6話 手続きを済ませてダンジョンに挑む
ランクを持ってダンジョンに行けるようになってから、初めての仲間。それが姫島リオンさん。今までずーっと1人だったせいか、一緒に潜る仲間が出来るというのは、僕にとって結構な感動があった。
あ、友達誰もいなくて一人ぼっちとかじゃないからね!?ちゃんと学校に仲の良い友達とか居たし、ダンジョンに一緒に潜る仲間がいないだけだから!
チンピラな男達に襲われてた女性を助けたのが切っ掛けで、そこからスイーツデートに誘われてからの、まさかパーティ組もうと誘われた時は正直ビックリしたなぁ……。それで多分浮かれたりタダなので、ケーキは調子に乗って20個完食。
タダ券という素晴らしい文化を作ってくれた人ありがとう!
とりあえずリオンさんとはスマホで連絡先を交換して、帰る時に凄い偶然が起こった。僕とリオンさんの住んでいる場所が同じ町内というミラクル。おかげで帰りの電車もずっと一緒で、その日はかなり充実した1日になった。
翌日、僕は叔父さんの経営するダンディーンという名の喫茶店に来ていた。
「ほう〜、明弥がダンジョンで女の子を助けてそこからパーティ結成ねぇ? 小さかった……いや、今も小さいがお前もやるようになったなぁ」
カウンターでコップを磨く白髪混じりのオールバック。彼がこのダンディーンのマスターで僕の叔父、神城高大だ。両親が行方不明になって、僕がスキルを身に着けて以来、高大叔父さんの家族の元で世話になっている。
ちなみにダンディーンは経営する自分がダンディーだから、そう名付けたと笑いながら言われた事あるけど本当かは知らない。
というか叔父さん、そこは小さかったで良いじゃん!?今も小さいは余計!
「ナンパとかじゃないからね? 向こうから誘って来たから」
「つまり逆ナンか。益々やるじゃないか! 俺の若い頃を思い出すなぁ〜」
高大叔父さんはコップを拭きながら、ニヤニヤと面白そうに笑っていた。絶対からかってんなぁ?超能力で心とか読めなくても10年以上一緒に居るから、分かっちゃうよ!
というかこの場所でその人と合流する事をスマホで連絡し合ったし。からかいが加速しそうだなぁ。
「こんにちはー」
喫茶店のドアが開かれると、カランコロンというドアベルの音が聞こえて人が来た事が伝わる。それと共に聞き覚えのある女性の声が聞こえると、思った通り。リオンさんの姿があった。
「やあいらっしゃい、キミが明弥の言っていたガールフ……」
「この人が昨日会った僕と組んでくれるパーティメンバーだよ叔父さん!」
危なぁぁぁ!叔父さん何言おうとしてんのさ!?出会って1日だし、リオンさんの迷惑にもなっちゃうだろうし!色恋沙汰が好きなのは良いけど、もうちょっと考えて欲しいよ……。
「姫島リオンです。神城君の叔父さん初めまして」
リオンさんは高大叔父さんに礼儀正しく挨拶。さっきの言葉は聞かれてなかったみたいで、一安心だ。
「へぇ~、この喫茶店もうそんか長いんですね。凄いなぁ」
「そうそう、不景気の時もダンジョン出現の時もしぶとく生き残ってやったよ」
ミルクティーが叔父さんからリオンさんに振る舞われ、飲みながら彼女はダンディーンの歴史について聞かされる。
ちなみに僕はボリュームあるカツサンドとオレンジジュースで腹ごしらえだ。叔父さんのカツサンドはパンがフカフカでカツが柔らかくジューシーと、絶品で僕のお気に入り料理の一つとなっている。
ちなみにダンジョンサンドと命名したら、皆が面白がって注文して売れてるらしい。
「ダンジョンが当たり前の日常となって世界は色々変わっていくけど、此処は変わらずホッと出来る場所にしたいと思ってね。まぁ隠れ家的な喫茶店さ」
「隠れ家な喫茶店って素敵だなぁ。あたしはそういうの好きですよ」
美味しいカツサンドを食べながら、僕は改めて店内を軽く見回す。
確かに昔ながらのレトロな雰囲気の店で、店内には静かな曲が流れてる。音楽には明るくない僕だから、何の曲かは分かんないけど。
「そうだ!神城君、パーティ組んだらチーム登録しておかないと」
「あ、忘れてた……」
僕がカツサンドを食べ終わったタイミングで、リオンさんが話しかけるとチーム登録について言われる。
「おいおい、チームを組んだらチーム登録は今や常識だよ? それでランクを上げたり功績を上げたりすれば、国から報酬を得られたりするんだ。ソロが良いと拘る人以外はやっとかなきゃ損だからね」
叔父さんの言う通り、チームを組んだなら登録して損はない。ずっとソロでやってたから、その辺りの考えが抜け落ちてたみたいだ。
「じゃあ、チーム名とかどうしよっか?」
「えっと〜……」
リオンさんにチーム名について聞かれると、僕の頭は激しく悩まされた。
全く頭に無かった。昨日リオンさんと会うまでチームを組むというのを、そもそも全然考えていなかったから。どうしよ、皆が目にするだろうから絶対変な名前とか付けられないよね?
