54話 仲間って良いな
『レベルアップしました』
『レベルアップしました』
『レベルアップしました』
それぞれのスマホに揃って通知が届く。
僕のレベルも上がってついに10、2桁に届いてくれて1つの達成感を感じる。
「巨大牛肉収納ー!」
リオンさんは黒牛の巨大ボスを収納。
多くのミノタウロスを収納してきたし、当分は牛肉に困る事が無い。
「……結局お前一人でDランクのレアフロアボスを倒すとは、神城……どれだけ強くなるんだ」
「僕一人で倒した訳じゃないから、それより護君は大丈夫なの?」
「どうという事はない」
「今回復してるから大人しくしててー」
護君は驚いた顔で僕を見ながらも、黒いミノタウロスから受けたダメージで、横たわったままだ。
それをリオンさんがトリートの回復魔法を施し、治療を行なっている。
とりあえず思ったより元気そうで何より。
どれなけ強くなるか……。
確かにレベルが上がったせいか、僕の中で魔力が研ぎ澄まされ、強くなったっていう手応えをより感じる。
その結果、強いであろうDランクのレアボスを……いや、ソメイユが運良く効いてああなったんだと思うし。
「俺強くなったぜイェー!」とかこれで調子に乗って、駄目になるのも良くない。
強くなっても、お腹空いたら何も出来ない体なのは変わらないんだからね。
「護君の治療が終わったら今日はもう切り上げましょ」
「いや、俺はまだやれる……」
「時間もう迎えてるし」
護君は怪我なんか問題ないと、続ける意思を見せる。
その護君へリオンさんはスマホの時計を突きつけ、時間が既に午後6時を過ぎている事を教えていた。
「ボス部屋ニャー! あれ?」
そこに勢い良く飛び込んで来たのは、巨大ハンマーを肩に担ぐシュンちゃん。
「出て来る気配がありませんね……って、先にあなた方来てたんですか」
続いて暗夜さんも登場。
アイアンシールドもこの時間まで粘って、レアモンを狙っていたみたい。
「ボスが出る気配無いって事は、お前ら倒したのか! 先越されちまったぁ〜」
フロアボスが出て来ないのを見て、そう察した盾山君が頭を抱える。
「あー、ボスならもう明弥君が倒しちゃったよ?」
「マジかよ! って護は負傷してんじゃねぇか!?」
リオンさんの言葉に驚いたり、護君の負傷に驚いたりと、忙しいなぁ盾山君。
「手伝いましょう」
「あ、助かりますー♪」
護君の治療に暗夜さんも加わって、回復が進む。
結局アイアンシールドと合流後、2チーム一緒にダンジョンの外へと帰還する事になった。
向こうがレアモンをどれだけ狩れたのか、気になりはしたけど深くは聞かない。
「うちは相当狩れたぜ? 優勝あるかもしれねぇぐらいにな」
盾山君は自信満々みたいで、シュンちゃんや暗夜さんも自信がありそうな顔をして、それだけ多く狩ったという訳か。
「うちだって多く狩ってるもんね?」
「まぁ、どうなんだろう〜……?」
正直他のチームがどれぐらい狩っているのか、全く分からない。
多く狩ったつもりだけど、滅茶苦茶凄い人が100以上行ってるとかあるかもしれないし。
周囲の具体的な数が全然分からない状態だ。
「待つしかないな、果報は寝て待てと言うから」
リオンさんと暗夜さんの回復のおかげで、護君は自分で歩けるぐらいに回復していた。
僕達に出来る事はもう無いし、言われた通り待つぐらいしか出来る事は残されていなかった。
「どんな方法で発表されるのかな?」
「そこは向こうも何も言ってませんし、サイトの方にも載ってませんでしたから。それも待たなければなりません」
リオンさんは何かと物知り博士な暗夜さんに聞くけど、彼ですら分かっていなかったらしい。
え、発表まで何か怖いんだけど。
「あ、公式サイト更新されてるニャー!」
その時シュンちゃんがスマホでサイトを見て、更新されている事に気づく。
僕も見てみると、秋葉原のラビリントカンパニー前に特設会場を設置するので、そこへ参加者は集合するようにという公式からのお知らせだった。
「そこで優勝発表するって事かね?」
「いや、ひょっとしたら……この大会は実は罠で、「お前らのダンジョンで戦い、鍛え上げたパワーを奪うのが目的だったのだ!ガハハハ!!」的な感じで騙される可能性も!?」
リオンさん最近何のラノベ読んだの?
参加者全員集結って事はAランクの強者とか、そういうのも集まって、それ考えてる人が数の暴力でやられそうな未来しか見えないから。
ってそんな事を真面目に思っていたら、駅に到着してたし。
「あ、折角だからさ。アイアンシールドの皆もダンディーンって喫茶店で一緒に夕飯食べない?」
「一緒にご飯!? 食べたいし、お腹空いたニャー!」
「まぁ……帰っても1人ですし、たまには良いでしょう」
「おっし、護の事もあるし付き合うか!」
「……そこまで重傷じゃないからな?」
皆で夕飯、それを聞いて僕は一応高大さんに連絡する。
今日他の仲間を3人連れてきていいかと、伝えれば連れてきなさいという、早苗さんの大きな声が電話越しでハッキリ聞こえた。
ダンディーンに皆で行く事確定だ。
「うんめぇ〜! 早苗さんの飯最高!」
「まぁ嬉しい♪ まだまだあるからどんどん食べてねー」
大所帯でダンディーンへの帰宅となった僕達。
高大さんと早苗さんの手で作られたパスタやサンドイッチ、絶品洋食料理が疲れた体に染み渡る。
「いっぱい食べれば大きくなって、ハンマーも振り回せるぐらい強くなれるニャー!」
「でもうちのお兄ちゃん、スーパーの買い物袋持つときも腕プルプルでしたけどねー」
こら甘利、シュンちゃんへ勝手に僕のみっともない面をバラすな……!
