8話 最下層にあるのは
リオンSide
ダンジョンに潜る時は調理器具を欠かさず持っていく。これはダンジョン料理人であるあたしの命、魂のような物!
あたしは辺りに散らばる食材の宝庫、もといボアーを収納していく。本当このスキルのおかげで、持っていくのは調理器具ぐらいで助かってる。
さてやりますか。とりあえず神城君が倒してくれた1体から良さそうなのをチョイスして……これが良いかな?他は全部収納っと!
カバンから調理器具を取り出し、コンロもセットすれば準備OK。まずはボアーに限らず、食材に対して欠かさずにやらなきゃいけない事。
「不浄なる物を取り除きたまえ……アンチドート!」
目を閉じて集中すると魔法を詠唱して、あたしのボアーに向けられた両手から黄緑色の光りが発せられ、ボアーの中にある僅かな毒を取り除く。
可能な限り新鮮にして、安全な物を食べてもらいたい。食中毒とかを起こさせない為にアンチドートで、完全に毒を取り除いてから調理するのが、ダンジョン料理人の常識だから!
毒を取り除いてから、まな板の上で包丁を使い、ボアーを捌き始める。とりあえず神城君はすっごい食べるから、大きく切り分けておこう。
フライパンで猪肉を両面しっかり焼いて、更に両面を簡単に塩コショウでシンプルな味付け。これをお皿の上に盛りつけて完成!
リオン特製のダンジョンボアーステーキ。ダンジョンでもステーキ食べたいなぁ、となった時にオススメの一品ね。
「はい、神城君どうぞー!」
「うわ、美味しそうな匂い……いただきます」
うんうん、反応は上々。神城君はあたしが用意した皿を箸と一緒に受け取ってステーキにかぶりつく。
「……やわらかっ、美味しいねこれ!」
大成功で良かった!やっぱり美味しい物を食べる人は良い顔をする。これが料理の醍醐味よねー。
ぼたん鍋っていうのも、ダンジョンが出来る前から普通にあったし、猪肉は活用次第で絶品料理に化けるとあたしは思ってる。ダンジョンボアーステーキは神城君から好評で、彼の食べる手は止まらない。
本当見かけによらずよく食べる子で、その上強い。多くのボアー達がさっき出て来た時は正直ちょっと焦ったんだよね。
Gランクダンジョンのモンスターでも、塵も積もれば山となるって言うし。あんな多く来られたら、あたし1人だと間違いなく逃げ出す。
それを神城君は広範囲で強い魔法を使って一層したり、彼は一度の攻撃も受けずに多くのモンスターを倒していた。
本人曰く昔から戦ってる相手だから慣れてた、と言うけどレベル5であそこまでの多くの敵を一掃は難しいと思う。最初の身のこなしといい、やっぱり神城君はただ者じゃないよね?
「えーと、リオンさん。おかわりとか……いけない?」
あれ、この子もうステーキ1枚食べ終わっちゃった?あたしめっちゃ大きめに切ったつもりだったのに!
「大丈夫! 神城君のおかげでボアー大量ゲット出来たからまだまだ行けるよー!」
食べたいという食欲に応えてこそ料理人。あたしは彼の期待に応えて、追加のボアーステーキを焼き上げる。
結局彼は大きなステーキを5皿ペロリと平らげてしまう。あの小さな体の何処に消えてくの?何かマジックでも見てるみたい。
明弥Side
美味しかったぁ〜。
牛肉のステーキに勝るとも劣らない程、柔らかくジューシーで食べやすかった。勿論料理人であるリオンさんが食べやすいように作ってくれたおかげで、僕はステーキ5皿を調子に乗って食べてしまう。
正直あと2皿食べようか考えたけど、そこまでリオンさんに作らせる訳にいかないから5で止めておく。
これでまた先に進む事が出来るので、僕が先頭を歩いてリオンさんが後ろから続き奥へと進む。また大量のモンスターが待ち受けているんじゃないかと、細心の注意を払うが出て来る気配は今の所無い。
まさかさっきので一気にダンジョン内のモンスター倒して、いなくなったパターンかな?いや、息を潜めて不意討ちでも狙って来るかもしれない。気を抜かず僕とリオンさんはこのダンジョンの最深部を目指して歩き続ける。
本当に最深部とか初めてだから、どうなってるのか楽しみ半分と怖さ半分っていう今の僕の気持ち。これで何も無くてガラーン、だったら拍子抜けだ。
「ダンジョンの最深部はボスモンスターが待ち構えてて、道中のモンスターよりずっと強いって言われてるから気をつけてね」
「うん、どんなボスが待ってるか分かんないけど……」
リオンさんから改めてボスモンスターについて教えてもらい、僕は頷いた。ダンジョン配信者の動画を見て、ボスの事は大体知っている。
確実に言えるのは通常の敵より大きいという事。やっぱゲームとかでそういうのって大きなボスが出て来るもんだからね。これでどれくらい大きく、どんなモンスターが来るのか気になる。
まさかGランクからごっついゴーレムとかドラゴンとか出ないよね!?そういうの僕のフラム跳ね返しそうで怖いんだけど!
RPGとかでその2体がどんだけタフなのか、思い知らされてるから!
そういうのは出てきませんようにと、祈りながらリオンさんと共に奥へ進むと、細い通路から広々としたフロアに出る。
さっきまで土の地面だったのがコンクリートみたいな、硬い地面が僕の靴裏から感覚が伝わって来た。周囲を見ればまるで神聖な神殿っぽい感じで、いかにも出そうな感じだ。
「……これでボスいないパターンとかあったりして?」
「多分無いと思うよ」
リオンさんが場を和ます為か、冗談っぽく言う。これでボスがいなくて何も無し、よし帰りましょう!とかなったら、このフロアの雰囲気なんなんだよ?で大きな疑問残ったまま終わるよ。
「モォォォ……」
冗談みたいな事をリオンさんと話していたら、奥から唸り声のような物が僕の耳へ確実に届く。モォ?とか聞こえたけど、まさか牛……にしては僕のイメージにある牛とは違う感じだった。
「ええと、ひょっとして最後に待ち受けるのは牛さんとか?」
僕と同じ事をリオンさんも考えてたようで、僕の後ろに隠れたまま様子を伺う。
そこへ唸り声の正体が、僕達の前に現れる。
「ブモォォォーーー!!!!」
僕達は雄叫びを高らかに上げるモンスターを見上がるしかない。それだけの高さと大きさで、目の前に来たのはダンジョンボアー。それが巨大化したような姿で、ボアーの親玉みたいな存在だ。
僕はこの巨大イノシシが、今回のダンジョン最下層のボスだと確信。戦闘する気満々のボスと向かい合う格好となる。見るからに厳つい感じで強そう。
とりあえず体力ゲージあったら絶対長くて多いよね!?




