51話 大会最終日に思わぬ遭遇
大会2日目が終わり、僕達アンフィニアーミーは再び3人揃ってダンディーンで2度目の宿泊。
折角だから大会終わるまで、此処で皆寝泊まりしときなさいという、高大さんや早苗さんの粋な計らいだ。
これにリオンさんと護君は再びお世話になり、この喫茶店で大会最終日の朝を迎える。
「お兄ちゃん朝だよ早くー!」
「むぶっ!?」
僕の部屋にやってきた甘利が、早く起きろとばかりに朝から布団に包まって、夢の世界を堪能していた僕にのしかかる。
布団越しで妹からの容赦無いボディプレスを食らい、僕は強制的に夢の世界から叩き出され、目覚めるしかなかった。
「今日もリオンさんと護さん起きてて、お兄ちゃん一番最後だからねー!?」
「分かったよ……急ぐから、着替えさせて……顔を洗わせて……」
朝の弱い僕はのろのろと準備を進め、洗面所で顔を洗えばやっと目が覚める。
1階の喫茶店に降りてくれば、先に起きていたリオンさんと護君の姿が見えた。
ちなみに護君は早朝から起きてて、外で剣の素振りをしていたらしい。
「それで最後は何処に行こう?」
「何言ってるの、此処まで来たら奥多摩一択しかないでしょ!」
最後は何処に行こうか、3人で話し合うとリオンさんは真っ先に奥多摩へ行く事を提案。
「確かにトラブルは多少あったが、効率良くレアモンスターを狩れていると言える。姫島の言うようにその選択は良いと思う」
護君も奥多摩に行く事は賛成のようで、この時点で2対1。
と言っても別に僕も奥多摩行き反対って訳じゃないけどね。
そういう訳なので大会最終日も、そこに行く事が確定した。
すっかり行き来が慣れてきた奥多摩の道。
他の冒険者も降りていて、昨日と同じくダンジョン争奪戦になる事が予想される。
願うなら昨日みたいなチンピラ達が出て来ないでほしい。
流石に2日連続で絡まれるなんてゴメンだ。
「……通れないな」
まずは大会初日に来たGランクダンジョン。
護君が足を踏み入れようとするが、入れないという警告音が鳴って、そこから進む事は出来ない。
「だったら昨日のダンジョン行きましょ、急ごう!」
リオンさんは真っ先に昨日行った、ダンジョンへの道を急いで進む。
それに僕達も続く。
「うそ〜、此処も駄目なの?」
初心者コースの山道を登り、昨日と同じコースを辿って来たが、リオンさんは此処も満員だとなって落胆してしまう。
「ううん……都会を避けてこういう所に目をつける人が多くなってきたのかな」
穴場と思っていたけど考える事は皆同じらしく、こういう山道でも人が殺到するようになっていた。
「とにかく下を向いても始まらん、他のダンジョンを探すしかあるまい」
護君は前を向いて他のダンジョンが無いか、周囲を見回す。
「それか、もっと上に行くしかない……?」
「止めとこうよ。ダンジョン行く前に戦えなくなりそうだし、万が一遭難とかしたら大変だからさ」
リオンさんが見つめる先は此処より更に先の山中、ただそれはかなりのリスキー。
優勝を狙うのは大事だけど、だからと言ってそこまで身の危険を覚悟で行く事もないと思う。
此処は降りて地上でまだ誰も目を付けていない、新たなダンジョンを見つけるしかない。
僕達は山道を降りて空いているダンジョン探しを開始。
「……ん?」
何十分か探し周り、僕は森の方に何か怪しげな雰囲気を感じた。
「どうした、見つけたか?」
「あ、いや。あっちの森とか見たっけ?」
「え? まだ見てないと思うけど、何かありそうかな」
リオンさんと護君の2人を呼ぶと、2人もまだ森の方を探していなかったらしく、僕達3人は森へと入る。
すると5分ぐらい歩いた所で、不気味な雰囲気漂う洞穴を発見。
「これ当たりみたいじゃない!?」
「いや、待て。また満員かもしれないから安心出来ないぞ」
念願のダンジョンを発見する事が出来て、リオンさんは嬉しそうにはしゃぐが、護君はその可能性を考えている。試しに彼がダンジョンへ足を踏み入れてみた。
「……特に何もない、入れるみたいだぞ」
「えーと、此処ってどんな所だろ?」
護君が入れると確認した後、僕は此処がどれくらいのクラスなのか、スマホで確かめてみる。
そこにはDランク奥多摩ダンジョン、と出ていた。
「Dランクってあたし達行ってないよね……?」
「俺も初めてだ」
2人にとって初めてとなるDランクのダンジョン、勿論僕だって言うまでもなく初めましてだ。
このタイミングで初のDランクダンジョンへの挑戦と、危険な所に踏み込むのはどうなのか。
「大丈夫でしょ、護君がDランクならなんとか出来ると思うし、明弥君なら高いランクの敵も倒しちゃうから!」
「未知の場所だが、挑み甲斐はある。危険となったらすぐに帰れば良いしな」
どうやら引く気配は無いみたいで、むしろ行く気満々って感じ。
まぁ試しに少しだけ行こうかな。
危なくなったら護君の言うように、すぐ帰れば良いから。
何時も通り護君を先頭に、僕達はDランクのダンジョンへ踏み込んでいった。
中は石造りの迷宮という感じで、今までのランクのダンジョンと比べて雰囲気が違う。
Dランク独特の空気っていうのかなこれ?
