48話 不正を許さないダンジョン警備隊
「ちょ、恥ずかしくないの!? たった3人相手にそんな大人数で来るなんてプライドとかない訳!?」
包囲される僕達、その中でリオンさんは男達の良心へ訴えるように叫んでいた。
「はっ、甘いなぁ嬢ちゃん。本当の戦いには卑怯もクソもねぇ、強い奴が勝って生き残る。そういうもんだろ」
「俺達Dランク、バンデッドスターズは手段なんか選ばねぇんでな!」
兜を被る顔から悪い顔が見え隠れしてしまう。
彼らは勝利が欲しくて手段を選ばない、生きるか死ぬかのダンジョンでそれが正しいだろうけど……!
だからってこんなチンピラみたいな連中に、負けるのは嫌だよ!
「フン……こいつら叩きのめしてダンジョンに入るしかあるまい」
護君はやる気みたいで、剣の柄に手を添えている。
何時でも剣を抜く構えだ。
「それはこっちのセリフだ! ついでにこいつらの身ぐるみも剥いじまえ!」
バンデッドらしく金目の物も奪うつもりか、連中は欲にまみれたような目で僕達を見て、それぞれ武器を抜き取る。
人数的に不利だけど、やるしかないか。
ピピィーー
その時、笛が鳴るような音が辺り一帯に響き渡って、僕達もバンデッドスターズも動きを止めていた。
「RHD開催中に冒険者同士が戦闘で争うのは禁止だ」
僕達の前に1人の人物が、ゆっくり歩いて近づいて来る。
銀髪の髪に護君ぐらいの長身。
白銀の鎧を身に着けて、右手に剣を携える姿は誰がどう見てもイケメンだと思いそう。
僕達の戦闘を止めてきたけど誰だろう?
「なんだぁ優男! 人の獲物を取る気かコラァ!!」
「てめぇからやっちまうぞ! 引っ込みやがれ!」
邪魔された事に怒ったか、重装鎧を纏う男達はその人へ近づき、剣を向けようとする。
「……お前ら問題行動を起こし続けてるバンデッドスターズだな。今回も見えない所で他の冒険者に絡み、襲って誤魔化せるとでも思ったか?」
「は? てめぇ何言ってやが……」
リーダー格の男が何か言いかけた時、白銀の鎧の人はあるものを掲げた。
「!?」
男達それにギョッと驚き、僕も驚いてしまう。
彼が掲げたそれは警察手帳で、現れた人は警察官だと手帳が雄弁に語っている。
「てめぇ、サツかよ!?」
「バカ、ハッタリの偽者だろどうせ! 本物がこんな山の中に1人でいるかよ!」
「そうだな、どうせ1人だからこいつの身ぐるみも剥いじまえ! そんなハッタリ通じねぇぞぉぉ!!」
彼らは警察手帳を偽者だと信じ、リーダー格の男が大きな斧を振り回して、白銀鎧の人へ襲いかかった。
「愚か……バインド(拘束)」
「ぐええっ!?」
突然リーダー格の男の体を、複数の大きな黄色い輪が囲んだかと思えば、縮んで体を締めつけて拘束する。
「抵抗すればする程締め上げるぞそいつは。苦しみたくないなら大人しくしろ」
「がぁぁっ!ギャァァァ!!」
暴れる男に輪が強く締め上げたのか、苦しそうな悲鳴が木霊していた。
「この野郎! リーダーを離しやがれ!」
それを見たバンデッドスターズ達が、次々と襲いかかって来る。
でも白銀の鎧の人は全く寄せ付けない。
「げぇっ!」
「ギャァァァ!」
剣の峰打ちで気絶させたり、リーダー格の男のように拘束して、その繰り返しでバンデッドスターズは瞬く間に壊滅していた。
「こちら白岸、大会の違反者及び公務執行妨害でバンデッドスターズを拘束した。至急応援を要請、場所は奥多摩の……」
白岸と呼ばれる警察官はスマホで連絡。
バンデッドスターズは偽者の警察官だって疑ったみたいだけど、見る限り本物らしい。
そうじゃないと1人でこんな捕らえて、制圧とか出来ないと思うし。
「助かったぁ〜、危ない所をありがとうございますー」
ようやく安全となったタイミングで、リオンさんは白岸さんに声を掛けて礼を言う。
「彼らは襲いやすそうな場所、冒険者を狙っては悪さを重ねてブラックリストに載っていたチームだ。本当に危ない所だったな」
白岸さんから今のチームが危険だった事を知らされ、そんな連中に目を付けられてたのかと、少し身がゾッとしてしまう。
世の中そういう迷惑チームが、こういうご時世になってもいるもんなんだ……。
「龍二さん、お久しぶりです」
「ん? ……お前、護か。大きくなったな」
そこに護君が白岸さんへと、礼儀正しく頭を下げて挨拶をする。
白岸さんも護君と言葉を交わし、聞く限り古い知り合いっぽい。
「知ってるの?」
「俺の剣道の師匠で、父の親友だ」
「え、そうなの!? 護君の……」
リオンさんが驚くと共に、僕も思った以上の知り合いだった事に驚く。
父の親友って護君のお父さんがいたら、多分若くても40前後だよね?
けど白岸さんは見た目が若くて、20代の若者と言っても僕とか信じると思う。
「此処にいるという事はお前も大会参加者か」
「はい、今はこのアンフィニアーミーというチームの一員です」
昔から交流を持つ2人の会話、そこに僕やリオンさんが立ち入る事は出来ず、大人しく見守る。
「……タツミとクレハの2人を、探す為か」
「……はい」
え?誰を探す為って?
護君、妹さんを養う為に冒険者になったんじゃないの?
「行方は俺達の方でも探し続けているが、そうか……力及ばないばかりですまない。、お前にそんな苦労を」
「白岸さんのせいじゃありません。気にする事じゃないですから」
何か僕達の知らない事情を抱えてそうだな……そういえば護君のマンション行った時、立樹ちゃんと二人暮らしで触れないままだったけど、2人の両親について未だに分かってない状態だ。
タツミ、クレハという名前が出て来たけど、それが護君と立樹ちゃんの両親かな?
「そうか……ああ、こいつらは警察へ連行しておくから。急ぐんだろう?もう行って構わない」
「ありがとうございます」
護君と同じく僕もリオンさんも、白岸さんに頭を下げて僕達はランクF、奥多摩ダンジョンへ向かう。
今度は人数制限に引っかかる事なく入れた。
「……何も聞かないのか」
僕達の間にしばらく無言が続いていたけど、護君の方から口を開く。
「いや、正直誰の事を探してるのか気になってるけど……聞いちゃいけないかなって」
多分リオンさんも僕みたいに、誰を探しているのか察したっぽい。デリケートな問題で触れないようにしてたんだろうね。
「構わない、そろそろ付き合いも長くなってきたし、良い機会だから此処で話すべきなのかもしれない」
まさか護君の方から話してくれるとは、僕達にそれだけ心を許したのか、聞いてほしかったのかな?
今回は腹を割って話すダンジョンになりそうだ。




