば、トイレである。仕方ないので、天井裏の隅で用を済ました。
夜になり辺りが静まり返った所で行動を開始した。屋根伝いに走りながら、南門を目指した。途中、屋根のない所は仕方ないので下りて歩いた。南門の側まで来ると、兵士が6人ほど辺りを警戒していた。
仲間を呼ばれると困るので、スキル転移を使い、私の世界にご案内した。あっさりと全員仕留めてから、帝都ノアの南門の内側にたどり着いた。リアを引き抜いて、鎖と南京錠を切り落とした。小さい方の扉は簡単に開いた。しばらく待っているとルークと見たことのある兵士達がやってきた。
眠いのですぐに寝れそう…