「音を出さず慎重に進め……」
「うん……」
護君から小声で言われ、僕もリオンさんも小声で返事を返す。
未知のダンジョンなので今まで以上に前進は慎重だ。
「ブルゥゥゥ……」
そこにモンスターの鳴き声のようなものが、僕の耳に聞こえてくる。
「しっ……!」
護君が自分の口に人差し指を当てると、僕達は声を出す事を控えた。
ゆっくり通路の先にある大きなプロアを覗けば、そこには大柄なモンスター達がウヨウヨいて、フロア内を歩く。
「あれってミノタウロス……!?」
歩き回るモンスターの姿を見て、僕もリオンさんと同じ感想だった。
両手の大きな斧を持ち、凶暴そうな牛の顔をして、首から下が軽装の鎧を身に着ける、筋骨隆々な大男を思わせる姿をしている。
「浅草の時も思ったけど、この辺りになるとよりモンスターらしいモンスターが出るって感じかも……?」
確かにあの時のゴーレムといい、今見えているミノタウロスはゲームに出て来るモンスターにより近い。
このまま様子を伺い、隙を探ろうとしていた時だった。
「あっ……!」
リオンさんが足元の石をコンッと蹴ってしまい、その音が静寂なダンジョン内でよく聞こえていた。
「ブルゥゥゥー!!」
その音に気づいたミノタウロス達が、僕達の方を見る。
ヤバい、完全に見つかってるよ!
「ブリッツ!!」
僕は先手必勝と、杖をミノタウロスに向けて雷の矢を発射。
「ブルルルルゥゥ〜〜〜!?」
巨体を雷の矢が貫いた時、ミノタウロスは悲鳴と共に崩れ落ちていった。
あれ、いかにも強そうなモンスターだけど以外とあっさり倒せたな?
「ブルァァーー!!」
仲間を倒された怒りからか、ミノタウロスは雄叫びを上げると共に、大きな斧を両手に持って僕達の方へ向かう。
「空竜波!」
そこへ護君が剣を両手に握ると、その場で大きく素振りをした時、ドラゴンのような波動がミノタウロスへ真っ直ぐ飛んでいった。
「ブハァッ!!」
波動を受けて巨体は吹っ飛ばされ、壁に激突するとそのまま動かなくなる。
リオンさんに続いて護君、強力な技を覚えたみたい。
「あれ、これあっさり行けちゃうかも!?」
リオンさんは見た目程怖くないと思い、後方に控えていたが前に出て来る。
「ブルーーーー!!」
そこへダンジョン内に響くミノタウロスの声。
雄叫びが収まるタイミングで、同族のモンスター達が続々と現れてしまう。
数で押してやろうって狙いか!
「ブリッツ! ブリッツ!」
「おおおっ!」
僕と護君はそれぞれ片っ端から、ミノタウロス達を斬ったり雷の矢で貫いていく。
ただ混戦となったせいか、リオンさんの方まで見る余裕が無くなってしまう。
「きゃっ!?」
「! リオンさん!」
リオンさんの悲鳴に僕がそちらを向くと、彼女の目の前に斧を振り上げるミノタウロスの姿。
この!リオンさんに手出しさせるか!
僕が魔法を唱えるのが先か、ミノタウロスの斧が下ろされる方が先か、とにかく僕はブリッツを牛のモンスターに向けて、唱えようとしていた。
ガキィィィンッ
洞窟内で金属が、何かとても硬い物にぶつかるような音が響き渡る。
とりあえずリオンさんに攻撃が当たった訳じゃない事は分かった。
そのリオンさんの前に、ミノタウロスの斧を大盾で受け止める存在がいたからだ。
「なんとも危ねぇ所で遭遇しちまったな!」
そこには大盾を持ち、ミノタウロスの攻撃を受け止めた盾山君の姿。
彼の赤い鎧は以前よりも大きく、頑丈な物となっていた……。