とりあえず立樹ちゃんと一緒に楽しく食事出来てるようで、何よりだけどね。
「今でこそダンディーンだったけど、前はシブミーンとか考えたんだ。中年の渋い大人が経営する喫茶店って事で」
「はぁ……」
高大叔父さんは何を昔の黒歴史を語ってんのさ、暗夜さん困ったような感じになってるし。
その横で護君は黙々とサンドイッチを食べていた。
「あ、そうだ」
僕はふと思い出す。
リオンさんから何時も貰う手作りのこしあんおはぎ。
今日は食べる前にレアボスを倒してしまったから、出番無かったなぁ……。
「明弥君、ドンドン強くなっちゃってるから、もうおはぎ食べる前に終わっちゃったんだね。無くて……大丈夫になったかな?」
おはぎを取り出す僕を見て、リオンさんは気の所為か少し寂しげに笑う。
まるでもうおはぎは無くて良い、そこから旅立つ時みたいな空気が流れてくる。
そんな事は絶対あり得ない。
「絶対いるよ、僕は……リオンさんの作るおはぎが今まで食べた食べ物の中で一番好きだから。なんだったらこれからも毎日作ってほしいぐらいって思うし」
「え!? 毎日って……」
「あ……!」
僕の言葉を聞いたリオンさんの顔がみるみる赤くなり、僕も自分の言った事に気づくと顔が真っ赤に染まってしまう。
「お兄ちゃん今愛の告白しちやったでしょー?」
「ハッハッハ、ついに君にも本当の春が来たか!」
「まあ! 今日は赤飯ね!?」
「……そういう関係だろうなとは薄々思っていた」
「とってもお似合いだと思います!」
「おいおい、食事で堂々とイチャつくとか熱いじゃねーの」
「ニャアアア〜! ラブラブニャー!」
「お幸せに、とお伝えした方が良さそうですね」
その場に居る全員が勝手に祝福してきて、僕もリオンさんも大慌てする。
「ちょ、皆そんな……!?」
「お似合いとかお幸せにって、ちょっとー!?」
ダンディーンは終始賑やかな声に包まれていた。
この後、デザートとしてリオンさんのおはぎを食べて、気の所為か何時も以上に美味しいと感じる。
後日、ラビリントカンパニーの特設会場にて、多くのRHDに参加した冒険者達が集結。
会場には様々な人が集まり、大きな盛り上がりを見せていた。
「OK冒険者諸君、3日間の大会よく戦ってくれた! おかげで素晴らしい大会で盛り上がったぜー!」
テレビで見た派手なMCのお兄さんが、今回実物で出て見れた事にちょっと感動を覚える。
彼はテンション高めで会場を盛り上げていく。
「それじゃあ今回の優勝チームを発表させてもらうぜ! 発表するのは、我らがキング! 神崎白矢だぁ!!」
派手な紹介を受けて、金髪の白スーツを着た長身イケメンの人が壇上へ上がって行く。
「皆、最後までよく戦ってくれた。皆のおかげで多くの未知のモンスターが解明されて、ダンジョンもまた1つ解明へと進んだ事だろう!」
両手を広げて大きなリアクションをする神崎社長に、会場の冒険者達が声を上げる。
「っと、俺の長話などで優勝発表が遅れるのは駄目だ。此処は素早く言わせてもらうよ。優勝は……」
皆が固唾を呑んで、優勝が誰なのか神崎社長からの発表を待つ。
「アンフィニアーミー!」
え?
今アンフィニアーミーって言った?
「ちょ、う……うちが優勝!?」
「聞き間違えじゃなければ……そうだ」
「他に同名チームとかいないよね……!?」
僕だけじゃなくリオンさんや護君も戸惑った感じで、この現実がすぐには信じられない。
だってAランクやBランクとか、他の凄いチームいたのにうちが優勝って、ビックリだよ!
「アンフィニアーミー! いたら壇上に来てくれー!」
MCが呼んでいるみたいなので行くしかない。
こんな皆の前でステージ上に立つのは唐揚げ大食い大会以来だ。
ステージ上に僕達が上がると、そこに大きな拍手と歓声が飛び交う。
「あれがアンフィニアーミーか、聞いた事ないな」
「強そうな感じには見えないけど、人は見かけに寄らないって言うし」
時折僕達に対する印象とか飛んで来て、結構恥ずかしい。これ、他の凄いチームとかも見てるんだよね?
「おめでとう、アンフィニアーミー……まさに無限の可能性を持ったチームである事を君達は見事に証明した。新たな可能性を切り拓いてくれたチームとして、心に刻む事を誓おう」
「あ、ありがとうございます……」
お偉いさんから優勝トロフィーを貰うと共に、言葉をかけられて僕は大分恐縮してしまう。
「ご声援ありがとう皆ー♪」
リオンさんは笑顔で声援を送る皆へと、笑顔で手を振る。
その姿はまるでアイドルみたいだ。
「……悪くない、こういうのも」
優勝した事で護君は珍しく微かに笑みを見せていた。
そこに「キャー!」という黄色い声援が飛んで来ている。
ちょっと前まではこんな光景とは無縁だったのに、今は隣に立つ仲間達と共に優勝を喜んでいる。
色々あったけど、仲間やチームって良いもんだ。
これから先も共に過ごし、先に進みたい。