「付けられないなら俺が名づけ親になろうか? ダンディーズとか」
「あはは、大丈夫です……」
勘弁してよ叔父さん……リオンさん苦笑いじゃん。
とりあえず決めないと、ダンディーズとかいう訳分かんないチーム名にされてしまう!急に危機感を覚えて僕は必死に名前を考える。
「うーん、良いの浮かばないなぁ〜」
リオンさんもかなり考えているみたいで、腕を組んで頭を悩ませていた。
何がいいかなと、僕も考えている時だった。
「あ、閃いた! 無限大の軍団!」
「え?」
閃いたというリオンさんのチーム名を聞いて、何それ!?となってしまう。無敵の軍団とかじゃなくて無限大の軍団?
「ほら、あたしらチーム結成してどうなるか分からないから可能性は無限大な訳でしょ? ドドーッ!とチーム参加増える可能性あるし、無限に成長するかもしれないから!」
かなり無茶苦茶行ってるように聞こえるんだけど、かと言ってそのまま無限大の軍団っていうのも何かなぁ。
「それに明弥君ってJTuberのグルーでもあるんだよね? 昨日ケーキすっごい食べてたし、動画内でおっきな料理食べてたから胃袋無限大で底無しじゃん?」
「食べてたけど僕の胃袋が底無しって事は……」
「あ、でもそのまま無限大の軍団って付けちゃうのもあんま馴染まれないかなぁ? そこもうちょっと変えないと」
そんな事ない、という僕の言葉を聞かずにリオンさんはチームの話をどんどん進めていく。
勝手に僕の胃袋を底無しにされてるけど、限界あるからね!?無限大は無理だよ!大食いスキルに胃袋大きくなるっていうバフとか無いから!
「じゃあアンフィニアーミーとかどうだい? 無限大の軍団だからこうなると思うし」
「あ、マスターそれ採用です!」
何か決まっちゃったよ……結局これ叔父さんが名づけ親になったパターンじゃん。無限大の軍団と言ってもたった2人で、全然何も無限が無いし。
でも他に何か良い名前が無いのも事実、というかグズグズしてたらダンディーズにされかねない。その名前にされるぐらいなら、まだアンフィニアーミーの方が良い。
「じゃあ名前が決まった所でチーム登録っとー」
決まった途端、リオンさんの行動は早かった。自分のスマホを取り出せば手早く、チーム登録サイトの方にアクセスしてチーム名をスムーズに打ち込んでいく。
スマホ一つでチーム登録をちゃちゃっと済ませる。これがスマホの無い異世界とかだったら、ギルドとかそういう所に行かなきゃ駄目だろうけど、これが現代の良い所だ。なのでチーム数は有名どころだけでなく、僕らみたいな無名も含めれば相当多いと思う。
「これで良し! さぁさぁ神城君、のんびりしてたら日が暮れるからダンジョン行くよー」
「あ、わ、分かったから待ってって!」
僕は少しせっかちな新しく出来た仲間と共に、店を出てダンジョンを目指して歩き始めた。




